G7/G8
G7伊勢志摩サミット
平成28年5月27日
5月26日及び27日,伊勢志摩にて,安倍総理の議長の下でG7サミットが開催されたところ,会合の概要以下のとおり。我が国がサミットを主催するのは2008年の北海道洞爺湖サミット以来8年ぶり。
1 議題・日程
(1)出席者
日本:安倍総理(議長),米国:オバマ大統領,フランス:オランド大統領,ドイツ:メルケル首相,英国:キャメロン首相,イタリア:レンツィ首相,カナダ:トルドー首相,EU:トゥスク欧州理事会議長及びユンカー欧州委員会委員長(2)日程
5月26日(木曜日)第1セッション(ワーキング・ランチ):G7の価値・結束,世界経済
第2セッション:貿易
第3セッション:政治・外交
第4セッション(ワーキング・ディナー):政治・外交
5月27日(金曜日)
第5セッション:気候変動,エネルギー
第6セッション:アジアの安定と繁栄(アウトリーチ(1))
第7セッション(ワーキング・ランチ):開発,アフリカ(アウトリーチ(2))
(注)アウトリーチには,チャド,インドネシア,スリランカ,バングラデシュ,パプアニューギニア,ベトナム,ラオス,国際連合(UN),国際通貨基金(IMF),世界銀行(WB),経済協力開発機構(OECD),アジア開発銀行(ADB)が参加。
2 成果文書
G7での議論を踏まえ,「G7伊勢志摩経済イニシアティブ」を含む「G7伊勢志摩首脳宣言(PDF)」を発出。また,併せて以下の附属文書も発出。
3 G7会合概要
(1)G7の価値・結束,世界経済
ア G7の価値・結束
世界経済の下方リスク,国際秩序に対する一方的な行動による挑戦といった喫緊の課題に対し,自由,民主主義,基本的人権の尊重,法の支配といった普遍的価値に立脚したG7として,連携して国際社会の取組を主導していくことで一致。イ 世界経済
(A)総論不透明さを増す現下の世界経済の状況を踏まえ,強固で,持続可能な,かつ均衡ある成長軌道を速やかに達成するためのG7の対応について議論。
新たな危機に陥ることを回避するため,現在の経済状況に対応するための努力を強化することで一致。G7として,金融,財政,構造政策の3本の矢のアプローチの重要な役割を再確認しつつ,(1)経済政策による対応を協力して強化すること,(2)世界的な需要を強化し,供給上の制約に対処するため,金融・財政政策と構造政策の3つの政策手段を総動員すること,特に,機動的な財政戦略の実施と構造政策を果断に進めることについて協力して取組を強化することの重要性に合意。
(B)「G7伊勢志摩経済イニシアティブ」
世界経済,貿易,インフラ,保健,女性,サイバー,腐敗,といった具体的な分野におけるG7としての行動をとりまとめ,「G7伊勢志摩経済イニシアティブ」に合意。G7が世界経済を牽引するとの明確な姿勢を発信。(C)優先課題
(i)質の高いインフラ投資「質の高いインフラ投資」の基本的要素についても国際社会で認識を共有することが重要との点で一致。かかる観点から,「質の高いインフラ投資の推進のためのG7伊勢志摩原則」にG7として合意。
G7で合意した内容を,今後各国,国際機関等に対して効果的に発信し,インフラ投資・支援の実施において,「原則」に沿った行動をとるよう促していくことを確認。
安倍総理から,日本は本年のG7議長国として,アジアのみならず,世界全体に対して今後5年間で総額約2000億ドル規模の質の高いインフラ投資を実施していくこと等を決定した旨表明。
(ii)女性
女性のエンパワーメントの礎として,女性の潜在力の開花及び自然科学分野における女性の活躍促進が重要との認識の下,「女性の能力開花のためのG7行動指針」及び「女性の理系キャリア促進のためのイニシアティブ(WINDS)」に合意。
また,安倍総理から,2016~2018年の3年間で約5000人の女性行政官等の人材育成,約5万人の女子生徒への教育支援を実施する旨表明。
(iii)サイバー
サイバー攻撃に対し,断固たる措置をとることにつき一致するとともに,サイバー空間における「法の支配」の推進及びデジタルエコノミーの促進の重要性につき一致。「サイバーに関するG7の原則と行動」に合意するとともに新たにG7ワーキンググループを設置し,サイバーセキュリティに関するG7の協力を強化していくことで一致。
(iv)腐敗対策
腐敗は,法の支配,民主主義,公正な競争といったG7共通の価値観に根本的に反するものであり,腐敗と戦う取組は,経済成長,持続可能な開発,平和及び安全の維持に不可欠であることを確認。G7が模範となって国際社会における腐敗対策強化の重要性を発信すべく,「腐敗と戦うためのG7の行動」に合意。
(D)税及び透明性
海外の資産保有の裏側に,課税逃れ,マネーロンダリング等の不正な資金の流れがある場合には,厳正な対処が必要との点で一致。BEPSプロジェクトへの参加国拡大や金融口座情報の自動交換,さらに,法人等の「実質的所有者」に係る透明性向上が重要であることを確認。(2)貿易
G7として,自由貿易の重要性及び保護主義抑止へのコミットメントを再確認。WTOを中核とする多角的貿易体制の強化とともに特定分野に関するWTOの有志国間交渉も積極的に進めていくことを確認。経済連携に関し,TPPの署名を歓迎し,早期発効に向けた各国の取組を支持。本年のできる限り早い時期の大筋合意を目指す日EU・EPA等,メガFTAを後押しすることも確認。
貿易自由化が開発に資することを強調し,途上国の貿易自由化を促すことでも一致。
(3)政治・外交
ア テロ・暴力的過激主義対策
