(英語版)
1.導入
本日は,貿易政策の中でも,「サービス」と「アジア」という21世紀を特徴付けるであろう二つのテーマのもとで議論を行う機会を頂き,大変光栄に思います。主催者である米サービス連盟のヴァスティン会長を始め皆様のご尽力に,心から感謝申し上げます。
私は,去る5月にモンタナで,カーク通商代表が議長として大きな成果を収めたAPEC貿易担当大臣会合に出席し,アジア太平洋の貿易政策全般について議論を行ったところです。その際,フェラーリ・メキシコ経済大臣とも会談いたしました。
2.東日本大震災からの復興
本題に入る前に,まず,東日本大震災後に各国から頂いた支援に感謝を申し上げます。
地震は,その直後の津波も併せて,23,000人を超える死者と行方不明者,被災地のストックへの直接的な被害だけで約16.9兆円という,未曾有の規模の被害をもたらしました。
これに対し,日本政府は,持てる力を総動員して,被災者の救助・支援や被災地の復旧に取り組んでいます。その間,「トモダチ作戦」の名の下で心強い支援を寄せてくれた米国を始め,7月までに,161の国・地域と43の国際機関から支援の表明を頂きました。この場を借りて御礼申し上げます。
日本は着実に立ち直りつつあります。日本の多くの地域は大震災の影響は全くなく,日本は「open for business and travel」であり続けています。
なお,原発事故については,総力をあげて対処中であり,事態は予断を許しませんが,徐々に着実に収束に向かっています。引き続き最大限の透明性をもって迅速・正確な情報提供に努めていく所存です。
震災から立ち直ろうとする日本に対して今後も更なる御支援を頂けるとすれば,これまで以上に,我が国とのビジネスや観光・留学を推し進めていただくことが,最もありがたい支援となります。既に多くの国には渡航制限の解除を含む対応を取っていただいていることに深く感謝申し上げるとともに,是非日本との交流をさらに進めていただくよう,お願い申し上げます。
3.「世界の成長センター」としてのアジア
それでは,本題である「アジアにおける競争環境」に移ります。
[世界の成長センターであるアジア]
アジアに目を向けてみれば,世界経済危機の後でいち早い回復を見せたアジア地域は,今や「世界の成長センター」となっています。IMFの見通しでは,2015年には,NAFTAやEUを超える経済圏になると予想されています。
[中国の役割とWTOドーハ・ラウンド]
中でも,中国は,2001年のWTOへの加盟から早くも10年が経とうとしています。この間,貿易を通じてグローバルな経済体制から成長の機会を得ていることは誰の目にも明らかであり,サービスの世界においてもその存在感は増しております。21世紀のアジアの競争環境のあるべき姿を考えるためにも,後ほど議論の機会が設けられていることは重要であると考えます。
また,今触れたWTOに関して一言申し上げれば,ドーハ・ラウンド交渉については,今後十数年のグローバルな経済体制を規定することになるであろう交渉が進捗していない現状について,すべてのWTO関係者が懸念しているところです。
重要なことは,ラウンドの恩恵にあずかるWTOメンバーが,成長著しい新興国も含め,その応分の責任を自覚することです。
[APECの重要性]
さて,アジア地域との貿易を語るとき,APECを欠かすことはできません。米国にバトンタッチする前の昨年,日本はAPEC議長を務めました。アジア太平洋地域の更なる成長と繁栄のための道筋として「横浜ビジョン」を示しました。横浜ビジョンにおいては,サービス,物品,投資の一層の自由化・円滑化に向けた取組をしていくこととしています。
11月には,その大洋の中心に所在するホノルルにおいて,今年のAPEC首脳会議が行われます。環境物品・サービスの自由化を始めとするグリーン成長の推進,地域経済統合といった事項につき,議長の米国と共に取り組んでいきたいと思います。
4.我が国の取組(積極的なEPA/FTA交渉)
最後に日本のEPA/FTA政策について現状を簡単に話したいと思います。
日本は,今年の5月にはペルーとのEPAの署名を終えました。本年2月に署名を終えたインドとのEPAは,10日後の8月1日に発効する予定です。
さらに,昨年11月に定めた「包括的経済連携に関する基本方針」では,わが国自身の「未来を拓く」ための固い決意を固め,世界の潮流から見て遜色のない高いレベルの経済連携を進めると同時に,必要となる抜本的な国内改革を先行的に推進することとしており,東日本大震災からの復興及び日本再生の方針を提示する「政策推進指針」においても,同「基本方針」の基本的考え方を維持することが確認されています。環太平洋パートナーシップ(TPP)協定交渉への参加の時期について,震災のために遅れていますが,改めてその判断の時期も含めて総合的に検討し,できるだけ早期に判断したいと考えています。
5.結語
我々は,震災を契機に,日本が世界と共にあることを改めて実感しました。世界から差し伸べられた温かい連帯と支援に報いる上でも,国際社会と共に一日も早く「開かれた復興」を成し遂げ,世界のリーダー国の一つとして,改めて国際社会の善意へのお返しが出来るように取り組んでいく決意です。そのためにも,今後とも,この地域から生まれる最先端のサービスと,その貿易を促進する21世紀型のルール作りに対して,積極的に関与し続けていく所存です。ご静聴ありがとうございました。