記者会見
茂木外務大臣会見記録
(令和7年12月5日(金曜日)16時30分 於:本省会見室)
日中関係(中国の措置への対応)
【読売新聞 佐藤記者】日中関係についてお伺いします。高市総理の台湾有事をめぐる国会答弁から、7日で1か月となります。この間、中国は反発を強め、人的交流や経済活動を制限する措置を講じてきましたが、経済などで対中依存度を下げるためには、どのような対応が必要だとお考えでしょうか。
【茂木外務大臣】日中両国は、「戦略的互恵関係」の包括的な推進、そして、「建設的かつ安定的な関係」の構築という大きな方向性で一致しているわけであります。我が国として、引き続き、状況を注視しながら、必要な対応を行っていきたいと思っております。
その上で、サプライチェーン、これは中国の問題に限らず、これから強靱化していくことが非常に重要だと考えておりまして、サプライチェーンを多角化していく、強靱化していく、それに向けて関係国とも緊密に連携しながら、必要な取組、加速化をしていかなければならないと思っています。
これは単に、レアアースに限らず、様々な物品等、エネルギーも含めて、また食料も含めて、こういうサプライチェーンの多角化を図っていくということは、今、世界の潮流として必要なことなのだと、こんなふうに考えています。
米国の「国家安全保障戦略」の発表
【共同通信 阪口記者】米政府は、第2次トランプ政権初となる「国家安全保障戦略」を公表し、インド太平洋地域を「主要な経済的・地政学的戦場」と位置づけました。台湾海峡をめぐる一方的な現状変更は支持しないとする政策を堅持する、とした一方で、日本を含む同盟国には、防衛費をGDP比で大幅に増額するように要求し、第1列島線を守るために、日本と韓国に防衛負担の増額を求めることも明記しました。この安保戦略について、どのように受け止めていらっしゃるのか、米側の要求を踏まえて、日本として、今後どのように対応する方針なのかお尋ねします。
【茂木外務大臣】米国は、新たな「国家安全保障戦略」を公表いたしましたが、具体的な内容は、今、精査中でありまして、現時点でその詳細についてコメントすることは差し控えたいと思いますが、今の御質問の中でも防衛力の強化についてありましたが、これ、日本として、既に主体的に進めている、前倒しでGDP比2%に持っていく、そして、来年中に安保関連三文書の見直しも行う、これは決して誰かから言われたわけではなくて、日本として、我が国を取り巻く極めて、戦後最も複雑で厳しい安全保障環境、これに対応するための対応だと思っております。
その上で、日米同盟、これは我が国の外交・安全保障の基軸であるのは間違いないわけでありまして、今後も日米で緊密に連携を確認して、日米同盟の抑止力、そして対処力の強化、これを進めていきたいと思っております。
日米豪印
【産経新聞 永原記者】日米豪印による協力枠組み、QUADについて伺います。QUADは、高市政権が掲げる「自由で開かれたインド太平洋」の実現に不可欠な枠組みと思いますが、米印の関税交渉をめぐる対立で、今年は未だに実現されておりません。年内の実現可能性、開催に向けて、日本政府としてどのような働きかけを行っていくのか、大臣のお考えを教えてください。
【茂木外務大臣】このQUAD、日米豪印ですね、私が前回外務大臣に就任しました2019年の9月、国連総会の際に、初めて日米豪印の外相会合を開き、それが首脳会合になり、現在に至っているわけでありますが、我が国は、日米豪印、基本的価値を共有する4か国が、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて、幅広い分野で、様々な実践的な協力を進めていく取組として、これを重視しております。
10月のトランプ大統領訪日の際にも、高市総理とトランプ大統領との間で、日米豪印を含みます同志国ネットワークを強化していく重要性を確認したところであります。
次回の日米豪印、現時点で日程は決まっていませんが、我が国としては、引き続き、日米豪印の協力を一層深化させ、地域の国々に真に裨益する取組を力強く推進していきたいと思いますし、そのための働きかけ、これも行っていきたいと思っております。
G7への中国の招待
【時事通信 千葉記者】中国とフランスの関係でお伺いします。マクロン大統領が、来年のG7に、習近平国家主席の招待を検討しているという件について、日本政府が慎重に対応するよう求めたという報道がありますが、まず、事実関係を教えてください。また、昨日の中国とフランスの首脳会談で、マクロン大統領が、G7と中国が経済不均衡などの対処に向けて連携したいというような考えを伝えたということですが、大臣、G7への中国の招待であるとか関与、これについてどうお考えでしょうか。
