アメリカ合衆国

令和3年8月18日

 5月28日(米国時間)、バイデン大統領は、米国三大教書の一つである2022年度(2021年10月~2022年9月)の予算教書(注)を議会に提出した。概要は以下のとおり。

要旨

  • 2022年度予算:歳入4.2兆ドル、歳出6.0兆ドル、1.8兆ドルの財政赤字。第二次世界大戦以降の予算教書で最大の歳出水準。
    注:2021年度(2020年10月~2021年9月):歳入3.6兆ドル、歳出7.2兆ドル、3.7兆ドルの財政赤字。
  • 本教書の提言によると、今後10年間は毎年1兆ドル強の財政赤字となり、連邦政府債務のGDP比は2021年度に過去最大の109.7%、2031年度には117%まで膨らむ見通し。
  • 法人税や個人所得税の最高税率引上げ等の税制改革により、米国雇用計画及び米国家族計画による歳出を15年かけて賄うとし、10年後までに財政赤字削減、その後の10年間で財政赤字を2兆ドル以上削減し、財政健全化に向かう予測。
  • 実質成長率は、2021年5.2%、2022年4.3%、その後2031年にかけて2.0%まで逓減する見込み。
  • 本予算教書では、既に発表済みの「米国雇用計画」(3/31)及び「米国家族計画」(4/28)を補完する形で、国力の基盤への再投資として経済機会拡大、教育改善、気候変動対策、強固な国防体制、世界における米国の立場の回復に向けた予算措置を求める旨説明。

 (注)米国では、議会に予算編成権があり、また、行政府には法案提出権がないため、議会が歳入、歳出に関する予算関連法案を独自に作成して審議する。したがって、通常予算教書は議会に対する大統領の提案にとどまり、何ら拘束性を有していない。

1 2022年度予算案(歳入)

(画像1)歳入(約4兆1,740億ドル(2022年度))のグラフ (内訳)
個人所得税 2兆390億ドル(48.8%)
法人税 3,710億ドル(8.9%)
社会保障等 1兆4,620億ドル(35.0%)
その他 3,030億ドル(7.3%)
(画像2)歳入(3兆5,810億ドル(2021年度))のグラフ (内訳)
個人所得税 1兆7,050億ドル(47.6%)
法人税 2,680億ドル(7.5%)
社会保障等 1兆2,960億ドル(36.2%)
その他 3,110億ドル(8.7%)

2 2022年度予算案(歳出)

(画像3)歳出(6兆110億ドル(2022年度))のグラフ (内訳)
裁量的経費 1兆6,880億ドル(28.1%)
(国防関係費 7,560億ドル(12.6%)
 非国防関係費 9,320億ドル(15.5%))
義務的経費 4兆180億ドル(66.9%)
(社会保険 1兆1,960億ドル(19.9%)
 メディケア 7,660億ドル(12.7%)
 メディケイド 5,710億ドル(9.5%)
 その他 1兆4,860億ドル(24.7%)
 利払費 3,050億ドル(5.1%))
(画像4)歳出(7兆2,490億ドル(2021年度))のグラフ (内訳)
裁量的経費 1兆6,960億ドル(23.3%)
(国防関係費 7,350億ドル(10.1%)
 非国防関係費 9,600億ドル(13.2%))
義務的経費 5兆2,510億ドル(72.4%)
(社会保険 1兆1,350億ドル(15.7%)
 メディケア 7,090億ドル(9.8%)
 メディケイド 5,210億ドル(7.2%)
 その他 2兆8,860億ドル(39.8%)
 利払費 3,030億ドル(4.2%))

