平成23年10月20日
10月18日~20日,玄葉外務大臣は,沖縄県を訪問したところ,概要以下のとおり。
ア.来年5月の名護市と宮古島市における太平洋・島サミットの開催,沖縄を訪問する中国人観光客への数次ビザの発給に係る外務省の協力に感謝する。
イ.在日米軍基地問題に関しては,事件・事故,刑事裁判権に係る地位協定の改定,騒音問題等の問題がある。普天間飛行場移設問題に関しては,地元の理解を得られない移設は事実上不可能であり,県外に移設する方が早い。「パッケージ論」も理解できない。沖縄も当事者であることを忘れないで欲しい。(こうした点を含む要請書を手交。)
ア.(ア)外務大臣に就任して初めて沖縄を訪問。戦没者墓苑等を回って歴史の重みを改めて実感した。普天間移設問題については,民主党が当初「最低でも県外」と主張したにも関わらず結局辺野古に回帰したこと,国土面積の0.6%の沖縄に全国の74%の米軍専用基地が集中して負担をかけていることの二点につきお詫びする。
(イ)普天間移設問題は,危険性の除去が出発点。他方,我が国を巡る安保環境が厳しさを増す中で,潜在的紛争地域に等しく近く,シーレーンや太平洋と東シナ海・南シナ海とをつなぐ場所に位置するという沖縄が持つ地政学的重要性は代替が効かない。現在の日米合意は,海兵隊のグアム移転,嘉手納以南の土地の返還を含み,全体として負担軽減につながる。米議会でグアム移転予算の確保が難しくなる可能性も出てきている。そうした中で,心苦しいが,日米合意を着実に実施するのが政府の方針。
(ウ)同時に,事件・事故,環境,騒音といった事項に係る負担軽減にも積極的に取り組み,一つ一つ結果を出したい。例えば,公の催事で飲酒した上での運転を公務として扱う余地がある古い日米合意は改善すべく努力して結果を出したい。こうした負担軽減については,今回モロイ四軍調整官代理にも要請したし,月末に訪日予定のパネッタ国防長官にも要請したい。
イ.沖縄を訪問する中国人観光客への数次ビザの発給については,既に結果が出ていると承知。太平洋・島サミットについては,県の協力を得てロゴを作成し,また,福島県いわき市のフラガールを同サミット親善大使に委嘱することを決定した。
(1)稲嶺名護市長,2)沖縄県軍用地転用促進・基地問題協議会(軍転協」)両副会長(翁長那覇市長,儀武金武町長),3)嘉手納飛行場所在三市町連絡協議会(野国北谷町長,當山嘉手納町長,島袋沖縄市副市長))
(1)大臣からは,上記1(2)と概ね同様の発言を行った。
(2)ア.稲嶺市長からは,市長選挙で掲げた陸にも海にも米軍基地は作らせないとの公約を最後まで貫く旨,国が行ったという県外移転の努力は真剣なものには見えない,再編交付金についての国の対応は地元に理解して欲しいという説明と異なるのではないかと指摘。(大臣からは,今回は市長のお話を受け止めさせて頂き,本日を話合いのスタートにしたいと述べた。)
イ.軍転協両副会長からは,米軍基地問題について,何か具体的問題が生じて初めて場当たり的に対応するのではなく,抜本的な解決を考えてもらいたい,また,米軍が公共財というのならば,国は沖縄県以外の都道府県に先に負担の分担を働きかけてもらいたいといった指摘があった。
ウ.嘉手納飛行場所在三市町連絡協議会からは,三名一致して,普天間移設問題に係る嘉手納統合案には断固として反対である旨発言があり,大臣から国の立場は現在の日米合意(辺野古移設)であると述べたのに対し,ならばレビン上院議員等に対しても嘉手納統合案は無理であると言って欲しいとの要請があった。また,嘉手納飛行場の騒音(特に夜間のエンジン・テスト音),1月に沖縄市で発生した交通死亡事故に係る問題,災害対策等についても指摘があった。
(1)ア.大臣から,東日本大震災における米軍による「トモダチ作戦」に謝意を表明した。 イ.大臣から,1)災害時の基地への立入りに関する現地協定についての地方公共団体への協力,2)事件・事故防止措置の徹底,及び3)航空機騒音問題に関する平成8年の日米合同委員会合意の遵守(特に夜間飛行の抑制)につき申入れを行った。
(2)モロイ准将から,1)防災については地方公共団体の要請を検討中である旨,2)事件・事故はゼロにすることを目標に,新しく海兵隊が導入した再発防止策を含め引き続き真剣に取り組んでいく旨,3)騒音については,同盟コミットメントとのバランスが重要であるが,日曜日や22~6時の飛行を運用上必要なものだけに制限することを含め日米合意を遵守し,また,グアム等への訓練移転(その間別の航空機が嘉手納に来て騒音削減効果が相殺されないようにすること)を進めることにより,騒音低減に努める旨述べた。
(外務大臣は,上記の他,国立沖縄戦没者墓苑,平和の礎,ひめゆりの塔を訪問し,嘉手納飛行場,キャンプ・シュワブ辺野古地区,普天間飛行場を視察するとともに,外務省沖縄担当大使交代レセプションを主催した。)