気候変動
国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(結果)
(京都議定書第19回締約国会合、パリ協定第6回締約国会合、科学上及び技術上の助言に関する補助機関第61回会合、実施に関する補助機関第61回会合)
1 会合の概要
2024年11月11日~11月24日(2日延長)、アゼルバイジャン・バクーにおいて、国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)、京都議定書第19回締約国会合(CMP19)、パリ協定第6回締約国会合(CMA6)、科学上及び技術上の助言に関する補助機関第61回会合(SBSTA61)及び実施に関する補助機関第61回会合(SBI61)が行われ、決定文書等が採択された。我が国から、外務省、環境省、経済産業省、財務省、金融庁、総務省、文部科学省、農林水産省、林野庁、国土交通省、気象庁及び関係機関が参加した。
交渉では、Baku Climate Unity Pactという気候資金に関する新規合同数値目標(NCQG)、緩和作業計画(MWP)、適応に関する世界全体の目標(GGA)の運用に関する決定が採択された。これらに加え、パリ協定第6条に関する決定も採択された。
- 気候資金に関する新規合同数値目標(NCQG):「2035年までに少なくとも年間3,000億ドル」の途上国支援目標を決定(国際開発金融機関による支援、途上国による支援を含む)。また、全てのアクターに対し、全ての公的及び民間の資金源からの途上国向けの気候行動に対する資金を2035年までに年間1.3兆ドル以上に拡大するため、共に行動することを求める旨決定された。
- 緩和:「緩和作業計画」において、2024年に「都市:建築と都市システム」をテーマに開催された、2回のグローバル対話の議論を踏まえた交渉が行われた。本対話の年次報告書において示された実施可能な解決策等に留意し、各国による自主的な取組の実施を促すとともに、本対話の次回以降の手続等が決定された。
- パリ協定第6条:パリ協定6条に基づき締約国が協力して対策を実施し、削減量を分配するに当たって必要な締約国政府による承認や報告の項目や様式、削減量の記録に用いる登録簿間の接続性等の細目が決定した。
また、議題に関する交渉に加えて、COP、CMA決定等に基づく複数のイベントが開催された。
さらに、会期中には、複数の関係国及び関係団体と気候変動に関する意見交換を行い、また、二国間クレジット制度(JCM)について、実施ルール整備やパートナー国拡大等に向け協議を行った。
2 各議題の交渉結果について
(1)気候資金に関する新規合同数値目標(NCQG)
今回決定された新規合同数値目標(NCQG)では、先進国が率先する形で、2035年までに少なくとも年間3,000億ドルという途上国向けの気候行動のための資金目標を決定(国際開発金融機関による支援、途上国による支援を含む。)。また、全てのアクターに対し、全ての公的及び民間の資金源からの途上国向けの気候行動に対する資金を2035年までに年間1.3兆ドル以上に拡大するため、共に行動することを求める旨が決定された。
我が国は、NCQGが現在の世界経済の現実を踏まえた達成可能な目標であるべきとの考えの下、浅尾環境大臣をはじめとして、様々なレベルで、各国との交渉に積極的に関与してきた。その結果、我が国を含め、全ての締約国が合意する形でNCQGが決定されたことを歓迎する。
(2)緩和
「緩和作業計画」において、2024年に「都市:建築と都市システム」をテーマに開催された、2回のグローバル対話の議論を踏まえた交渉が行われた。本対話の年次報告書において示された、建物及び都市の脱炭素化に資する解決策(地方公共団体との連携強化等)の実施が、各国の異なる事情に照らした自主的な取組により可能となることに留意するとともに、本対話の次回以降の手続等が決定された。
(3)パリ協定第6条市場メカニズム
パリ協定6条に基づき国際的に協力して削減・除去対策を実施するパリ協定6条の完全運用化が実現。削減・除去の量をクレジット化して分配するに当たって必要な締約国政府による承認や報告の項目や様式、クレジットの記録や報告に用いる登録簿間の接続性等の細目を決定した。我が国も、承認や報告の項目や登録簿間の接続性等について具体的な提案を行い、合意に貢献した。 また、非市場アプローチのウェブ・プラットフォームの運用や今後の作業活動計画等について技術的な議論が行われ、今後の実施事項が決定された。
(4)適応、ロス&ダメージ
適応については、適応に関する世界目標(GGA)の進捗を測定するための指標に関する作業について、CMA7における本作業の完了に向けた議論が行なわれ、本作業に関与する専門家に対する追加的な指針等が決定された。さらに、ハイレベル対話開催を含む、バクー適応ロードマップの立ち上げも決定した。
ロス&ダメージについては、ロス&ダメージに対応するためのワルシャワ国際メカニズムの年次報告書並びにレビューの議論が行われたが、コンセンサスに至らずSB62において検討を継続することとなった。
(5)グローバル・ストックテイク(GST)
GSTの実施に関するUAE対話については、対話の議論の対象範囲等について、締約国間で見解の一致が見られず、来年のCMAに向けて、補助機関会合で引き続き議論が継続されることとなった。GSTのプロセス改善に関しては、GSTの対象分野やスケジュール等に関して各国が主張したオプションを残した非公式文書が作成され、次回会合において検討を継続することとなった。本年6月のSB60で開催された、次期NDC(国が決定する貢献)の検討への情報提供に関する知見や優良事例を共有する年次GST対話については、対話の報告書の採択にあたって、次期NDCの検討に向けたメッセージ等の詳細に関して、次回会合で議論を継続することとなった。
