記者会見
岩屋外務大臣臨時会見記録
(令和7年9月25日(木曜日)19時05分 於:ニューヨーク(米国))
冒頭発言
まだ明日もありますけれども、今日までの訪問の所感を冒頭に申し上げたいと思います。
今回の国連総会ハイレベル・ウィークでは、「パレスチナ問題の平和的解決及び二国家解決の実現のためのハイレベル国際会議」を始めとする各種のテーマ別の会合に出席をいたしました。加えて、日米韓外相会合、G7外相会合、G20外相会合といった多国間の会合に出席するとともに、各国の外相と個別の会談を実施をいたしまして、合計で約30件の会合や会談を行うことができました。このように非常に密度の高い充実した滞在となりました。今回の訪問を通じて得られた成果について大きく4点申し上げたいと思います。
第一に同盟国・同志国との協力関係の強化です。まず、G7外相会合では米国のルビオ国務長官を始めとするG7の同僚とウクライナ、中東及びインド太平洋を含む地域情勢について率直な議論を行いました。我が国の考え方をしっかりと打ち込むとともに、G7として引き続き緊密に意思疎通を行い、連携していくことで一致をいたしました。
また、韓国のチョ・ヒョン外交部長官の就任後初となる日米韓の外相会合では、日米韓を取り巻く戦略環境は厳しさを増す中で、三か国が結束を強化し、特に北朝鮮への対応や安全保障、経済安全保障分野での協力を一層進展させることを確認をいたしました。
第二にグローバル・サウスとの連携強化です。この点については、22日のジャパン・ソサエティにおける私の基調講演でも我が国の考え方を発信したところでございます。また、G20外相会合では平和と持続可能な経済発展との相互関係やグローバルな諸課題の解決に向けたG20と国連などとの連携強化について議論を行い、G20ヨハネスブルグ・サミットの成功に向けて協力を強化することを確認いたしました。このほか、ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)拡大トロイカ外相会合におきましては、価値や原則を共有する中南米各国との関係強化や、国際場裡における協力について率直な意見交換を行いました。
第三にグローバル・ガバナンスを再構築し、法の支配と国連を含む多国間主義の信頼を回復するための取組です。安保理改革に関するG4外相会合では、私(大臣)が議長を務め、ブラジル、ドイツ、そしてインドと共に、昨年の未来サミットの成果や、本年が国連創設80周年であることを踏まえ、安保理改革の実現に向けて、G4間の緊密な協力を確認をいたしました。また、国連総会議長とも会談を行い、安保理改革を始めとする国連の機能強化に向けて、総会議長のリーダーシップに期待する旨を伝達し、連携を強化していくことを確認をしたところでございます。
第四に緊迫するイスラエル・パレスチナ問題への対応です。22日の「パレスチナ問題の平和的解決及び二国家解決の実現のためのハイレベル国際会議」では、「二国家解決」というゴールに一歩でも近づくような現実的かつ積極的な役割を果たしていくという我が国の決意を述べるとともに、そのための外交努力を実質的な形で進めていくという我が国の考え方を国際社会に対して発信いたしました。
こうした考えのもとに、パレスチナが直面している財政危機に対処するための緊急連合の設立に係る外相共同声明をフランス、ノルウェー、サウジアラビア、スペインなど、有志国と共に本日発出したところです。我が国として、パレスチナの国造りのための支援を更に進めるとともに、「二国家解決」の実現、中東地域の平和と安定の確保に向けて、国際社会における我が国の国益も踏まえつつ、最も適切かつ効果的と考える外交努力をこれからも継続してまいります。
また、ウクライナ情勢については、「クリミアプラットフォーム首脳会合」に出席いたしました。そして、石破総理からのメッセージとして、ウクライナに平和をもたらすべく、今後も議論に積極的に参画し、日本にふさわしい役割を果たしていく決意を表明するとともに、関係国に連携を呼びかけたところです。この他、海洋、核軍縮、女性、平和構築といった重要テーマに関する会合に出席をし、我が国の立場や考え方について発信し、国際社会に対して協力を呼びかけました。
今日、ウクライナ情勢や中東情勢を始め、国際社会の分断と対立は深まっています。そして、欧州、中東、アジアといった各地域の安全保障はますます不可分となってきております。だからこそ、日本は「対話と協調の外交」によって分断を融和へ、対立を協力に導いていかなければなりません。各国と解決策を共に創り、共に行動していかなければならないと思います。そして今回の訪問では、これまで構築してきた各国との信頼関係を積極的に活用しつつ、「対話と協調の外交」を更に前に進めることができたと考えております。
長くなりましたが、冒頭私からは以上です。
質疑応答
イスラエルへの新たな対応
(記者)まずパレスチナ問題について伺います。石破総理の一般討論演説と、岩屋大臣が御出席されたハイレベル国際会議では、イスラエルが「二国家解決」の道を閉ざす行動をとる場合、日本は新たな対応を取るという言及がありました。岩屋大臣は新たな対応について、これまでイスラエルへの制裁やパレスチナの国家承認といったものを例示というか示唆されています。道を閉ざす行動というのは具体的にどういった状況を想定しているか教えてください。
(大臣)具体的にこの段階で予断することは差し控えたいと思いますが、これまでも述べてきているとおり、軍事作戦の拡大、人道支援の制限、西岸併合の動きといったイスラエルによる一方的な行為は我が国として断じて容認できません。これらの行為が「二国家解決」の土台を突き崩すような事態に至ったと判断される場合は、我が国として新たな対応を取るということでございます。
内政が国連総会等の外交に与える影響
