報道発表
国際シンポジウム:アジアにおけるエネルギー安全保障及び投資(結果)
平成29年7月13日
- 本13日,三田共用会議所において,外務省主催による国際シンポジウム「アジアにおけるエネルギー安全保障及び投資」が開催されました。このシンポジウムには,主催者である外務省を代表して滝沢求外務大臣政務官が出席したほか,ラズロ・バロー国際エネルギー機関(IEA)チーフ・エコノミスト(Mr. Laszlo Varro, Chief Economist,IEA)らエネルギー分野における国内外の有識者,企業関係者,政府関係者,研究者,在京大使館及び報道関係者等200名以上が参加しました。
- 冒頭,滝沢政務官から,岸田文雄外務大臣による我が国のエネルギー・資源外交に関する政策スピーチ「日本のエネルギー・資源外交-未来のためのグローバルビジョン日本語(PDF) / 英語(PDF)」が代読されました。同スピーチにおいては,世界のエネルギー情勢に大きな変化が起きていることを踏まえ,我が国が今後のエネルギー・資源外交において目指すビジョンと,その実現に向けた戦略を打ち出しました。具体的には,我が国へのエネルギー・資源の安定供給確保を第一命題としつつ,グローバルな課題の解決へ貢献し,資源国との相互利益を強化していくことが日本のエネルギー安全保障にもつながるとの考えに基づき,(1)外交におけるエネルギー・資源問題への戦略的取組の強化,(2)多様なニーズに解決策を提示できるエネルギー・資源外交の重層的な展開,(3)エネルギー・資源分野における「日本らしさ」の定着・浸透に向けた取組,の「3つの柱」を中心に取り組むことを表明しました。
- その後,バロー・チーフ・エコノミストから,IEAが7月11日に公表した「世界エネルギー投資2017」に関する基調講演が行われました。バロー・チーフ・エコノミストは,2016年の世界のエネルギー投資は前年比で12%減少となり2年連続でエネルギー投資が減少したこと,電力部門の投資額が石油・天然ガスの上流開発の投資額を史上初めて上回ったことに言及しました。また,2016年の世界のエネルギー投資額の半分は中国,米国及び欧州が占めていること,世界的に上流開発の投資が低迷している中,米国はシェール開発への投資額が前年比50%増となっていること,エネルギー投資における国営企業を含めた公共部門の役割が増加していることにも言及しました。さらにバロー・チーフ・エコノミストは,運輸部門,冷暖房部門の電化に向けた投資は増加傾向にあり,電力貯蔵は有望な投資分野であるが,これらの成否は政府による規制や市場設計といった政策的要因が大きく影響する旨指摘しました。
- 続いて行われたセッションや分科会では,近年のエネルギー情勢の構造変化を踏まえたアジアのエネルギー安全保障,透明性の高いエネルギー市場及びエネルギー投資について,有識者による最近の研究・分析結果等に基づいた活発な議論が行われました。有識者から,世界のエネルギー需要を牽引するアジアにおけるエネルギーに関する取組は世界のエネルギー情勢に大きな影響を及ぼすこと,気候変動と経済成長を両立させる上で,再生可能エネルギーや化石燃料を含むあらゆるエネルギー源のクリーンな利用の促進・普及が一層重要となり,クリーンエネルギー技術への投資や開発が重視され,さらにはエネルギー資源の効率的利用のための地域協力や,液化天然ガス(LNG)市場ハブ創設に向けたアジア各国の連携,広域電力網,パイプライン等の広域エネルギーインフラの連結性強化などへの言及があり,これらを実現するためには政府間の対話の強化が一層重要となる旨の指摘がありました。
- ランチ・レセプションでは,日本の先端技術の一つである高効率石炭ガス化複合発電に関するプレゼンテーションが行われたほか,福島県,熊本県及び先般の九州北部の集中豪雨の被災地で生産された食材を使った料理や食品が提供され,主に海外の参加者に対して,我が国の技術力の高さ,食の安全,安心や被災地の復興支援をアピールしました。
- このシンポジウムでは,昨今のエネルギー安全保障と投資を取り巻く現状と機会,アジアにおけるエネルギー安全保障のあり方,グローバルなLNG市場形成に向けた課題,低炭素社会の実現に向けた先端エネルギー技術及びエネルギー投資の役割など,幅広い分野における専門的かつ具体的な議論を通じ,実際的で有益な知見が共有されました。また,このシンポジウムには内外,官民からなる多くの関係者が参加し,新たな人的ネットワークを築く有意義な機会となりました。