(6)ジェンダーと気候変動
強化されたジェンダーに関するリマ作業計画(eLWPG)について、10年間の延長が決定された。また、ジェンダーと気候変動に関する取組について、一定の進捗があったことが認められた一方で、更に実施を強化することの必要性が認識された。
(7)その他
農業、研究と組織的観測、透明性枠組みの報告ツール、公正な移行作業計画、対応措置、キャパシティ・ビルディング、技術移転、気候エンパワーメントのための行動、事務局事項等の幅広い交渉議題についてマンデートイベントの開催や議論が行われ、決定等が採択された。
3 浅尾慶一郎環境大臣のCOP29への参加
(1)閣僚級ステートメント (注)含む日本イニシアティブ
浅尾環境大臣は、閣僚級セッション(11月20日)において、ナショナルステートメントを行い、ア 気候資金について、2025年までの5年間で官民合わせて最大700億ドル規模の支援というコミットメントを着実に実施すること、イ 適応、ロス&ダメージについて、早期警戒システム導入促進イニシアティブの下、官民が連携し、アジア太平洋地域での気候変動により悪化する災害対策を実施すること、ウ 緩和について、全ての締約国が、1.5度目標に整合的な、全温室効果ガス、セクター、カテゴリーを対象とする経済全体の排出削減目標設定を求めた。また、我が国は、現行の国が決定する貢献(NDC)の達成及び2050年ネット・ゼロに向けて、温室効果ガスの着実な削減に取り組んでいることを発信した。
さらに、ア サーキュラーエコノミーやネイチャーポジティブとのシナジーアプローチ、イ JCMなどの国際協力での緩和の拡大、ウ 「バクー世界気候透明性プラットフォーム(BTP)」と連携した世界の透明性向上を3つの柱とする「NDC実施と透明性向上に向けた共同行動」を発表した。
(2)二国間協議
浅尾環境大臣は、マレーシア、中国、バングラデシュ、英国、アゼルバイジャン、シンガポール、ウクライナ、EU、ニュージーランド、ドイツ、オーストラリア、南アフリカ、ブラジル、米国等、約20か国・地域の閣僚級及び代表、グテーレス国連事務総長と会談、立ち話を行った。各会談では、気候資金、緩和の深掘り等の交渉議題の採択に向けた議論を行ったほか、それぞれの二国間の環境協力等について意見交換を行った。
(3)閣僚級コンサルテーション会合
浅尾環境大臣は、議長国主催の閣僚級協議「クルルタイ」、交渉グループや議長国との複数の閣僚級コンサルテーションに参加し、気候資金、緩和、パリ協定第6条などに関する我が国の考え方を積極的に説明し、今般の決定に向けて大きく貢献した。
4 ジャパン・パビリオンでの発信
我が国は、COP29会場においてジャパン・パビリオンを設置し、会合期間を通じて、我が国企業等の再エネ・省エネ・適応・CO2有効利用・衛星データ利活用等の実地展示やパネル展示、技術のオンライン展示を実施した。
また、ジャパン・パビリオンで浅尾環境大臣による我が国発のイニシアティブ「NDC実施と透明性向上に向けた共同行動」の発表を行った他、温室効果ガス観測衛星(GOSAT)、JCMパートナー国会合、アジアでの気候情報開示、アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)、気候変動にレジリエントな債務条項(CRDC)、トランジション・ファイナンス、削減貢献量、産業脱炭素化等の40近くのセミナーを開催するとともに、それ以外の場での30以上のイベントに参加し日本政府の取組を発信した。ジャパン・パビリオンは日々盛況であり、100か国を超える国々が来場し、全世界に向けて、我が国の脱炭素技術等を力強く発信した。
5 国際イニシアティブへの参加
日本政府はCOP29期間中に気候変動に関する以下の国際イニシアティブに参加した。
- 11月12日:
- EUが主導する石油・天然ガスのサプライチェーン全体でメタン排出を最小限に抑えることを目的としたMethane Abatement Partnership Roadmap(メタン削減パートナーシップロードマップ)
- 11月15日:
- 議長国アゼルバイジャンが主導する「グローバルなエネルギー貯蔵及びグリッド」宣言、水素宣言、「グリーンエネルギーゾーン・コリドー」宣言
- 11月18日:
- バクー世界気候透明性プラットフォーム(BTP)
- 11月19日:
- 有機性廃棄物からのメタン削減に関するCOP29宣言
- 11月19日:
- 議長国アゼルバイジャンが主導する「農業者のためのバクー・ハーモニア気候イニシティチブ」
- 11月20日:
- 議長国アゼルバイジャンが主導する「レジリエントで健康な都市へのマルチセクター行動経路(MAP)に関するCOP29宣言」
- 11月20日:
- 議長国アゼルバイジャンが主導する「観光における気候変動対策強化に関するCOP29宣言」
- 11月21日:
- 議長国アゼルバイジャンが主導し、今後国連環境計画(UNEP)が事務局を務める「水と気候に係る行動に関するバクー対話」の設置等を位置づける「水と気候に係る行動に関するCOP29宣言」
6 その他UNFCCCマンデートイベントや公式サイドイベント等における発信
- 11月11日
- 地球情報デー2024
- 11月12日
- 6条8項非市場アプローチに関するワークショップ
- 11月13日
- 原子力3倍増に向けた取組の推進ハイレベルイベント
- 11月15日
- グローバルメタンプレッジ閣僚会合
- 11月15日
- カーボンマネジメント閣僚会合