報道発表

パキスタンにおける農業開発及び口蹄疫対策強化のための支援
(無償資金協力「連邦直轄部族地域における生計回復計画」及び「パキスタン口蹄疫対策強化計画」(FAO連携))

平成30年2月27日

1 本27日(現地時間同日),パキスタン・イスラム共和国の首都イスラマバードにおいて,我が方倉井高志駐パキスタン大使と先方ミナ・ドウラッチャヒ国連食糧農業機関(FAO)パキスタン代表(Ms.Minà Dowlatchahi, FAO Representative in Pakistan)との間で,無償資金協力「連邦直轄部族地域における生計回復計画」(FAO連携)(供与額5億6,000万円)及び「パキスタン口蹄疫対策強化計画」(FAO連携)(供与額2億9,700万円)に関する書簡の交換が行われました。

2 各案件の概要は,それぞれ以下の通りです。

(1)「連邦直轄部族地域における生計回復計画」
 パキスタンの連邦直轄部族地域(FATA)は,2009年に開始されたパキスタン軍によるテロ掃討作戦等の影響により,地域住民の約150万人が国内避難民となりました。その後,度重なるテロ掃討作戦や宗派間対立による紛争により,FATAの灌漑設備等の農業インフラは深刻な被害を受け,帰還した避難民は,主要産業である農業での十分な生計維持が困難な状況となっています。
 この計画では,FATAにおいて,FAOとの連携により,農業関連施設の修復や農産品バリューチェーンの整備を含む,持続的な農業開発支援を行うことで,帰還民の安定した生計の維持による定住の促進を図るものです。この協力により,帰還した約12万世帯のうち32,651世帯(約29万人)の安定した生計の維持と定住化につながり,若年層が武装勢力へ傾倒する可能性を低下させ,治安の安定化につながること,また,農業生産の増加により,FATA及び周辺地域の食料安全保障が強化されることが期待されます。

(2)「パキスタン口蹄疫対策強化計画」
 パキスタンにおいて,畜産セクターはGDP全体の約12%(農業セクターに占める割合は約60%)を占め,同国の主要産業である農業セクターの中でも主な位置を占めています。また,家畜は,農家にとって農産物不作時のセーフティネット,資産,栄養補給源としての役割も果たしています。しかしながら,近年同国では,家畜等の間で伝播しやすい口蹄疫が蔓延しており,罹患した場合,幼畜の致死率は50%程度に達するほか,成畜の場合は,乳量の低下(5~7割)や肉質の低下等が生じるため,農家にとって経済的損失は極めて大きく,また,農家の食料確保の観点からも深刻な問題となっています。
 この計画は,家畜が特に多い主な4州(シンド州,パンジャブ州,ハイバル・パフトゥンハー州,バロチスタン州)及び首都イスラマバードにおいて,FAOとの連携により,ワクチン供与を含む口蹄疫対策の強化を図るものです。この協力により,口蹄疫による損失が抑えられ,(ア)850万世帯の小農を中心に構成される畜産セクターの生産性が向上すること,(イ)獣医・獣医助手約1,400名が口蹄疫症例の理解,診断・予防方法等について習得すること,(ウ)畜産農家約40,000名が,ワクチン接種の必要性を含む口蹄疫対策への理解を深めることが期待されます。

[参考]パキスタン・イスラム共和国基礎データ
 パキスタン・イスラム共和国は,面積約79.6万平方キロメートル(日本の約2倍),人口1億9,320万人(2016年度,世界銀行),1人当たりの国民総所得(GNI)1,510米ドル(2016年,世界銀行)。


報道発表へ戻る