気候変動

(京都議定書第20回締約国会合、パリ協定第7回締約国会合、科学上及び技術上の助言に関する補助機関第63回会合、実施に関する補助機関第63回会合)

令和7年11月25日

1 会合の概要

 2025年11月10日~11月22日(1日延長)、ブラジル・ベレンにおいて、国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)、京都議定書第20回締約国会合(CMP20)、パリ協定第7回締約国会合(CMA7)、科学上及び技術上の助言に関する補助機関第63回会合(SBSTA63)及び実施に関する補助機関第63回会合(SB63)が開催された。我が国から、石原宏高環境大臣を始め、外務省、環境省、経済産業省、金融庁、財務省、文部科学省、農林水産省、林野庁、国土交通省、気象庁、厚生労働省及び関係機関が参加した。
 COP30では、議長国ブラジルがポルトガル語の「ムチラオ(共同作業、協働、共に働く)」をテーマに掲げ、パリ協定の実施の加速と国際協力の進展について議論された。
 COP30の成果として、緩和や資金等の分野を横断し、特に関心の高い事項を取り上げた「グローバル・ムチラオ決定」が採択された。これとは別に、各交渉議題の下では、世界全体での適応に関する目標に関する決定などが採択された。「グローバル・ムチラオ決定」と各主要議題の決定をまとめて「ベレン・ポリティカル・パッケージ」と呼ばれている。
 また、議題に関する交渉に加えて、COP、CMA決定等に基づく複数のイベントが開催された。さらに、会期中には、複数の関係国及び関係団体と気候変動に関する意見交換を行った。

2 各分野の交渉結果について

(1)「グローバル・ムチラオ決定」

 グローバル・ムチラオ決定は、ア パリ協定10周年、イ 交渉から実施への移行、ウ 実施・連帯・国際協力の加速の三点を柱とした上で、緩和や資金といった分野を横断した幅広い内容が盛り込まれている。

(緩和(国が決定する貢献(温室効果ガスの削減目標)(NDC)、隔年透明性報告書(BTR)))
 同決定の緩和の要素については、科学の重要性を認識し、1.5度目標の達成に向けた力強いメッセージを世界へ発信することができた。1.5℃目標の達成に向けたパリ協定の野心向上サイクルについて、NDCや長期戦略の未提出国への早期提出を求める文言が盛り込まれたこと、これまで119か国から提出されたBTRを通じて実施の進展とギャップを認識する文言が盛り込まれている。
 また、議長国等を中心に立上げることが決まった「Global Implementation Accelerator」や「Belém Mission to 1.5」についても、NDCの実施強化や緩和における国際協力の強化に資するものと認識している。

(気候資金)
 昨年のCOP29で合意した気候資金に関する新規合同数値目標(NCQG)の実施について議論するハイレベル閣僚級ラウンドテーブルの開催を決定。また、NCQGの文脈で、適応資金を3倍にしていく努力を呼びかけることが盛り込まれた。さらに、パリ協定9条全体の文脈での9条1に関するものを含む、気候資金についての2年間の作業計画の立上げが決定。

(気候変動に関する一方的な貿易制限的措置)
 貿易の役割に関する国際協力強化の機会、課題、障壁を検討するため、2026年~28年の6月にITC、UNCTAD、WTOも含めた対話を開催し、2028年にはハイレベルイベントを開催することを決定。

(2)緩和

 「緩和作業計画(MWP)」において、2026年以降の緩和議題の継続、2025年に開催された森林と廃棄物に関するグローバル対話の成果、MWPの改善を中心に交渉が行われた。2022年の決定に盛り込まれた、MWPの継続に関する決定を2026年に採択することについて、MWPの継続性・機能性・効果に関連する機会、ベストプラクティス、実行可能な解決策、課題及び障壁に関する意見の書面意見(サブミッション)の提出が招請され、更にグローバル対話の成果として、報告書にまとめられた知見等が留意された。

(3)適応

 適応に関する世界全体の目標(GGA)議題について、適応分野の進捗を測定するための指標リストが採択されたものの、完全な合意には至らず、今次会合の結果をベースに翌年も継続検討することが決定された。さらに、今後の指標運用に向けた技術的課題を検討する2か年の「適応に関するベレン–アディスビジョン」の設置が決定。また、UAEフレームワークの実施を支援するため、COP29で立上げが決定されていたバクー適応ロードマップ(BAR)のモダリティも検討され、今後、各国の状況に応じた適応計画・実施の促進や適応能力の向上を図るためのワークショップ等の開催などが決定した。