(記者)次に日本の政治状況と外交への影響について伺います。石破首相が一般討論演説に今回臨みましたけれども、ニューヨークに滞在された時間は短く、マルチ会合にも参加しないなど、内容が寂しいものでした。また石破首相の退陣に伴い、日本は国連総会に出席する首相が2年連続で代わることになります。日本のこういった政治情勢、不安定な状況が外交に与える影響について、岩屋大臣はどのようにお考えでしょうか。
(大臣)国際情勢が激動する中で、国内の政治状況によって外交の停滞を招くことがあってはならないということは、これまでも述べてきたとおりでございます。今回、石破総理の一般討論演説ですが、私もあの場内で聞いておりましたけれども、各国の参加者の胸を打つものがあったと受け止めております。「対話と協調の外交」を通じて、国際秩序の再構築を目指していくという我が国の姿勢をしっかりと表明されたと考えておりますし、それはしっかりと伝わったとそういうふうに受け止めております。また、石破総理は短い滞在の間ではありましたけれども、グテーレス国連事務総長、トランプ大統領、クウェート、フィンランド、オランダの首脳などと会談や対話を精力的にこなされました。私は非常に有意義な訪問だったというふうに考えております。また、私自身も、合計で約30の会合や会談を行いました。「クリミアプラットフォーム首脳会合」では、ゼレンスキー大統領、シビハ外相も同席されておられましたが、石破総理からのメッセージをしっかり伝えさせていただきました。今回、石破総理と私の国連総会への出席は、我が国の立場をしっかり表明するとともに、各国との連携を再確認する有意義な機会になったと考えております。
本来、外交担当者がどんどん変わるということは望ましいことではないというふうに私は思っておりますけれども、石破総理が示された大きな外交方針というものが、今後とも安定的に継続されていく、「対話と協調の外交」がこれからも続けられていく、ということを心から望んでいるところでございます。
ウクライナ情勢
(記者)ウクライナ情勢について、アメリカのトランプ大統領は欧州の支援があればウクライナが占領された領土を奪還ることができるとし、これまでの見方を転換させました。岩屋大臣は今回の国連での会合でも、ゼレンスキー大統領の前で、この領土の一体性についてメッセージを出されました。トランプ大統領の今回の見方に関する岩屋大臣に受け止めをお伺いいたします。
(大臣)御指摘のトランプ大統領の発言は承知をしておりますが、その一々についてコメントすることは控えたいと思います。ただ今回の発言は、米側として、ウクライナや欧州と緊密に意思疎通しながら、ウクライナに早期に平和をもたらすべく、一貫して取り組んできた中において、現状の打開を目指した、そして改めて、ウクライナ、欧州、米国の連携の重要性を強調をしたものと私は受け止めております。
私は先ほど申し上げた第5回クリミアプラットフォーム首脳会合に出席して、ウクライナの主権と領土の一体性を一貫して日本を支持しているんだということ、また、我々は結束して公正かつ永続的な平和がウクライナにもたらされるように協力をしていくんだ、そして、ロシアからの迅速かつ前向きな反応を引き出していかなければならない、そのためにも協力していかなければならない、この重要性を発信をしたところでございます。こうした会合の機会を活用して、米国、ウクライナ、欧州を含めた国際社会と緊密に連携して、一日も早くウクライナに平和が回復するように役割を果たしていきたいと考えております。
JICAアフリカ・ホームタウン
(記者)昨日、JICAがアフリカ・ホームタウン事業を撤回すると発表しました。この件についての岩屋大臣の受け止めと、また、政府として今後検討している対応について伺います。
(大臣)JICAの理事長から会見があったと思いますが、JICAアフリカ・ホームタウン構想については、ホームタウンという名称に加えて、JICAが自治体をホームタウンとして認定するという構想のあり方そのものが、国内での誤解と混乱を招いて、当該4つの自治体に過大な負担が生じるという結果となってしまったと考えております。これは申し訳なかったと思っております。JICAは、このような現状に鑑みて、外務省を含む関係機関、関係者らとの協議も踏まえまして、今回この構想の撤回を表明したと承知をしております。
他方、アフリカ地域を含む諸外国との間で、国際交流を促進することは引き続き極めて重要だと考えておりまして、これを支援するための取り組みは当然のことながら継続してまいります。同時に国民の理解と支持は、国際交流を推進する際の前提でございますので、外務省としても諸外国との国際交流の意義について、国民の皆さんの幅広い御理解が得られるように努力をしていきたいと考えております。また、交流事業の内容に関する相手国政府への説明をこれまで以上に丁寧に、また、徹底をしていきたいと考えております。
自民党総裁選
(記者)政務について伺います。自民党総裁選についてお聞きします。22日に告示され、5人による争いとなる構図が確定しました。岩屋大臣はどの候補を支持されるでしょうか。また、支持される理由についても教えてください。
(大臣)これは私はまだ決めておりません。この間、国連ハイレベル・ウィークでずっと対応をしておりましたので、正直まだ各候補者の考えも十分に把握をしておりませんので、そういったものをしっかりと見させていただいた上で、最終的に判断をしていきたいと思っております。大事な事は以前の会見でも申し上げましたけれども、政治改革をしっかり貫徹をするということ、それから石破政権の課題を引き継ぎ、これを発展させていくということ、そして少数与党であることに変わりはないわけですから、熟議の政治を更に進めていくということ、外交で言えば排外主義とは明確に一線を画して世界に開かれた日本を目指していくということ、こういう方向に沿った候補者の方をぜひ選びたいと考えているところです。