【茂木外務大臣】報道については承知いたしておりますけれど、来年、フランス議長下のG7サミットのいわゆるアウトリーチ、招待国については、現時点ではなんら決まっていないと、そんなふうに考えております。
今年のG7は、かなり多くのアウトリーチ国があったわけでありますが、その時々のテーマ等によりまして、招待国というのは決まっていくものだと考えております。
その上で、我が国としては、自由、民主主義、法の支配といった基本的価値と戦略的利益を共有するG7の結束、そしてG7によります緊密な連携であったりとか協力を重視しておりまして、そのための議論が必要だと、こんなふうに考えているところであります。
来年のG7に向けては、議論すべき主要なテーマを何にするのか、そして、招待国をどうするのか、こういったことについて、議長国フランス、そして他のG7メンバー国と、引き続き、よく議論していきたいと思っております。
台湾に関する日本政府の立場
【ブルームバーグ 村上記者】日中関係に関してお伺いします。台湾に関しては1972年の日中共同声明のとおりであり、その立場に一切の変更はないと、日本政府が中国に説明している中で、中国当局は、この説明を断じて受け入れないと。日本政府が、その基本的立場上の法的義務を明確に述べていないことについて疑問を呈していると思います。日本政府が法的義務を明確にしていないとする中国側の解釈についての日本政府の受け止めをお願いします。また、中国政府へ日本政府の立場を説明するにあたって、より明確にその法的義務などを詳細に述べる方針があるかも含めてお願いします。
【茂木外務大臣】ちょっと質問の趣旨がよく分からないのですが、もう一回おっしゃっていただけるとありがたいのですけれども。
【ブルームバーグ 村上記者】先日の中国当局の、高市総理が1972年の日中共同声明のとおりで、台湾に関してはその立場に一切の変更はないと説明されたことについて、中国側としてはその基本的立場の法的義務を明確に述べていないことについて疑問を呈したというか、なぜ法的義務をはっきり言わないのかということを記者会見で言ってたのですけど、それについて、日本政府としての受け止めと、あと今後、中国とコミュニケーションを取るにあたって、立場を説明するにあたって、より明確に日本側の法的義務みたいなのを説明していく予定があるかという点です。
【茂木外務大臣】なかなか、質問の趣旨がよく分からない部分があるんですが、72年の日中共同声明、これは勝手に日本が作ったものではないわけです。当然、日中間で交渉を行いまして、当時の田中首相、そして周恩来氏、向こうの首相との間で、かなりの時間をかけて、文言の調整等を行って、お互いに合意した内容だと、こんなふうに理解しておりますので、ちょっと御質問されている意味がよく分かりません。
存立危機事態、日中関係
【インディペンデント・ウェブ・ジャーナル 濱本記者】重ねて、日中関係について質問します。11月28日の大臣会見にて、茂木大臣は、「我が国の台湾に対する基本的な立場は1972年の日中共同声明のとおりである」とおっしゃいました。これは、台湾との国交を断絶した上で、中国を正式な政府として承認し、「一つの中国」という考えを尊重し、戦争状態を終わらせて、中国との国交を回復したという日中共同声明のスタンスを日本政府が今も維持していることを明言されたものと思われます。大臣はまた、台湾をめぐる問題は対話により平和的に解決されることを期待するともおっしゃいました。この期待という言葉であれば、軍事介入を示唆したなどと受け取られず共同声明とも矛盾しません。茂木大臣のこの見解は非常に賢明なものであり、この見解の方向性で閣内を一致させ、高市総理の存立危機事態発言を訂正し、事態の収拾を図ることで、速やかに日中関係正常化を実現すべきだと考えますが、茂木大臣の御意見をお聞かせください。
【茂木外務大臣】私の発言について評価していただいたことについて感謝申し上げます。
その上で、御質問、いくつかの点で、政府とは異なる認識、これに基づいたものでありまして、改めて政府の立場、これを申し上げたいと思いますが、まず、存立危機事態の認定に係る政府の考え、これは、いかなる事態が存立危機事態に該当するかについて、実際に発生した事態の個別具体的な状況に即して、政府が全ての情報を総合して、判断するというものであります。こうした説明は、平和安全法制成立時の安倍総理以来、政府として、繰り返し述べてきているところでありまして、政府の立場は一貫したものだと思っています。
