チャレンジ41カ国語 ~外務省の外国語専門家インタビュー~

チャレンジ41カ国語~外務省の外国語専門家インタビュー~

ミャンマー語の専門家 田中さん

(写真)旧首都ヤンゴン近郊の村の子どもたち
旧首都ヤンゴン近郊の村の子どもたち。カメラを向けたらポーズを取ってくれました。

ミンガラーバー
(ミンガラーバー・・・読み方)=こんにちは!

 田中さんは、平成8年外務省入省、女性で初のミャンマー語の専門家です。皆さんは、ミャンマーという国を知っていますか?ミャンマーは、タイの西、インドの東に位置する日本の倍くらいの大きさの国です。

アジアブームに乗って

 田中さんは、入省以来、ミャンマーでの勤務を含め東京の本省でも経済協力や人権問題など、常に多角的にミャンマーに関わる仕事に携わってきました。外務省に入ってから初めてミャンマー語に触れることになった田中さん。どのような経緯があったのでしょうか。

 「私が入省した当時は、アジア・ブームの真っ盛り。日本人の目は東南アジアに向かっていました。日本企業も沢山進出していました。学生時代にバックパックを背負ってアジア各地を旅行した経験もあって、私も東南アジアの言語、たとえばイメージのわきやすいタイ語やベトナム語をやってみたかったのですが、入省後、ミャンマー語を指定された時には、ちょっと驚きました・・・・。」

ミャンマー語って、どんな言葉?

 「面白いことに、ASEAN(東南アジア諸国連合)の国々はほとんどが独自の言葉を持っていて、タイ語とラオス語がよく似ている以外は、それぞれ全く違う言語です(仏教用語等を除く)。ミャンマー語はチベット・ビルマ語族で、表音文字。33の基本文字を組み合わせて使います。」

どうやって学ぶ?

 ミャンマー語は、他の主要な外国語と異なって体系的な学習法が確立されていないし、参考書も少なくて、勉強するのが大変だったと言う田中さん。ミャンマーでの研修は、ヤンゴン外国語大学ミャンマー語学科で2年間行いました。ミャンマーでは当時、政府が学生運動の発生を畏れて大学を閉鎖しており、開いているのは外国語大学のみでした。大学の授業は、そもそも先生があまり英語を話さないので、特に初学者クラスでは先生が何を教えようとしているのか留学生には解らない。留学生同士で先生の言いたいことを想像(!)したり、教え合ったり。田中さんは日本から持参した数少ない参考書を頼りに大学で勉強していましたが、やはりそんな学習に限界を感じ始めました・・・

とにかく現地の人と話す!

 田中さんが住んでいたのは外国人用の学生寮。閉じこもっていてはミャンマー語の上達はない、とドンドン町に飛び出す田中さん。市場やお店の売り子さんや、道ばたであった若者、図書館や大学で出会った学生たち・・・と精力的にミャンマー人の友だちをつくっていきます。もともとミャンマーの人々はとても親日的で、外国の情報が少ないこともあり、日本人である田中さんに興味津々。おまけに困っている人がいたらすぐに助けるという優しい国民性。ミャンマー語会話に困るはずがありません。

研修中のノルマ・・・

 「とにかくミャンマー語をミャンマー人と話すことが大切だと思ったので、毎日友達の家を2~3軒訪ねておしゃべりする、というのが、語学研修中の私のノルマでした。」

 こうして田中さんは、毎日数件のお宅を訪ねていましたが、その度に出されるご馳走を、「出して頂いたものを残すのは失礼だから」と、無理をしてでも平らげていた結果、びっくりする程体重が増えてしまうことに。ミャンマー料理はとても脂っこいのです。「ロンジーという腰巻きの民族衣装を着ていたので、自分が徐々に太っていくことに気付かなかった」そうです。

(写真)タイとの国境付近をトレッキングした際に訪れた少数民族の村の子どもたち
タイとの国境付近をトレッキングした際に訪れた少数民族の村の子どもたち。住居のほとんどは高床式で、下に家畜を飼っています。

朝5時の来訪者

 ミャンマーの人たちは、日本人と比べて、人と人との間の垣根が低いようです。何の用事がなくても、ただ挨拶や、おしゃべりをするためだけに互いを訪問し合う-ミャンマーではごく自然な光景です。

 「彼らの生活は朝が非常に早い。4時半くらいに起きるのは普通です。それで、5時過ぎともなれば、友人の家を訪ねてまわる。あまりにも早い時間なので最初は何事かとびっくりしましたが、彼らにとってはごくフツーのことなのです。おかげで、話し相手がなくて寂しいということはなかったのですが、日本との常識の違いに驚きました・・・。」

たとえ価値観は違っても・・・・ミャンマー大好き!

 人との距離をどうやってとるか、初めのうちはちょっと戸惑ったという田中さんですが、それもすぐ慣れ、「日本の価値観と、彼らの価値観は違います。そのような違いを実際に体験できたことも留学の大きな成果のひとつで、ミャンマーをより良く理解するために役立ちました。現在のミャンマーは軍事政権で、あまり良くないイメージも持たれがちですが、一般のミャンマー国民は優しく穏やかで、勤勉で、親しみやすい人々です。」と、今やミャンマーの強力なサポーターです。

(写真)地方部の寺院にて
地方部の寺院にて。ミャンマーの僧侶は朝早くから托鉢をし、正午以降は水分以外を口にしません。

国内旅行は寺院巡り

 ミャンマーは多民族国家。約135の民族から成り立ち、それぞれ異なる豊かな文化があります。研修2年目の田中さんは、ミャンマーをよりよく知るために、大学の休みを利用して積極的に地方を巡ります。もちろん、現地の人々に混じって長距離バスや乗り合いタクシーを利用しての旅です。「ミャンマー人はとても信仰心が厚く、多くの人々が各地の寺院巡りをします。」

奥深いミャンマー

 「ミャンマー人の友人と、首都からのバスツアーに参加するなど、色々な地域を旅行し、異なった文化や風習を体験することができました。ミャンマーには仏教遺跡などの観光資源も豊富ですし、トレッキングができるような山岳地帯もあります。そのような場所では、現代文明とはかけ離れた生活をしている少数民族もまだまだ沢山いて、非常に興味深かったです。ミャンマーという国を深く理解するために、首都だけでなく、色々な文化・風習を持つ地方部を見る機会を得られたことは非常に役立ちました。」

ミャンマー語の可能性

-ミャンマー語をやって良かったなと思うことはありますか?

 「最近アジアの国では英語もよく使われるようになっていて、外国要人との会談なども英語で行われることが多くなりましたが、ミャンマーはそのような会談の場でも未だミャンマー語を使用することが多いため、通訳の出番が多いように思います。出番があれば、専門家として気合いも入りますし、常にミャンマーの情勢にも敏感になっていないといけないという緊張感もあるので、とてもやりがいがあります。」

 女性で初のミャンマー語の専門家ですが、電気が突然止まったり、何日も断水するというような状況下でも、ミャンマーの生活を楽しんだ様子の田中さん。これからも一層の活躍を期待しています!


田中さんのミャンマー語

便利なフレーズ

 タミン サー ピービーラー(タミン サー ピービーラー) もうご飯を食べましたか。
(ミャンマーでは道ばたで知人に会ったときなどに挨拶代わりにも使われます。むしろ、冒頭でご紹介した「こんにちは:ミンガラーバー」は現地人同士ではあまり使われません。)

ミャンマー語を主要言語とする国: ミャンマー連邦

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