記者会見

茂木外務大臣会見記録

(令和7年11月14日(金曜日)16時59分 於:本省会見室)

(動画)茂木外務大臣会見の様子

冒頭発言

【茂木外務大臣】元々の会見場に戻ったようですね。後ろのパネルは、世界地図にはまだなってないようであります。
 昨日の夜、カナダでのG7外相会合から戻ってきたところでありますが、外相会合の内容であったり、またバイ会談も含めた成果については、カナダから会見で、お話をしたとおりであります。

(1)日・インドネシア外務・防衛閣僚会合(「2+2」)

 その上で、別件で2点、冒頭発言をさせていただきます。
 1点は、インドネシアとの「2+2」です。来週月曜、11月17日に、第3回目となります「日・インドネシア外務・防衛閣僚会合」、いわゆる「2+2」を東京で開催いたします。日本側から、私と小泉防衛大臣、そして、インドネシア側からは、スギオノ外務大臣とシャフリィ防衛大臣が出席いたします。2回目の「2+2」の時も、私、外務大臣として参加をさせていただきました。
 また、私、その「2+2」が終わった後、スギオノ外務大臣との間で、ワーキング・ディナー、これも開催する予定であります。
 これらの協議を通じて、一層厳しさを増す安全保障環境についての認識を、しっかりとすり合わせるとともに、日本とインドネシアの間の安全保障・防衛分野での協力の進展を確認しながら、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて、更なる連携強化について議論を行っていきたいと、こんなふうに考えております。

(2)大久保・ガザ再建支援担当大使の任命

【茂木外務大臣】それからもう一点、ガザの関係でありますけれど、大久保武(おおくぼ・たけし)氏、元々外交官でありますけれど、「ガザ再建支援担当大使」に任命することについてであります。
 今週のG7外相会合でも、表明したとおり、我が国として、ガザの復旧・復興について、積極的な役割を果たしていく。これが基本的な考え方でありますが、今般その一環として、元外交官で、現地にも駐在経験等がある大久保武氏を「ガザ再建支援担当大使」、これに任命をいたしました。
 大久保武氏は、イスラエルそしてパレスチナ、双方で、豊富な勤務経験がありまして、最終的にはレバノン大使もやっているわけでありますけれど、その知見と人脈を生かして、ガザの再建や統治メカニズムの構築などに、取り組んでもらいたいと、また、しっかりと貢献してもらいたいと、このように考えております。
  私の方からは以上です。

存立危機事態

【読売新聞 植村記者】台湾海峡をめぐる存立危機事態についての高市首相の答弁に関して、中国の林剣(りん・けん)報道官は、13日の記者会見で、中国の主権に関する主張や、過去の歴史の記憶の引用をするなどして、強い言葉で日本を非難しました。また、中国外務省は、北京に駐在する金杉憲治大使を呼んで抗議するとともに、首相の発言の撤回を求めました。日本側が、首相が述べているのは、台湾海峡の不安定化が、日本の安全保障に悪影響を及ぼすということであり、政策の変更ではない上、中国の主権論でもないと推察をします。こうした日本の主張、日本と中国の主張や認識のずれや、中国の強い反応に対して、大臣は、どのように考えていますでしょうか。また、先ほど申し上げた、金杉大使を呼び出して抗議したことも含めて、受け止めを伺います。よろしくお願いします。

【茂木外務大臣】中国外交部の会見での発言については承知をいたしております。また、高市総理の国会での答弁に対して、昨日、中国側から、我が方大使へ、金杉大使に対して抗議があり、これに対して、金杉大使から、高市総理の答弁の趣旨と我が国の政府の立場について、中国側に改めて説明を行い、明確に反論したところであります。この内容については、昨日の会見でも私がお話ししたとおりです。
 その上で、我が方大使から、今般の中国の大阪総領事の投稿、これは、在外公館の長の発信として、極めて不適切と言わざるを得ないと、強く抗議の上、改めて中国側の適切な対応を強く求めたところであります。
 先月末の日中首脳会談や、日中外相電話会談でも確認したところでありますが、日中関係の大きな方向性に影響が出ないように、こういう確認した内容について、大きな影響が出ないように、中国側に対して、引き続き、適切な対応を取るよう、強く求めたいと思っております。
 いずれにしても、台湾海峡、この平和と安定は、日本の安全保障はもとより、国際社会の安定にとっても、極めて重要でありまして、この点は何度も繰り返していることでありますが、台湾をめぐる問題が、対話により、平和的に解決されることを期待すると、これが我が国の一貫した立場であります。
また、政府の台湾に対する立場、これは、1972年の日中共同声明のとおりであり、変更はございません。

