国際保健
国連HIV/AIDSハイレベル会合における濵地政務官演説(和文仮訳)
平成28年6月9日
議長閣下,各国代表並びに御列席の皆様,
1981年にAIDSが初めて報告されてから35年が経過しました。我々の知見と知識が非常に乏しかった当時,この新しい感染症は,「不治の病」として恐れられ,病そのものとの闘いに加え,差別やスティグマという苦しみを患者や家族に与えてきました。
しかし,現在,我々はAIDS流行を最終的に終息させる機会を有しています。実際,抗レトロウイルス薬(ARV)へのアクセスも,グローバルファンド等を通じ劇的に拡大し,エイズ関連死亡者数と新規感染者数が共に大きく減少する等目覚ましい成果を上げています。
議長,
日本は長年,「人間の安全保障」の考え方を提唱してきました。「人間の安全保障」は,人々の可能性を開花させることを通じ,人間の自由と自己実現を確保し,あらゆる個人の生存の核心を守るものです。日本はこの指導理念に立ち,国際保健の課題の解決に向けた国際的取組に貢献していく考えです。
「人間の安全保障」実現のために最も効果的な手段の一つは,ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)です。昨年,UHCを含む「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されました。UHCの達成のためには,社会の変革が必要であり,世界の指導者は,保健の恩恵から誰一人取り残さない,という原則にコミットしなければなりません。
これまでのハイレベル会合で,包括的な予防対策,治療及びケア並びにサポートについてのユニバーサル・アクセスを達成するための努力の強化が謳われたことは,エイズ対策をUHCの達成を通じて最もよく実現されることを示していると考えます。
議長,
エイズを終息させるためには,本日ここに集結した各国・機関代表の指導力が不可欠です。すべての人が,コンドーム使用を含むHIV予防,教育,診断,治療,ケアおよびサポートにアクセスでき,結核との重複感染や母子感染が防止され,そして差別や偏見のない世界を実現するため,我々は,UHCの推進を目指すべきです。 また,女性,女児,さらにHIVに最も深刻な影響を受けるMSM(男性間性交渉),セックスワーカー,ドラッグユーザーなど「対策の鍵となるコミュニティー」の脆弱性に対処することが重要です。我々は,脆弱な立場に置かれた人々やHIV陽性者を守り支援する社会を実現しなければなりません。我々は,ともに生きています。
このためには,途上国も含め,保健システムは,多大な資金と人材の動員が不可欠です。途上国において,保健分野の優先順位を上げ,保健分野への国内資金の動員を増やす動きがあることを歓迎します。また,保健システムを強化する途上国を支援するため国際的な枠組みを築くことが重要です。
議長,
日本は,長年,保健分野で主要な役割を果たしてきました。2000年のG8九州・沖縄サミットでは,サミットで初めて感染症対策を議題として取り上げ,グローバルファンド設立の契機となりました。また,2008年のG8北海道洞爺湖サミットでは,保健システム強化のための行動に合意しました。
そして先月,日本はG7伊勢志摩サミットを開催しました。議長国としての日本のリーダーシップの下,G7は,経済的な繁栄及び安全保障の基盤となることを強調している「国際保健のためのG7伊勢志摩ビジョン」に詳述されている,国際保健を前進させるための具体的な行動をとることにコミットしました。G7は特に,ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を推進し,公衆衛生上の緊急事態への対応を強化するための国際保健枠組みの強化への対応にコミットしました。そして,G7サミットに先立ち,安倍総理は,グローバルファンドに対して当面8億ドルの拠出を行うことを発表しました。
日本は,これまで,二国間や国際機関を通じて積極的に途上国の保健システム強化を支援してきました。日本として国際社会へのコミットメントを果たし,国際保健分野に一層の貢献を行っていくことを改めて表明します。
御静聴ありがとうございました。