3 財政見通し・経済見通し

(1)財政収支の見通しは以下のとおり。

(画像5)リーマンショック以降の米国財政赤字の推移と見通し(対GDP比率)のグラフ
  過去数値 2022年度予算教書 2021年度予算教書 CBO(議会予算局)見通し
2007年 -1.1      
2008年 -3.1      
2009年 -9.8      
2010年 -8.7      
2011年 -8.4      
2012年 -6.7      
2013年 -4.1      
2014年 -2.8      
2015年 -2.4      
2016年 -3.2      
2017年 -3.5      
2018年 -3.8      
2019年 -4.6 -4.6 -4.6 -4.6
2020年 -14.9 -14.9 -4.9 -14.9
2021年   -16.7 -4.1 -10.3
2022年   -7.8 -3.7 -4.3
2023年   -5.6 -2.9 -4.0
2024年   -5.3 -2.0 -3.9
2025年   -5.5 -1.8 -4.0
2026年   -5.1 -1.6 -3.7
2027年   -4.6 -1.4 -3.7
2028年   -4.8 -1.4 -4.2
2029年   -4.2 -0.7 -4.7
2030年   -4.6 -0.7 -5.2
2031年   -4.7   -5.7

(2)経済成長率の見通しは以下のとおり。

(画像6)米国の経済成長率の見通しの折れ線グラフ
  2022年度予算教書 2021年度予算教書 CBO(議会予算局)見通し
2007年   1.9 1.9
2008年   -0.1 -0.1
2009年   -2.5 -2.5
2010年 2.6 2.6 2.6
2011年 1.6 1.6 1.6
2012年 2.2 2.2 2.2
2013年 1.8 1.8 1.8
2014年 2.5 2.5 2.5
2015年 2.9 2.9 2.9
2016年 1.6 1.6 1.6
2017年 2.2 2.2 2.2
2018年 2.9 2.9 2.9
2019年 2.4 2.4 2.4
2020年 -3.5 2.8 -3.5
2021年 5.2 3.1 3.1
2022年 4.3 3.0 3.2
2023年 2.3 3.0 2.2
2024年 2.3 3.0 1.9
2025年 2.3 3.0 1.8
2026年 2.0 2.9 1.8
2027年 1.8 2.8 1.7
2028年 1.9 2.8 1.6
2029年 1.9 2.8 1.6
2030年 2.0 2.8 1.5
2031年 2.0   1.6
2032年      
2033年      
2034年      
2035年      

4 裁量的経費の上限額の推移

(画像7)2011年予算管理法による裁量的経費の上限額の推移のグラフ
  2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年
10,600 10,020 10,120 10,140 10,670 10,700 12,080 12,440 12,880 12,980
国防 5,540 5,180 5,210 5,210 5,480 5,510 6,290 6,470 6,665 6,715
非国防 5,060 4,840 4,920 4,920 5,180 5,190 5,790 5,790 6,215 6,265
【2013年超党派予算法】 2014 2015
国防 +220 +90
非国防 +220 +90
【2015年超党派予算法】 2016 2017
国防 +250 +150
非国防 +250 +150
【2018年超党派予算法】 2018 2019
国防 +800 +850
非国防 +630 +680
【2019年超党派予算法】 2020 2021
国防 +905 +805
非国防 +795 +715

 (注)2011年予算管理法により、裁量的経費は2011年度から2021年度(2020年10月~2021年9月)まで上限額が設定されている(2022年度以降の裁量的経費の上限額は設定されていない)。

5 各省庁の要求

 省庁別の「裁量的経費」の増減率

省庁 2021年度歳出法
(億ドル)
2022年度予算教書
(億ドル)
前年度からの増減(%)
教育省 730 1,028 +298(+40.8%)
商務省 89 115 +26(+29.4%)
保健福祉省 1,084 1,337 +253(+23.4%)
環境保護庁 92 112 +20(+21.6%)
農務省 239 279 +40(+16.7%)
内務省 150 174 +25(+16.7%)
住宅都市開発省 596 687 +90(+15.2%)
運輸省 224 257 +33(+14.8%)
労働省 125 142 +17(+14.0%)
財務省 135 150 +15(+11.3%)
国務省(注) 573 636 +63(+11.0%)
エネルギー省 418 462 +43(+10.4%)
退役軍人省 1,046 1,131 +85(+8.2%)
司法省 335 353 +18(+5.3%)
国防省 7,037 7,150 +113(+1.6%)
国土安全保障省 549 549 +0(+0.1%)
裁量的経費計 14,013 15,225 +1,211(+8.6%)

(単位:億ドル、出典:2022年度予算教書)

 (注)「国務省」には、国際開発庁(USAID)、財務省の国際プログラム、国際機関のための資金を含む。

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