ペルソナ・ノン・グラータ

【産経新聞 永原記者】先ほど大臣も言及されましたが、中国の大阪総領事のSNS発信について伺います。与野党双方から、ペルソナ・ノン・グラータの指定を求める声が高まっていますけれども、過去に、日本政府として、ペルソナ・ノン・グラータに指定された事例、反対に相手国から指定を受けた事例をお伺いします。併せて、それらの事例と比較して、今回の大阪総領事の発信が、ペルソナ・ノン・グラータに値するのかどうか、改めて大臣のお考えをお尋ねいたします。  

【茂木外務大臣】2点というか、質問があったのですが、逆の方からお話をさせていただきますと、先ほどの読売さんの質問に対する答えと重なる部分もあるのですが、これまで日中間では、「戦略的互恵関係」の包括的推進と「建設的かつ安定的な関係」の構築という大きな方向を確認してきておりまして、これは先般行われた日中首脳会談や、それに先立ちます私と王毅(おう・き)外相との電話会談においても、改めて確認をしたところであります。
 こうした大きな方向性の下、あらゆるレベルで、幅広い分野において、意思疎通を一層強化をし、双方の努力により、課題と懸案を減らして、理解と協力を増やしていく方針であります。
 こうした中で行われた御指摘の中国の大阪総領事の投稿、これはこれまでも述べてきているとおり、在外公館の長として、長の発信として、極めて不適切であると、このように考えております。
 外務省、そして、在中国大使館から、中国側に対して、こうした投稿は極めて不適切であると、こういう申入れを行い、厳しく抗議をし、関連の投稿の速やかな削除を求めるとともに、適切な対応を強く求めております。その後、関連の投稿の一部は閲覧できないと、こういう状況になったと承知をいたしております。
 中国の大阪総領事によります、複数回にわたります、今回1回だけではなくて、昨年の選挙の際もありましたけれど、不適切な発信、これ遺憾であります。中国側に対して、日中関係の大きな方向性に影響が出ないよう、引き続き、適切な対応を中国側として取るように強く求めていますし、また、いきたいと思っております。
 その上で、ペルソナ・ノン・グラータの過去の事例でありますけれど、こちらが出した事例が4件、それから、相手側から出された事例が2件あります。
 具体的に申し上げますと、過去に、我が国が駐日外国大使館員に対してペルソナ・ノン・グラータを通告した事例としては、1973年に在日韓国大使館の一等書記官、2006年に在日コートジボワール大使館のアタッシェ、2012年に在日ロシア大使(注:会見最後の部分で「在日シリア大使」に訂正)、そして、2022年の在札幌ロシア総領事、この4例がありました。
 一方で、戦後ありますが、我が国の在外職員が、ペルソナ・ノン・グラータであることを通告されたものと確認される事例、これは2012年の在シリア大使に対する通告、及び2022年の在ウラジオストク総領事館の館員に対する通告の2例があると、このように承知をいたしております。

中国におけるスパイ罪の運用

【共同通信 恩田記者】中国に関して、中国国内のスパイ罪の運用について伺います。北京市の高級人民法院は、13日、日本人外交官に情報提供したなどとして、スパイ罪に問われた中国共産党系の主要紙の元幹部、董郁玉(とう・いくぎょく)氏の控訴上訴を棄却しました。懲役7年の1審判決を支持し、判決が確定したことになります。昨年11月の1審判決は、董氏と親交のあった日本人外交官らの名前の一部を列挙し、スパイ組織の代理人と認定しています。在中国日本大使館をスパイ組織とみなしていますが、受け止めと、中国国内のスパイ罪の不透明な運用について見解を伺います。  

【茂木外務大臣】当該裁判につきましては、裁判の判決を含めて、事実関係は確認中であります。
 その上で、御指摘の事案を含めて、我が国政府の外交活動に関する個別具体的な事柄を明らかにすることは、今後の外交活動に支障を与える懸念があるため、お答えを差し控えますが、それが何か悪いことをやっていると、そういうことでは決してなくて、我が国の在外公館が行っている外交活動、これは、外交官として正当な業務であると、これは間違いないと思っております。
 また、我が国は、中国のいわゆる「反スパイ法」について、これまでも中国側に対して、例えば「反スパイ法」、最後のところに、「その他スパイ行為」とか、そういうのが入ってきたり、あいまいな部分もありますし、また、法執行、及び司法プロセスにおける透明性、こういったことの確保を求めているところであります。
 そうした透明性は、まだ不十分であることから、引き続き、関連の取組、また、申入れ等々も行っていきたいと考えております。

存立危機事態

【香港フェニックステレビ 李記者】先ほど出ました質問の関連ですけれども、今回、中国の日本側に対して抗議をした件ですが、この抗議の際に、中国が、高市総理の発言を撤回するように求めたということなんですけれども、この求めた撤回について、日本側が撤回について断ったということでしょうか。そして、先ほど大臣の説明の中にありましたように、「明確に日本側が反論しました」といったことですけれども、この反論というのが、具体的に、中国側のどの主張に対して、どのように反論したのかということをお聞かせください。