(4)グローバル・ストックテイク(GST)

 UAE対話について、GSTの成果の実施について経験や知見を共有する場として、2026年と2027年に開催した後終了し、第2回GSTで参照されることが決定された。
 また第2回GSTにおいて、IPCCが重要な知見であることを確認するとともに、利用可能な最良の科学(Best Available Science)の情報提供を推奨することが決定された。
 次期NDCの検討への情報提供に関する知見や優良事例を共有する年次GST対話については、2026年に終了し、第2回GSTの成果の検討に合わせて、対話の再開を検討することを決定した。

(5)公正な移行作業計画(JTWP)

 温室効果ガス排出量削減を含む、気温上昇を1.5℃に抑える取組と公正な移行の経路の追求との関連性を強調された。また、パリ協定に関連する手段、イニシアティブ、プロセス、並びに国連システム内の関連機関を整理して統合報告書を作成すること及び、国際協力に関する技術支援、能力構築及び知識共有を強化するため「公正な移行メカニズム」について検討を進めることなどを決定した。

(6)気候資金

 昨年のCOP29において決定された気候資金に関する新規合同数値目標(NCQG)の実現に向けた議論が行われ、パリ協定9条5に基づく資金の事前通報については、事前通報の内容にNCQGに関する事項を含めることを決定。また、資金の流れを気候変動の取組に整合させることを目的としたパリ協定2条1(c)に関する議論を加速させるため、実務者級の対話、ハイレベルラウンドテーブルを行うことを決定。

(7)技術メカニズム

 途上国への技術支援強化のための「ベレン・技術実施プログラム(TIP)」を開始し、2027年から毎年グローバル対話を開催し、2028年はハイレベル閣僚対話を開催することを決定した。またCTC(気候技術センター)の役割・機能を見直し、2026年にホストを選定して、2027年から2041年まで期間延長することを決定した。

(8)パリ協定6条及びクリーン開発メカニズム(CDM)

 パリ協定第6条2ガイダンスの実施に関して、各国による6条報告の提出やそれら報告書の技術審査手続の進展が確認された他、6条技術専門家審査の経験を共有するための非公式対話を開催することが決定された。
 第6条4(国連管理型)メカニズムについては、自律的に運営されるまでクリーン開発メカニズム(CDM)の資金を活用すること、また、CDMプロジェクトの第6条4に移管するホスト国承認期限を2026年6月まで延長することが決定された。
 クリーン開発メカニズム(CDM)については、CDMの機能を順次停止するスケジュール及び信託金の残金の使途(適応基金及び6条4項メカニズム)、国際取引ログ(ITL)を2026年3月31日に閉鎖すること等が決定された。

(9)その他

 ロス&ダメージについては、特にワルシャワ国際メカニズムレビューが実施され、ロス&ダメージの報告書作成について合意した。また、農業、適応委員会のレビュー、国別適応計画、研究と組織的観測、透明性枠組の専門家協議グループの改訂、対応措置、キャパシティ・ビルディング、技術移転、ジェンダーと気候変動、事務局事項等に関する議論が行われた。ジェンダーと気候変動においては、気候変動対策におけるジェンダーの主流化を推進すべく新たなジェンダーアクションプラン(GAP)が採択された。また、2026年11月9日から11月20日に次回COP31をトルコで開催し、トルコを議長、オーストラリアを交渉議長とすることが決定。さらに、2027年11月8日から11月19日にエチオピアにてCOP32を開催することが決定。

3 石原宏高環境大臣のCOP30への参加

(1)閣僚級ステートメント

 石原環境大臣は、日本は1.5度目標に整合的な新たなNDCを提出し、2050年にネット・ゼロを目指す我が国の揺るぎない決意を改めて表明。多国間主義に基づき世界全体で脱炭素の取組を進めることの重要性を強調。全ての国が、野心高いNDCを早期に提出し、実施にも取り組み、パリ協定の野心向上サイクルを回す重要性を主張。JCM等を通じ着実に歩みを進めていること、日本の民間企業とともにWBCSDによる企業の循環性情報開示のフレームワークである「グローバル循環プロトコル」の開発に積極的に貢献していることを発信。

