記者会見
茂木外務大臣会見記録
(令和7年12月2日(火曜日)16時34分 於:本省会見室)
日ソ共同宣言
【北海道新聞 村上記者】1956年の日ソ共同宣言について伺います。来年で宣言から70年となりますが、1点目として、戦後の日ソ・日露関係において、宣言がどのような意義を持つのか改めて伺いたいです。2点目としては、共同宣言は、旧ソ連に抑留された日本人の帰還を実現させましたけれども、一方で、今なお遺骨収容が進んでいない現実は、どうお考えでしょうか。3点目として、共同宣言は、平和条約締結後の北方領土、歯舞・色丹2島の引き渡しを明記していますが、この共同宣言を基礎に、平和条約交渉を加速させるとした、2018年のロシア側との合意は、現在も有効であるのか改めて伺いたいです。よろしくお願いします。
【茂木外務大臣】日ソ共同宣言から、来年で70周年を迎えるということでありまして、この日ソ共同宣言、これ両国の戦争状態を終了させ、両国間の外交関係を回復させるとともに、平和条約締結に関する交渉プロセスの出発点を設定した基本的な文書であります。
その後、様々な形で、交渉というものが進んでまいりまして、今、御指摘の文書以外にも、様々な合意というものがなされて、今日に至っていると、こんなふうに考えております。
シベリア抑留中の死亡者の遺骨収集については、早期に再開をし、一柱でも多くの御遺骨を収容して、御家族にお返しできるように、外務省として、厚生労働省とも連携しつつ、ロシア側との調整等を進めていきたいと考えております。
シンガポール合意についてお尋ねがありましたが、先ほど申し上げたように、平和条約交渉が再開した際には、これも含めて、日露間の諸合意、また、諸文書を踏まえて交渉に当たる。私も、前回外務大臣時代に、2019年12月にモスクワを訪問して、ラヴロフ外相と8時間にわたって交渉いたしましたけど、これは様々な、これまでの合意といったものを、こういった合意もある、こういった合意もあるということも、議論しながら交渉を進めたと、こういう経験もありますので、そういうことだと考えています。
台湾問題
【朝日新聞 宮脇記者】中国の関係でお伺いします。中国の王毅外相は、先週末、フランスのボンヌ大統領補佐官、英国のパウエル首相補佐官といった政府高官と、相次いで協議をし、台湾問題で、中国への支持を求めました。中国は、SNSの発信や国連などで訴えたりするのみならず、バイの会談の場でも、こうして中国に有利な世論を形成しようとしていますが、日本政府として、どのように対応していくお考えかお伺いいたします。
【茂木外務大臣】私も、様々な国の外務大臣であったりとか、大使であったりとか、お会いをする。個別の国の、そういうカウンターパートともお会いする機会に、我が国の立場を適切な形で、それについては、きちんと説明して理解を得る、こういう努力をしているところであります。
御指摘のような中国の様々な対応、これについては承知をいたしておりますが、まず、我が国の政策や立場について、事実に反する中国側の主張に対しては、日本政府として、それは違っていますといった形で、事実関係はこうだということについては、きちんと反論・発信をしております。
同時に、日本政府の立場について、各国の理解を得る、これも極めて重要だと考えておりまして、冒頭申し上げたように、私を含めて政府全体として、各国に対して、様々な機会に我が国の立場を説明してきておりますし、これからもそうしていきたいと、こう考えています。
日中関係(議員、経済界の交流)
【共同通信 比嘉記者】日中関係について、引き続き、お伺いいたします。昨日、自民党の小渕優子議員が、超党派の日中議連のメンバーが中国の呉江浩駐日大使と面会し、今年中の訪中を目指す考えを伝えました。また、経団連の筒井会長も、先月面会しておりまして、来年1月の訪中受入れを要請しています。日中関係が悪化する中で、議員や経済界が交流を続けることの意義をどうお考えになりますでしょうか。また、外務省として、どのように後押ししていくか教えてください。
【茂木外務大臣】会見でも何度も繰り返していることなのですけれども、日中両国と、「戦略的互恵関係」の包括的推進、そして、「建設的かつ安定的な関係」の構築、こういう大きな方向性で一致しているところであります。
