外務大臣談話

令和3年3月11日

 10年前の3月11日、日本は未曽有の災害に見舞われました。東日本大震災では、地震や津波により2万人以上の犠牲者が発生し、東京電力福島第一原子力発電所の事故処理は現在も続いています。震災から10年という節目を迎えるに当たり、改めて犠牲となられた方々の御冥福をお祈りするとともに、御遺族の皆様に心からお悔やみを申し上げます。

 震災の発生直後から、我々は世界中の国々から数えきれない支援と励ましを頂きました。多くの国や地域から支援物資や義援金が寄せられただけでなく、行方不明者の捜索や被災者の支援のために世界中の人々が被災地に駆けつけてくださりました。改めて、世界各国・地域の皆様に心から御礼申し上げます。

 震災から10年が過ぎ、まだ避難生活を送る住民の方々がいらっしゃり、復興に向けた課題は残っています。しかし、復興に向けた支援を通じ、被災地は着実に前に進んでおり、世界との結びつきがこれまで以上に強くなっています。福島県の農林水産物の輸出量は、2017年に震災前の水準を回復し、それから3年連続で過去最多を更新しています。一方、震災後10年を経てもなお日本産食品の輸入を規制する国や地域があることは大変残念です。科学的根拠に基づき、一日も早い規制撤廃を実現すべく、全力を尽くすとともに、農林水産物の輸出拡大に向け、更に取組を進めます。地元企業の雇用も改善し、イノベーションを通じた経済成長が現実のものとなりつつあります。例えば、福島水素エネルギー研究フィールドは、水素エネルギーや再生可能エネルギーの研究開発拠点として、国際的な知的交流やビジネスの起点、そしてイノベーションの源泉となっています。また、被災地の青少年と世界各地の若者との交流も続いています。

 日本が震災を通じて得た教訓は、自国の復興の重要性だけではありません。東日本大震災の前から日本は防災に関する国際協力を重視してきましたが、この10年の間に防災に関する支援を更に強化してきています。2015年には仙台で第3回国連防災世界会議を開催し、「より良い復興(Build back better)」という、国際社会が共通して取り組むべき考え方を提唱し、持続可能な開発目標(SDGs)に防災の視点を盛り込むことに貢献しました。また、2015年には「世界津波の日」を国連総会で決定することを主導し、国際的な防災教育の普及に向けて努力を続けています。

 日本国民は、震災を通じて得られた世界の人々の温かいお気持ちと支援を決して忘れることはありません。近年では、気候変動に伴う異常気象が頻発するなど、自然災害はより激しさを増しています。そうした中で、防災を通じた国際協力は一層重要になってきており、これからも世界の人々の平和と安全のためにたゆまぬ努力を続けていきます。

 日本は、本年夏、人類が新型コロナウイルスに打ち勝つ世界の結束の証として、東京オリンピック・パラリンピック競技大会を安全・安心な形で開催し、感謝の気持ちを込めつつ東日本大震災からの復興を世界に発信する機会とする決意です。


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