テロに対処する上で,水際対策のような短期的な取組に加え,根本原因にある暴力的過激主義に対抗するための寛容の精神や対話の促進といった中長期的な取組も重要であり,G7として,各国の強みを活かし,相互補完的に,かつ相乗効果を生む形で国際的な取組を主導していく必要性につき一致。テロ対策に関する国際的な取組をG7で主導すべく「G7テロ・暴力的過激主義対策行動計画」に合意。イ 難民問題
大規模難民流入に直面する欧州に対し,G7の結束・連帯を表明。短期的な人道支援に加えて,根本原因に対応することの重要性につき一致。安倍総理から,日本は,難民問題への対処を念頭に中東安定化支援の新規のコミットメントとして3年間で約2万人の人材育成を含む総額約60億ドルの支援を中東地域に実施することを説明。
ウ 北朝鮮
拉致問題・核・ミサイルといった北朝鮮をめぐる諸懸案の包括的解決に向けたG7の緊密な連携を確認。エ ロシア・ウクライナ
全ての当事者による,ミンスク合意の完全履行を求めていくことや、ウクライナの包括的国内改革の履行を促すとともに、同国の改革努力を後押しすることを確認。オ 海洋安全保障
国際法に基づいて主張を行うこと,力や威圧を用いないこと,紛争解決には,仲裁手続を含む司法手続によるものを含む平和的手段を追求すべきことの重要性を再確認。東シナ海・南シナ海の状況を懸念し,「海洋安全保障に関するG7外相声明」を首脳として後押し(エンドース)。(4)気候変動,エネルギー
ア 気候変動
COP21での合意で得られたモメンタムを活かしつつ,パリ協定の早期発効及びその効果的な実施に向け,G7が率先して取り組むべきとの決意を確認。同時に,実効的な排出削減を進めるには,主要排出国の積極的な関与を引き出していくことが重要であるとの認識で一致。イ エネルギー
エネルギー安全保障の確保は,国際社会にとって引き続き喫緊の課題であるとの認識の下,(1)上流開発,質の高いインフラ,クリーンエネルギー技術への投資の促進,(2)天然ガス市場の安全保障強化のための行動,(3)エネルギー技術の革新とエネルギー効率の拡充の推進等について一致。4 アウトリーチの概要
伊勢志摩サミットは,8年ぶりにアジアで開催されたG7サミットであることから,「アジアの安定と繁栄」をテーマに,「質の高いインフラ投資」及び「開かれ,安定した海洋」について議論。さらに,今回は「持続可能な開発のための2030アジェンダ(SDGs)」採択後初めてのG7サミットでもあることから,「保健」や「女性の活躍」に焦点を当てつつ,SDGsの推進及びアフリカの開発について議論を行った。
「開かれ,安定した海洋」の確保のために,(1)法に基づく主張をすること,(2)主張を通すために「力」や「威圧」を用いないこと,(3)紛争は平和的に解決すべきこと,の3点が重要であるとの点で各国・機関と一致。
安倍総理からは,本年のG7議長国として,公衆衛生危機対応,感染症対策やUHCの達成に向けた保健システムの強化等の観点から,今後新たに約11億ドルの支援方針を決定した旨発表した。
女性については,女性のエンパワーメントと男女平等の推進が,持続可能な成長のためにも不可欠との点で一致。その観点から,「女性の能力開花のためのG7行動指針」や,「女性の理系キャリア促進のためのイニシアティブ(WINDS)」に対してアウトリーチ参加国・機関からも支持が表明された。
アフリカについては,保健・女性に加え,安全保障や気候変動等にもしっかり取り組み,一体性のある,豊かで平和なアフリカの実現のためにG7が後押ししていくことで一致。この観点から,本年8月にケニアで開催予定のTICADVIに対する期待が示された。
(1)アジアの安定と繁栄
信頼性のあるインフラにより地域の連結性を強化すべく,「質の高いインフラ投資」の推進や制度改善・人材育成等によるインフラの一層の活用が重要であるとの認識で一致。G7で合意した「質の高いインフラ投資の推進のためのG7伊勢志摩原則」や我が国が発表した「質の高いインフラ輸出拡大イニシアティブ」に対してアウトリーチ参加国・機関からも支持が表明された。「開かれ,安定した海洋」の確保のために,(1)法に基づく主張をすること,(2)主張を通すために「力」や「威圧」を用いないこと,(3)紛争は平和的に解決すべきこと,の3点が重要であるとの点で各国・機関と一致。
(2)開発,アフリカ
保健に関し,感染症等の公衆衛生危機への国際社会の対応能力の強化,また幅広い保健課題への対応の鍵となり,危機対応にも資するユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の推進,AMRへの対応強化等が重要との点で一致。これらの分野に関する「国際保健のためのG7伊勢志摩ビジョン」を発出。安倍総理からは,本年のG7議長国として,公衆衛生危機対応,感染症対策やUHCの達成に向けた保健システムの強化等の観点から,今後新たに約11億ドルの支援方針を決定した旨発表した。
女性については,女性のエンパワーメントと男女平等の推進が,持続可能な成長のためにも不可欠との点で一致。その観点から,「女性の能力開花のためのG7行動指針」や,「女性の理系キャリア促進のためのイニシアティブ(WINDS)」に対してアウトリーチ参加国・機関からも支持が表明された。
アフリカについては,保健・女性に加え,安全保障や気候変動等にもしっかり取り組み,一体性のある,豊かで平和なアフリカの実現のためにG7が後押ししていくことで一致。この観点から,本年8月にケニアで開催予定のTICADVIに対する期待が示された。
5 次回サミット
レンツィ首相から,来年のサミットをイタリア(シチリア島)で開催する旨発言し,各国首脳はこれを歓迎した。