地球環境
「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を採択する国連サミット
(注)持続可能な開発のための2030アジェンダ(2030アジェンダ)
2001年に策定されたミレニアム開発目標(Millennium Development Goals: MDGs)の後継として国連で定められた、2016年から2030年までの国際目標。MDGsの残された課題(例:保健、教育)や新たに顕在化した課題(例:環境、格差拡大)に対応すべく、新たに17ゴール・169ターゲットからなる持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)を策定。7回に及ぶ政府間交渉を経て、本年8月に実質合意された。
1 概要
(1) 今次サミットには、オバマ米大統領を始め、国連加盟国の首脳及び閣僚等が参加したほか、2030アジェンダに関連する多様なテーマについて連日多数のサイドイベントが開催され、国際機関、民間企業、研究機関、市民社会等からも多くの参加者があった。
(2)25日は、冒頭にローマ法王がステートメントを行った後、潘基文事務総長等がステートメントを行い、2030アジェンダがコンセンサスで正式に採択された。その後、27日まで、各国の首脳、国際機関の長等が順次ステートメントを行った。各国からは、アジェンダの採択を歓迎するとともに、先進国を含む全ての国がアジェンダを実施していくことの重要性や、そのための具体的施策につき発言があった。また、本年12月のCOP21を前に、多くの国が気候変動対策の重要性や具体的な取組にも言及した。
(3)我が国からは、安倍総理が27日午後にステートメントを実施し、日本が重視してきた要素を中核に据えた2030アジェンダの採択を歓迎するとともに、アジェンダの実施には、あらゆるステークホルダーが役割を果たすグローバル・パートナーシップが不可欠であるとして、日本自身がその一員としてアジェンダ実施に最大限努力していく旨を述べた。その上で、具体的な貢献策として、(1)包摂的、持続可能かつ強靱な「質の高い成長」の追求、(2)脆弱な人々の保護と能力強化(保健、教育支援分野の新政策を含む)、(3)持続可能な環境・社会づくりの実現に向けた努力について述べたほか、(4)GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)による国連責任投資原則の署名についても言及した
2 評価
(1)今回採択された2030アジェンダの最大の特徴は、持続可能な環境や社会を実現するために先進国を含む全ての国が取り組むという「ユニバーサリティ」にある。また、この15年間で、一部の途上国の発展、民間企業や市民社会の役割の拡大など、開発をめぐる国際的な環境が大きく変化していることも踏まえ、あらゆるステークホルダーが役割を果たす「グローバル・パートナーシップ」の重要性が盛り込まれている。長年の交渉の結果、こうした野心的なアジェンダが採択されたことは、国際社会が2030年までに貧困を撲滅し、持続可能な開発を実現するという共通課題に取り組んでいくための重要な指針を提供するものであり、我が国としてこれを歓迎する。
(2)多くの国や国際機関が様々な課題を取り上げ、アジェンダに取り入れようとした結果、今回のアジェンダではMDGsと比べてゴール・ターゲットが増えることとなったが、これは、様々な開発課題が互いに連動しており、特定の課題に絞るよりも、俯瞰的な視点の下でこれらを統合的に扱うことがより望ましいとの考えが反映された結果でもあり、こうした姿勢は、むしろ開発をめぐる現在の状況に合致するものと評価される。
(3)我が国は、国際社会の議論が本格化する前から、MDGsフォローアップ会合の開催や非公式な政策対話(コンタクト・グループ)の主催、国連総会サイドイベントの開催、また、本年3月の第3回国連防災世界会議の開催等を通じて、真に効果的な新しいアジェンダの策定を主導し、1月からの政府間交渉にも積極的にも参加してきた。その結果、今回採択されたアジェンダには、人間中心(people-centered)、誰一人取り残されない(no one will be left behind)など、我が国が重視する人間の安全保障の理念を反映した考え方や、グローバル・パートナーシップ、女性・保健・教育・防災・質の高い成長等、我が国が重視してきた要素や取組が盛り込まれた。今回のサミットやサイドイベントの機会を通じ、こうした我が国の貢献、また、今後のアジェンダの実施に向けた考えや貢献策について、安倍総理から国際社会に発信することができた。