(2)二国間協議等

 石原環境大臣は、EU、英国、インドなど計7か国・地域の閣僚級及び代表と会談した。各会合では、交渉議題の合意に向けた議論を行ったほか、気候変動対策等について意見交換を行った。グテーレス国連事務総長とも会議を実施。

4 ジャパン・パビリオンでの発信

 我が国は、COP30会場においてジャパン・パビリオンを設置し、会合期間を通じて、我が国企業等の再エネ・省エネ・衛星データ利活用・廃棄物の再利用等の技術の展示を実施した。
 また、ジャパン・パビリオンで石原環境大臣による我が国発のイニシアティブ「日本の気候変動対策イニシアティブ2025」の発表を行ったほか、JCMパートナー国会合、グローバル循環プロトコルの公開、GST-2に向けたASEANとの協力、温室効果ガス観測衛星(GOSAT)、産業脱炭素化、AZEC、LNGバリューチェーンからのメタン排出量削減に関する国際協力、削減貢献量、トランジション・ファイナンス、農林水産分野GHG排出削減技術海外展開パッケージ(MIDORI∞INFINITY)、ブラジル劣化牧野回復モデル実証調査、GREEN×EXPO 2027等の32のセミナーを開催するとともに、それ以外の場でも多くのイベントに参加し日本政府の取組を発信した。ジャパン・パビリオンは日々盛況であり、20か国以上の閣僚等のハイレベルが展示視察に来場するなど、全世界に向けて、我が国の脱炭素技術等を力強く発信した。

5 「ベレン持続可能燃料4倍宣言」の共同提案

 我が国は、2035年までに道路交通を含めた様々な分野で持続可能燃料の需要を4倍以上に拡大するとした「ベレン持続可能燃料4倍宣言(Belém 4x Pledge on Sustainable Fuels)」をブラジル・イタリアとともに共同提案した。首脳級会合で正式発表したのち、23か国・地域の支持を得て、閣僚級イベントも実施した。

6 国際イニシアティブへの参加等

 日本政府はCOP30期間中等に発表された、以下の気候変動に関する国際イニシアティブに賛同・参加した。

  • 11月6日:議長国ブラジルが主導する「トロピカル・フォレスト・フォーエバー・ファシリティ(TFFF: Tropical Forest Forever Facility)」の立上げに賛同。
  • 11月6日:議長国ブラジルが主導する「統合的火災管理及び山火事レジリエンスに関する行動要請(call to Action on Integrated Fire Management and Wildfire Resilience)」に参加。
  • 11月10日:森林・気候のリーダーズ・パートナーシップ(FCLP: Forest & Climate Leaders’ Partnership)を通じて作成された「責任ある木造建築の原則(Principles for Responsible Timber Construction)」に参加。
  • 11月11日:建築と気候に関する政府間会議(ICBC: Intergovernmental Council for Buildings and Climate)を通じて作成された「持続可能でアフォーダブルな住宅に向けたベレン行動要請(Belém Call for Action for Sustainable and Affordable Housing)」に賛同。
  • 11月13日:議長国ブラジル及び世界保健機関(WHO)が主導する「健康の日(Health Day)」に開催された保健大臣級会合に参加し、気候変動による影響に対する適応を推進するための「ベレン保健行動計画」を支持し、承認。
  • 11月19日:議長国ブラジルが主導する「土地劣化ゼロに向けた強靭な農業への投資(RAIZ: Resilient Agriculture Investment for net Zero land degradation)」の立上げに賛同。
  • 11月19日:議長国ブラジル及び英国が主導する「肥料に関するベレン宣言(Belém Declaration on Fertilisers)」の立上げに賛同。

7 その他UNFCCCマンデートイベントや公式サイドイベント等における発信

11月10日
地球情報デー2025
11月10日・12日
6条2項野心対話
11月11日
都市化と気候変動に関する閣僚会合
11月11日
「建築と気候に関する政府間会議(ICBC)」閣僚会合
11月11日
「水と気候に係る行動に関するバクー対話」ハイレベル会合
11月12日
6条8項関係ワークショップ(日本の適応技術の海外展開の取り組み事例を紹介)
11月13日
「健康の日(Health Day)」保健大臣級会合
11月14日
国連環境計画 国際メタンガス排出観測所(UNEP IMEO)閣僚会合

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