気候変動
第16回「気候変動に対する更なる行動」に関する非公式会合
1 会合の目的
「『気候変動に対する更なる行動』に関する非公式会合」(略称:日伯非公式会合)は,我が国とブラジルが共同議長を務め,2002年から毎年東京にて開催しています。この会合は,各国の交渉実務担当者(首席交渉官級)が非公式な形で率直な議論を行うことを目的としたものです。また,同会合は,前年の国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)の成果を振り返り,その年のCOP交渉の方向性を模索する機会であり,一年間の気候変動交渉の口火を切る会合として重視されています。
2 日程・場所・共同議長
- (1)日程:2月22日(木曜日)~23日(金曜日)
- (2)場所:東京(三田共用会議所)
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- (3)共同議長:
- (日本側)鈴木秀生・外務省地球規模課題審議官
- (ブラジル側)アントニオ・マルコンデス外務省副次官
3 参加国・オブザーバー
(1)参加国(30か国・機関)
アルゼンチン,豪州,ブラジル,ブルガリア,カナダ,中国,コロンビア,コンゴ(民),エジプト,エチオピア,欧州委員会,フィジー(COP23議長国),フランス,ドイツ,インド,イタリア,日本,モルディブ,マーシャル諸島,メキシコ,ニュージーランド,ノルウェー,ポーランド(COP24議長国),ロシア,サウジアラビア,シンガポール,南アフリカ,スイス,英国,米国
(2)オブザーバー
国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局,パリ協定特別作業部会(APA)共同議長,科学上及び技術上の助言に関する補助機関(SBSTA)議長,実施に関する補助機関(SBI)議長,Center for Climate and Energy Solutions(C2ES)
4 議論の概要
(1)セッション1「COP23の成果」
多くの国が小島嶼国として初めてCOP議長を務めたフィジーの尽力に敬意を表しつつ,パリ協定の実施指針の策定作業の進展,「タラノア対話」(注)の基本設計の合意,グローバルな気候変動行動(GCA)の推進等を成果として指摘しました。また,ジェンダー,農業,先住民族等に関する政策指針作りが前進したことも重要な成果として指摘されました。
(注)温室効果ガスの削減に関する世界全体の努力の進捗状況を検討するために実施される促進的な対話。議長国フィジーの提案により,フィジー語で透明性・包摂性・調和を意味する「タラノア」が使われることとなった。
(2)セッション2「COP24への期待」
COP24の議長国であるポーランドから,次回COPの成功に向けた強い決意が示されました。多くの国が,COP24において目指すべき最も重要な成果として,実施指針の採択を挙げました。また,2018年を通じて開催される気候変動に関する各種会合等を,国際気候変動交渉のモメンタム強化に活用する重要性が指摘されました。「タラノア対話」については,世界全体の排出削減の状況に関する理解が深まり,更なる野心の向上につながることを期待する意見が多くありました。2020年までの実施と野心(Pre2020)についても,引き続き取り組む姿勢が示されました。
(3)セッション3「パリ協定に係る実施指針採択に向けた作業の進展」
本年(2018年)がパリ協定の実施指針の策定期限であることを受け,COP23で作成された非公式ノート等のこれまでの成果を活かしながら,いかに実施指針を具体化していくか議論されました。一部途上国から差異化の運用のあり方及び資金の予見可能性に手当てすることの重要性が指摘されたほか,技術的な議論を加速すべきこと,議題間の関連性を認識しつつ,全体として最適なガイドラインとすべきこと,パリ協定の実効性の担保やパリ協定に内蔵されている先進国と途上国の間の義務のバランス維持に留意すべきこと,等が指摘されました。
(4)セッション4「パリ協定実施のための効果的な支援の提供」
パリ協定の着実な実施に向け,気候資金が果たす役割の重要性につき確認するとともに,緑の気候基金(GCF)や地球環境ファシリティ(GEF)を含む気候変動に関する様々な基金のシナジー効果の向上や効率的な運営方法,基金へのアクセス改善等の課題について議論されました。また,パリ協定第9条5(計画された資金の提供・動員に関する報告のあり方)や適応基金の今後の方向性,民間資金の動員等についても活発な議論が交わされました。
5 今次会合の意義
今次会合は,タラノア対話・パリ協定の実施指針・気候資金等の様々な論点について,相互理解を深める貴重な機会となりました。
また,参加国の間で,COP24において実施指針を採択するというコミットメントが再確認されたことも大きな成果となりました。
日本は,共同議長国として各国関係者の活発な議論を促したほか,タラノア対話への効果的なインプット方法や,パリ協定の実施指針採択に向けた進め方,資金の予見可能性を高める上での提供側と受領側双方の説明責任の必要性等,様々な課題に関して議論の深まりに貢献しました。