また、先日申し上げたとおり、我が国政府の台湾に対する基本的な立場は、1972年の日中共同声明のとおりであります。そして台湾をめぐる問題、これが対話により、平和的に解決されるということを期待すると、これは我が国の従来からの、私の個人的な見解ではなくて、我が国の従来からの一貫した立場であると、こんなふうに考えております。
その上で、日本側は、日中間の対話について常にオープンでありまして、課題と懸案と、こういったものは隣国でありますから、これは中国に限らず、韓国であってもそうでありますが、そういったものがあるからこそ、やはり、しっかり議論する、対話を重ねることによって、この課題や懸案というものを少しでも減らす、一方で、協力できる分野というのもあるわけでありますから、理解と協力を広げていくと、こういったことが重要だと考えています。
インド・東南アジアへの防災協力
【ASIAN News International 板垣記者】先日、パンジャブ州の州首相、並びに経済代表団の皆さんが日本にいらっしゃいました。投資呼び込みが一番の目的なんですが、一方で、7月にパンジャブ州が大洪水に見舞われまして、大変な被害が出ましたと、いう中で、結構日本に熱い視線というか、注目されていまして、特に福島では原発事故もさりながら、津波で土をみんな持っていかれたところに、富岡町というところで他から土を運んできて、ワイナリーができてワインを作っているらしいといったようなことまで指摘されておりまして、そのように、非常に注目されている状況かと思います。そういう被災並びに復興の知見というのは福島に限らずいろいろなところで進んでいると思います。一方で、インドだけではなくて東南アジアあたりからも、非常にそういう興味は持たれているように思います。そうした中で、このような状況についてのお考え、そして今後の展望について、お聞かせいただけますでしょうか。
【茂木外務大臣】まず、改めて、インドのパンジャブ州の被害については心からお見舞い申し上げたいと、こんなふうに思っているところであります。
我が国、御指摘のように、非常に災害が多発する国でありまして、また東日本大震災からの復興といった経験等も踏まえて、世界一の防災大国を目指すとともに、防災分野の国際協力、これを主導してきましたし、これからも主導していきたいと思っております。
インドを含みます南西アジア、そして東南アジア諸国においても、先日もタイ、そして、スリランカ、さらにはインドネシアと、大きな災害があったわけでありますが、災害後の緊急支援や復旧・復興の支援に加えまして、事前の備え、質の高い防災インフラの整備であったりとか、人材育成といった事前防災の取組、これも支援しているところであります。例えば、今般のスリランカのサイクロン、これにおきましても、我が国のODAによって、適切な防災対策を施して供与された医療廃棄物用の焼却炉、これ水害をまぬがれまして、被災後も活用可能となったという事例もあると、こんな報告も受けているところでありまして、今後も、日本の技術や知見も生かしながら、インドであったりとか、東南アジア諸国とのきめ細かい協力、また支援も含めて、災害に強い世界の強靱化に、一層、日本として貢献してまいりたいと、そんなふうに考えております。
G7拡大論
【共同通信 阪口記者】先ほどのG7の質問に関連してお尋ねします。トランプ米大統領が、ロシアのG8離脱は間違いだったと、以前主張していたほか、今回、フランスが中国をG7に招待するといったような報道があります。G7の拡大論ということについては、大臣、どのようにお考えでしょうか。また、先ほど大臣もおっしゃいましたように、基本的な価値や原則を共有している国がG7の参加国だと思います。今後のG7の参加国ですけれども、そういった国々が、どのような政治体制であるべきだとお考えなのか、お考えを伺います。
【茂木外務大臣】これは、先ほどの御質問の答えの繰り返しになる部分があるのですけれど、我が国としては、自由、民主主義、法の支配といった、基本的価値と戦略的利益を共有するG7の結束、そして、G7による緊密な連携・協力というものを重視しているということでありまして、G7のメンバー国と、こういった趣旨に沿って、どういう形がふさわしいのかということを考えていくことだと考えております。

