報道発表

フィリピン・ミンダナオ和平関係者による岸田大臣表敬

平成27年6月20日
フィリピン・ミンダナオ和平関係者による岸田大臣表敬

1  本20日午前9時40分頃から約20分間,岸田文雄外務大臣は,「アジアの平和構築と国民和解,民主化に関するハイレベル・セミナー」出席のため訪日中のアル・ハジ・ムラド・イブライム・モロ・イスラム解放戦線議長(Al Haj Murad Ebrahim, Chairman of Moro Islamic Liberation Front:MILF)およびヤスミン・ブスラン=ラオ国家ムスリム委員会委員長(Yasmin Busran-Lao, Secretary of National Commission on Muslim Filipinos)による表敬を受けました。

2  岸田大臣から,6月16日のMILF兵士の退役・武装解除の開始を歓迎するとしつつ,ムラド議長とラオ委員長の一貫した和平へのコミットメントを高く評価し,ミンダナオの恒久的な和平実現に向けて,両者の強いリーダーシップを引き続き期待する旨を述べました。また,岸田大臣から両者に対し,日本は,新たな自治政府(バンサモロ)の発足を見据えて,J-BIRD(参考(4)参照)を新たなフェーズ「J-BIRD2」に移行していくとして,今後ともミンダナオ和平支援を継続していく考えを伝えました。

3  これに対し,ムラド議長からは,今回のハイレベル・セミナーへの招待に対する謝意の表明がありました。また,2011年8月のアキノ大統領と同議長との成田会談の仲介やJ-BIRDの推進など,これまでの日本の和平支援に対する深甚なる謝意表明とともに,MILFとしての和平実現への継続的なコミットメントの表明がありました。また,ラオ委員長から,和平プロセスの進捗について説明があるとともに,フィリピン政府としても,和平実現に向けてコミットしている旨の発言がありました。

【参考】ミンダナオ和平と日本の和平支援について

(1)フィリピン政府とモロ・イスラム解放戦線(MILF)との和平交渉は,2001年にマレーシアを仲介役として開始。2003年に停戦合意に至り,2004年からマレーシアを団長とする国際監視団(IMT: International Monitoring Team)が活動を開始。これにより和平合意に向けた交渉は進展したものの,2008年8月に最大の懸案である土地問題の解決をめぐる国内調整に失敗し,武力衝突が再燃。その後,2009年12月の国際コンタクト・グループ(ICG: International Contact Group)結成を契機として,2010年2月に和平交渉が再開。2010年6月に発足したアキノ政権下でも和平交渉は継続され,2012年10月に「バンサモロ枠組み合意」に署名。その後,附属書4件(移行プロセス,権限分担,資源分配,正常化)の交渉を経て,2014年3月に「包括和平合意」に署名。

(2) 包括和平合意に基づき,新たな自治政府(バンサモロ:Bangsamoro)の創設に向けて,移行プロセスが現在進行中。今後,バンサモロ基本法(Bangsamoro Basic Law)の制定,管轄領域を画定するための住民投票の実施,現在のムスリム・ミンダナオ自治地域(ARMM: Autonomous Region in Muslim Mindanao)の廃止と暫定統治機関(BTA: Bangsamoro Transition Authority)の設置を経て,バンサモロを創設。

(3) 移行プロセスと並行して,正常化プロセス(退役・武装解除,警察組織の創設,社会経済開発等)も進められる予定。武装解除については,本年6月16日,アキノ大統領とムラド議長が出席して,退役・武装解除セレモニーが実施され,MILF兵士145名の退役(退役兵士には25,000ペソを支給)と75丁の武器が引き渡された。

(4) 我が国は,(ア)IMTの社会経済開発部門への開発専門家派遣,(イ)元紛争地域に対する人間の安全保障・草の根無償資金協力など経済協力プロジェクトの集中的実施(J-BIRD: Japan-Bangsamoro Initiatives for Reconstruction and Development),(ウ)和平交渉にオブザーバー参加をして助言を行う国際コンタクト・グループ(ICG)への参加等を通じ,ミンダナオ和平プロセスの進展及びミンダナオ地域の復興・開発に貢献。また,2011年8月4日には,アキノ大統領及びムラドMILF議長が秘密裏に訪日し,成田でミンダナオ和平問題の解決に向けた初めてのトップ会談が行われた。

(5) 安倍総理大臣はアキノ大統領の国賓訪日の際,共同宣言を発出(PDF)別ウィンドウで開く。ミンダナオ和平について,日本政府は,新たな自治政府(バンサモロ)の発足を見据え,J-BIRDを新たなフェーズ「J-BIRD2」へ移行する,自治政府の経済的自律に焦点を当てた支援も検討することを表明。


報道発表へ戻る