【茂木外務大臣】外交上のやり取りでありますので、細かい部分については申し上げませんけれど、高市総理の答弁の趣旨、これは存立危機事態というものが、どういう事態であるかと、そして、どういう場合に、この存立危機事態というのが認定をされ、発動されるかと、こういったことについて、これまで、このことについては、既に平和安全法制制定してからその審議の中でも、また、その後も、しっかりと説明していると、その考え方というのは変わっておりませんので、そのことが我が国の立場であるということを、説明して、中国の言っている主張は違っていると、こういう形で反論させていただいたということです。

【フェニックス 記者】撤回について断ったのかどうかということについて。

【茂木外務大臣】ですから、高市総理を含めて、我が方の、これまでの主張といいますか、説明、この平和安全法制、存立危機事態に対する説明というのは、明確でありまして、それ自体、なんら国際法に反するものでもありませんし、しっかり国会での審議をして、成立している法案でありますから、撤回する必要はないと、それは当然のことであります。

JICA海外協力隊60周年と開発協力

【時事通信 千葉記者】話題変わりまして、JICAの海外協力隊の関係なんですけれども、発足から60年、今年迎えて、昨日、記念式典が開かれています。60年を受けた御所感をお伺いしたいのと、もう一点、先日ホームタウンの問題があったりなど、人的交流であるとか、開発協力に国民の理解が得られなくなっている現状もあると思います。そうした海外の開発協力の意義や必要性についてどのようにお考えでしょうか。

【茂木外務大臣】昨日、JICAの海外協力隊発足60年にあたりまして、両陛下の御臨席を賜りまして、JICA海外協力隊発足60周年記念式典、盛大に開催をされたところであります。
 この60年の間、JICAの海外協力隊、これ本当に、かなり辺境な地といいますか、かなり生活環境が厳しい地域において、それは工業であったり、農業であったり、文化活動であったり、様々な活動について、「日本らしい顔の見える開発協力」の担い手として、国際社会において、信頼と絆を築き上げてきたと考えております。
 私も、これまで海外に行ったときに、外務大臣時代以外も含めて、現地にいるJICAの青年協力隊の若者と何度も交流したことがありますけど、本当に厳しい条件の中で、しかし、やりがいを持って、一生懸命仕事しているというか、支援活動しているなと。また、それを、楽しそうに話してくれると、このことは非常に印象に残っているところでありますけれど、こうした日本らしい開発協力によって得られる相手国の信頼、これは、日本にとって、かけがえのない財産だと思っているところでありますし、また、青年海外協力隊の経験者、海外協力隊で、仕事が終わった後、内外で、その経験を生かして、様々な分野で活動しておりまして、その評価も非常に高いと考えております。
 地元でも、市議会議員で、ボリビアで青年海外協力隊で活動していた女性、ボリビアですから、相当高地ですけれど、市議会議員として結構頑張っていて、仲間の評価も高かったりするわけでありますけれど、青年海外協力隊で活動してきたと、いろいろな、それは、中南米であったり、そしてまた、アフリカであったり、そういった経験者というのは、その後、海外に残る人もいますし、日本に戻ってくる人もいますけれど、それに対する国民の評価というのも私は高いのではないかなと。少なくとも、その地域で活動している、そういったことに対して、周辺、知っている人からは、高く評価をされていると、こんなふうに考えているところであります。
 そして、開発協力と、この必要性についてでありますが、海外協力を通じて、国際社会の平和と繁栄に貢献すること、これは例えば、資源の安定的な確保であったり、何よりも日本の信頼向上等を通じて、ひいては我が国の平和や安定、そして、更なる発展といった、国益につながるものであると、こんなふうに、今、考えております。
 ODA、これは戦略的効果的に活用して、経済安全保障等の重要課題への対応であったりとか、時代の変化に合わせた「自由で開かれたインド太平洋」の深化、更には、グローバル・サウスとのきめ細かい協力と、こういったことも進めていく一助になるものだと、こんなふうに考えているところであります。

【茂木外務大臣】ごめんなさい。一つ間違いがあって、先ほどのペルソナ・ノン・グラータの関連で、こちらが通告した事例の中で、3番目に言いました2012年在ロシアと言ったのですけれど、在日シリアでした。日がロに見えたんだ。
 もう一回言うと、1973年に在日韓国大使館の一等書記官、2006年に在日コートジボワール大使館アタッシェ、そして12年に在日シリア大使、そして、2022年に在札幌ロシア総領事館の領事、この4名ということになります。

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