気候変動
国連気候変動枠組条約に関する特別作業部会及び補助機関会合
6月1日~11日,ドイツ・ボンにおいて,国連気候変動枠組条約の下での「強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム特別作業部会(ADP)」第2回会合第9セッション及び2つの補助機関会合が行われたところ,概要は以下のとおり。我が国から,外務・経済産業・環境・文部科学・農林水産・国土交通の各省関係者が出席した。
I.強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム特別作業部会(ADP)
(注)ADPは,2011年末に南アフリカ・ダーバンで開催された第17回気候変動枠組条約締約国会議(COP17)での決定を受け設置されたもの。(1)2015年に採択される予定の,全ての国に適用される2020年以降の新しい枠組み(以下「2015年合意」という。)(ワークストリーム1)及び(2)2020年までの緩和の野心の向上(ワークストリーム2)について議論を行う。
1.2015年合意についての議論(ワークストリーム1)
本年2月にスイス・ジュネーブで開催されたADP第8セッションの議論を経て,「交渉テキスト」が2月末に配布された。今次会合は,交渉テキスト作成後に初めて開催されるADP会合であり,当該テキストを整理・統合し,本年12月のCOP21における合意の採択に向けて作業を加速化させることを目的としていた。
(1)2015年合意に関する交渉
- (ア)今次会合では,交渉テキストの章(A:前文,B:定義,C:総則/目的,D:緩和,E:適応/損失と損害(ロス・アンド・ダメージ),F:資金,G:技術開発・移転,H:能力開発(キャパシティ・ビルディング),I:行動と支援の透明性,J:目標の時間枠及びプロセス,K:実施の促進及び遵守,L:手続・組織事項)ごとに,共同議長から任命された共同ファシリテーターの下で議論が行われた。
- (イ)第1週目は,交渉テキスト中の表現が重複する箇所を特定し,これらを統合する作業が中心に進められた。2週目にはさらに作業を進め,様々な要素が混在するパラグラフを分解,再構成し,内容ごとに章内のパラグラフを再構成する作業が行われた。こうした作業を経て,各ファシリテーターによる章ごとに含まれる要素が整理された表等がまとめられた。
- (ウ)章ごとの議論の中で,全体の構造を議論すべき,異なる章の間の重複の整理や統合も行うべき,2015年合意の中核となる法的合意とそれに関連するCOP決定にそれぞれどのような内容を含めるべきかについて議論すべき,差異化などの重要な論点を議論すべき等,多くの締約国から提案があり,一部の章ではそうした議論が進められた。また,8日の全体会合においては2015年合意の全体像について議論する時間が設けられた。
- (エ)2週間の議論を踏まえ,今次会合の最終日の11日に共同議長から次回会合に向けた進め方が示され,7月24日までに,共同議長が整理・統合されたテキストを締約国に示すこととなった。
- (オ)我が国は,交渉テキストの整理に貢献するとともに,同じ章の中のパラグラフ間の関連性,異なる章の間の関連性を認識して議論すべき,法的合意には,原則レベルの内容を規定した上で,法的合意の実施のための施行細則,過去COP決定で扱われてきた事項,2020年からの法的合意の発効を待たずに実施すべき事項をCOP決定に含めるべき等と主張した。
2.2020年までの緩和の野心向上(ワークストリーム2)
4日に開催されたコンタクトグループ以降,2020年までの野心向上,及びそのためにCOP20決定においてADPに要請された「技術的検討プロセス」の推進を含むCOP21決定に含めるべき要素について,ファシリテーター(外務省吉田交渉官)の下,議論が行われた。我が国もアンブレラグループ(米,加,豪,ニュージーランド,ノルウェーなど先進国グループ)の国々とともにCOP21決定に含めるべき要素について提案を行った。
先進国は,COP20決定に従って「技術的検討プロセス」の推進のための内容とすべきと主張し,途上国はこれに加えて緩和,適応,実施手段などを幅広く対象とし,2020年以前の取組の実施状況を評価する「実施促進プロセス」を設置することを主張した。議論を受けて,共同ファシリテーターが各国の主な提案内容や,意見の一致が見られる部分(技術的検討プロセスの強化),開きの大きい部分(実施促進のためにワークストリーム2で扱うべき内容)を列挙したペーパーを作成した。
これを踏まえ,ADP共同議長からは今次会合の成果を踏まえて次回の交渉会合でさらに進展を図りたいとの発言があった。
3.今後のADP交渉予定
次回会合は8月31日~9月4日,次々回会合は10月19日~10月23日に開催される予定。
II.補助機関会合(SB)
年に2回開催される実施に関する補助機関(SBI)及び科学上及び技術上の助言に関する補助機関(SBSTA)の第42回会合では,国別報告書・隔年報告書,国別適応計画,対応措置,技術,キャパシティ・ビルディング,REDD+(途上国における森林の減少・劣化に由来する排出の削減等),LULUCF(土地利用,土地利用変化及び林業),農業,市場メカニズム(様々なアプローチのための枠組み等),2013-2015年レビュー,2016~2017年事務局予算等に関する議論を行い,合意を得られた議題について結論文書がまとめられた。
REDD+については,途上国における森林保全等の活動を行う際,生物多様性や地域住民への配慮などの促すための3つのガイダンスに合意した。
6月4日,5日に先進国の2020年の削減目標に関する進捗状況等について,前回SB41に引き続き第2回多国間評価(MA)が実施された。日本を含む24か国から発表が行われ,建設的な雰囲気の中で質疑応答が行われた。我が国のMAは4日に行われ,2020年目標に向けた進捗,施策の実施状況,二国間クレジット制度(JCM)等について説明及び質疑応答を行った。
III.我が国の立場に関する説明等
1.約束草案(INDC)サイドイベントにおける説明
会合期間中,これまでに約束草案を提出した国がその経験・教訓を共有することを目的として2日,9日にサイドイベントが開催された。EU,米国等が自国の約束草案の内容,策定までのプロセス等についてプレゼンテーションを行い,我が国からも約束草案の策定状況について発言した。
2.二国間・多国間の会談
会合期間中,米国,EU,豪州,ニュージーランド,スウェーデン,中国,インド,シンガポール,ブラジル,トルコ,アフリカ諸国,小島嶼国,JCM署名国等との会談を行い,我が国の約束草案の状況について説明するとともに,今後のADPプロセスの進め方や2015年合意の在り方,JCMを含む2015年合意における市場メカニズムの在り方等について意見交換を行った。
3.ステークホルダーとの対話
会合期間中,国内外のNGOと意見交換を行ったほか,アンブレラグループとして産業界及びNGOとの面会を行った。
4.プレスへの説明
会合期間中,邦人記者に対するブリーフを行い,交渉の状況や我が国の立場について説明した。