気候変動

令和元年7月5日

1 会合の目的

 「『気候変動に対する更なる行動』に関する非公式会合」(略称:日伯非公式会合)は,我が国とブラジルが共同議長を務め,2002年から毎年東京にて開催しています。この会合は,各国の交渉実務担当者(首席交渉官級)が非公式な形で率直な議論を行うことを目的としたものです。また,同会合は,前年の国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)の成果を振り返り,その年のCOP 交渉の方向性を模索する機会であり,一年間の気候変動交渉の口火を切る会合として重視されています。

 

2 日程・場所・共同議長

(1)日程:3月14日(木曜日)・15日(金曜日)

(2)場所:東京(東京国際交流館 プラザ平成)

(3)共同議長:

 (日本側)鈴木 秀生 外務省地球規模課題審議官

 (ブラジル側)ファビオ・マルザノ 外務省国家主権・市民担当副次官

3 参加国・オブザーバー

(1)参加国(30か国・機関)

 アルゼンチン,豪州,ベリーズ,ブータン,ブラジル,カナダ,チリ(COP25議長国),中国,欧州委員会,フランス,ガボン,ドイツ,インド,イタリア,日本,モルディブ,ニュージーランド,ノルウェー,パレスチナ,ポーランド(COP24 議長国),韓国,ルーマニア,ロシア,サウジアラビア,セネガル,シンガポール,南アフリカ,スイス,英国,米国

(2)オブザーバー

 国連事務局,国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局,科学上及び技術上の助言に関する補助機関(SBSTA)議長,実施に関する補助機関(SBI)議長,Center for Climate and Energy Solutions(C2ES)

4 議論の概要

(1)セッション1「COP24の振り返り」

 多くの国がCOP24議長を務めたポーランドの尽力に敬意を表し,パリ協定の実施指針(the Paris Agreement implementation guidelines)採択を大きな成果として歓迎しました。また,COP24で合意に至らなかったパリ協定6条(市場メカニズム)に係る指針について,COP25に向けて議論を深めるべきと,多くの国から言及がありました。その他,プレ2020の実施と野心に関するストックテイクやタラノア対話における議論,IPCC1.5度特別報告書で示された科学的知見の重要性等も指摘されました。

(2)セッション2「COP25への期待」

 気候変動交渉については,COP25で目指すべき成果として,ほとんど全ての国からパリ協定6条が挙げられました。他にも,ワルシャワ国際メカニズム(WIM :Warsaw International Mechanism)のレビュー,透明性枠組みの報告フォーマットの作成,資金,キャパシティ・ビルディング等が重要な要素として指摘されました。同時に,パリ協定の実施に向けた野心と行動(action)の重要性を多くの国が指摘しました。

(3)セッション3「パリ協定6条(市場メカニズム)」

 COP25における採択に向け検討を継続することとなったパリ協定6条に関して,議論が行われました。多くの国が,COP24での議論の進展を歓迎するとともに,市場メカニズムは野心的な緩和・適応行動に不可欠であること,ビジネスセクターの参加が重要であること,環境十全性の確保・二重計上防止が重要であること等を指摘しました。また,COP24で合意された透明性枠組みの実施指針の関連部分についても,議論が行われました。

(4)セッション4「パリ協定の着実な実施のための支援方法」

 パリ協定の着実な実施に向け,気候資金が果たす役割の重要性につき確認するとともに,緑の気候基金(GCF)を含む気候変動に関する基金間の連携強化やこれら基金へのアクセス改善について議論されました。また,民間資金も含めた資金フローを,「資金フローを低排出型で気候変動に対して強靱な発展に向けた方針に適合させる」というパリ協定の長期目標に整合させることの重要性が改めて確認された上で,気候変動対策における民間資金が果たす役割及び民間資金の動員方法などについて活発な議論が交わされました。

(5)セッション5「交渉から実施・行動へ」

 COP24でパリ協定実施指針が採択され,2020年から同協定の実施が本格的に開始されることを受け,パリ協定の実施に向けた課題や解決策等について議論を行いました。各国のパリ協定の実施に向けた取組が共有されるとともに,多くの国が,国連気候アクション・サミット等を活用し,政治的なモメンタムを高めていく重要性に言及しました。他にも,パリ協定の実施に向けた資金支援やキャパシティ・ビルディング,気候変動対策の主流化に向けた資金フロー,公正な移行等について議論が行われました。

5 今次会合の意義

 今次会合は,COP24の成果を振り返り,市場メカニズム等のCOP25に向けた交渉課題について相互理解を深める有意義な機会となりました。また,気候変動交渉に関する議論だけでなく,パリ協定の実施に向けた課題や解決策等を共有できたことも,大きな成果となりました。日本は,共同議長国として各国関係者の活発な議論を促したほか,市場メカニズムの重要性やパリ協定の実施に向けた「環境と成長の好循環」の重要性を指摘する等,議論に貢献しました。


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