政府として、これは外交ルートだけではなくて、議員であったりとか、経済界による交流も含めて、様々な分野、またレベルで、対話や交流を積み重ねることによって、課題や懸案、これを減らし、そして、また、理解や協力を深め広げていくということが極めて重要だと考えておりまして、そういった形で、議員外交もそうですし、経済界での交流もそうでありますけれど、そういったことについては、ぜひ促進していきたいと考えておりますし、日本として、様々な形の対話についてオープンであると、こういう姿勢に変わりありません。
スリランカ、タイ、インドネシアでの自然被害への支援
【日経新聞 堀越記者】話題変わって、東南アジアでのサイクロン被害について伺いたいと思います。政府は、スリランカに医療チームを派遣することを決めております。インドネシアやタイなどでもサイクロン被害、発生していますけれども、日本は、水災害の対策ですとか、復旧にはノウハウがあると思います。これらを今回の支援にどう生かしていくお考えでしょうか。医療チームの派遣以外にも検討されていることがあれば、併せて教えてください。そして、最後に、昨今、海外へのこうした支援について、資金をそれに投入することに批判の声等もありますけれども、途上国に対する災害対応や開発に支援することは、日本にどのようなメリットをもたらすのか、大臣のお考えをお聞かせください。
【茂木外務大臣】今の御指摘の3か国、非常に大きな被害が出ている。お亡くなりになった方、また、被災をされている方も多く出ている国でありますし、我が国にとっても、重要な友好国であります。そこに対して、必要な支援を行っていく。これは、私は当然のことなのではないかなと、こんなふうに今考えているところであります。そういったことに対して、私は、大きな批判が出ている、こう考えてはおりません。人道上の問題、こういったことに対して、日本というのは、しっかりと対応する国なのだと、こういう姿勢は示し続けたいと、こういうふうに思っているところであります。
今回の件に関しまして、日本政府、スリランカ政府からの要請を受けまして、緊急援助物資の供与であったり、更には国際緊急援助隊・医療チームの派遣を決定いたしました。医療チームは、明日3日に日本出発予定であります。
そして、タイについても、同国からの要請を受けまして、緊急援助物資、この供与を決定し、本日、引渡しを行ったところであります。
また、インドネシアにつきましては、豪雨災害、出ているところでありまして、現在、JICAの専門家チーム、これを被災地に派遣して、支援ニーズ、どのようなニーズがあるのか、こういったことを確認しているところであります。
駐インドネシア日本大使の任命
【インドネシア・トリビューンニュース スシロ記者】在インドネシア日本大使の件なんですけれども、新たな日本大使は、いつごろ任命される見通しでしょうか。もし、まだインドネシアに行ってなかったら、先にインタビューしたいなと、取材したいなと思います。よろしくお願いします
【茂木外務大臣】インタビューしたいのは分かりますけれど、できるだけ早く決めたいと、こんなふうには考えています。
インドネシアと日本、緊密な友好関係を有する「包括的・戦略的パートナー」でありまして、日本は、二国間関係の強化に加えまして、地域・国際情勢におけるインドネシアとの連携も重視しております。先月の、日・インドネシア外務・防衛閣僚会合「2+2」でも、私自ら、こうした関係強化を確認したところであります。スギオノ大臣ともその後、ワーキング・ディナーを開催いたしまして、二国間の外交・安全保障面での協力であったりとか、更に幅広い分野での協力といったことについても、農業の分野であったりとか、気候変動への対応であったりとか、エネルギー政策であったりとか、こういったことも、協力を一層深めていこうということで合意を見たところであります。
新たな駐インドネシア大使につきましては、現時点では決まっておりませんが、こうしたインドネシアの重要性、これを踏まえて、できるだけ早急に、両国のパートナーシップ、これが様々な分野で一層発展できるように、良い人物を選び、そして、できるだけ早く派遣をしたいと思っています。
急に決まるかもしれないですから、動向を見ておいていただかないと、インタビューが間に合わなくなると思いますので、申し上げておきます。

