気候変動
国連気候変動枠組条約第62回補助機関会合(SB62) 結果概要
(科学上及び技術上の助言に関する補助機関第62回会合(SBSTA62)、実施に関する補助機関第62回会合(SBI62))


1 会合の概要
2025年6月16日~6月26日(現地時間)、ドイツ・ボンにおいて、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)第62回補助機関会合(SB62)(注)が行われ、2025年11月に開催予定の国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)及びパリ協定第7回締約国会合(CMA7)等に向けて締約国が議論し、結論が採択された。我が国代表団も、結論の採択に向けて積極的に議論に貢献した。
我が国から、外務省、環境省、経済産業省、文部科学省、農林水産省、林野庁、国土交通省、気象庁及び関係機関が参加した。
また、議題に関する交渉に加えてCOP、CMA決定等に基づく複数のイベントが開催された。
さらに、会期中には、複数の関係国及び関係団体と気候変動に関する意見交換を行い、加えて、二国間クレジット制度(JCM)について、JCMグローバルパートナーシップ第5回会合を実施するとともに、実施ルールの整備やパートナー国拡大等に向け二国間協議を行った。
(注)科学上及び技術上の助言に関する補助機関第62回会合(SBSTA62)及び実施に関する補助機関第62回会合(SBI62)の合同会合。
2 各議題の交渉結果について
(1)緩和
緩和野心実施作業計画(MWP)議題において、第5回グローバル対話(森林セクター)、第6回グローバル対話(廃棄物セクター)やデジタル・プラットフォーム等に関する議論が行われた。交渉の結果、COP30での決定案の項目に関する非公式文書が作成され、それに留意し、SB63に送る旨の結論文書が採択された。我が国からは、日本の緩和の取組、今後の緩和の取組の重要性等を主張した。
(2)適応及びロス&ダメージ
適応については、UAE–ベレン作業計画の下で行われている、UAEフレームワークに関する指標の作業の進め方等について議論が行われ、CMA7での指標採択に向け、指標の構造や専門家への追加的なガイダンスなどが盛り込まれた結論文書が採択された。
ロス&ダメージについては、2024年ワルシャワ国際メカニズム(WIM)及びサンティアゴ・ネットワーク(SN)に関する統合年次報告書の決定案を採択した。WIMの2024年レビューについては締約国間の意見の隔たりが埋まらず、SB63で検討を継続することとなった。
(3)グローバル・ストックテイク(GST)
CMA5で設置が決定されたGSTの実施に関するUAE対話については、その対象範囲、形式、成果などが記載された非公式文書が作成され、次回会合において検討を継続するという結論文書が採択された。我が国からは、対話を通じて第2回GSTに向けた前向きな成果を目指すべきこと等を主張した。
GSTのプロセス改善に関しては、各国の主張が記載された非公式文書が作成され、次回会合において検討を継続するという結論文書が採択された。我が国からは、第2回GSTに向けてIPCC第7次評価報告書(AR7)が情報提供できるように、検討プロセスを柔軟に進めること等を主張した。
(4)公正な移行
UAE公正な移行に関する作業計画(JTWP)について議論が行われ、各国の意見を踏まえ、CMA7において検討を継続するという内容の結論文書が採択された。
(5)その他
農業、適応委員会のレビュー、国別適応計画、研究と組織的観測、透明性枠組、対応措置、キャパシティ・ビルディング、技術開発・移転、クリーン開発メカニズム(CDM)、ジェンダーと気候変動、事務局事項等に関する議論が行われた。
3 SB会期中の主な関連イベントについて
(1)第17回研究対話
基調講演としてIPCC等から最新情報の紹介があり、分科会として「気候変動の理解における最新の科学的進歩」及び「持続可能な開発と気候変動対策の関連性」の2つのテーマで議論が行われた。我が国から「日本の気候変動2020/2025」(5年毎作成の日本域での気候変動に係る自然科学的評価、観測報告書)とデータセット、気候変動予測研究に基づくインフラとハザード適応の紹介、ポスター発表2件(温室効果ガス及び短寿命気候強制因子の収支評価モデル、「日本の気候変動2025」の概要と活用)を行った。
(2)年次GST-NDC対話
CMA5の決定に基づき、GSTの成果が、次期の「国が決定する貢献(NDC)」の検討にどのように情報提供されるかについて、知識と優良事例の共有を促進することを目的に議論が行われた。我が国からは、本年2月に提出をした日本の野心的なNDCと、地球温暖化対策計画、GX政策などについて紹介した。
(3)海洋と気候変動対話2025
NDCにおける海洋ベースの措置、GGA下での海洋、海洋・気候・生物多様性の相乗効果について議論が行われ、我が国からはブルーカーボンのNDCへの反映等の取組を紹介した。
(4)協力的アプローチ(パリ協定第6条2)に関する対話
バクー合意に沿って、国連主催の対話(6.2 Ambition Dialogue)が開催され、JCMの実績や課題について発信した。
(5)非市場アプローチ(パリ協定第6条8)に関するワークショップ
昨年運用が開始された非市場アプローチの取組登録や情報共有のためのプラットフォームについて、その利用に関する障壁や解決策等について議論が行われた。我が国から、SUBARU(SUstainable Business of Adaptation for Resilient Urban Future)イニシアティブをプラットフォームに登録したことを報告し、さらなる利用促進に向けた方策について意見交換した。
(6)「1.3兆ドルに向けたバクー・ベレン・ロードマップ」に係る議長国コンサルテーション
COP29での「気候資金に関する新規合同数値目標(NCQG)」に関する決定において、全てのアクターに対し、全ての公的及び民間の資金源からの途上国向けの気候行動に対する資金を2035年までに年間1.3兆ドル以上に拡大するため、共に行動することを求める旨が決定され、あわせて、この1.3兆ドルに向けたロードマップを立ち上げることも決定されているところ、締約国各国とCOP29・COP30議長国によるコンサルテーションが実施された。各締約国は、ロードマップへの期待や、盛り込むべき内容について、発言を行った。
(7)農業と食料安全保障に関する気候変動対策ワークショップ
農業と食料安全保障に関する気候変動対策の実施に向けたアプローチについて議論が行われた。我が国からはCOP30を見据えた農林水産分野GHG排出削減技術海外展開パッケージ(通称:MIDORI∞INFINITY、ミドリ・インフィニティ)の取組を紹介した。
(8)気候プロセスでの地方政府の関与ラウンドテーブル
地方政府と国の協働を促し、地方政府の声を集め、地球規模での気候交渉に意味のある関与を行うことを目的として、気候ハイレベルチャンピオン、UNFCCC事務局等が主催。欧米等の自治体が参加。日本からは、国とともに、地方公共団体から、北九州市長が参加し、市の脱炭素に向けた取り組みを紹介した。