気候変動

令和2年4月10日

1 会合の目的

 「『気候変動に対する更なる行動』に関する非公式会合」(略称:日伯非公式会合)は,我が国とブラジルが共同議長を務め,2002年から毎年東京にて開催しています。この会合は,各国の交渉実務担当者(首席交渉官級)が非公式な形で率直な議論を行うことを目的としたものです。また,同会合は,前年の国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)の成果を振り返り,その年のCOP交渉の方向性を模索する機会であり,一年間の気候変動交渉の口火を切る会合として重視されています。

2 日程・場所・共同議長

  • (1)日程:2月27日(木曜日)・28日(金曜日)
  • (2)場所:東京
  • (3)共同議長:
    (日本側)塚田 玉樹 外務省地球規模課題審議官
    (ブラジル側)ファビオ・マルザノ 外務省国家主権・市民担当副次官

3 参加国・オブザーバー

(1)参加国(28か国・機関)

 アルゼンチン,豪州,ベリーズ,ブータン,ブラジル,カナダ,チリ(COP25議長国),中国,コスタリカ,エジプト,エチオピア,欧州委員会,フランス,ガボン,インド,イタリア,日本,メキシコ,ニュージーランド,ノルウェー,韓国,ロシア,セネガル,シンガポール,南アフリカ,スイス,英国(COP26議長国),米国

(2)オブザーバー

 国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局,科学上及び技術上の助言に関する補助機関(SBSTA)議長,実施に関する補助機関(SBI)議長,Center for Climate and Energy Solutions(C2ES)

4 議論の概要

(1)セッション1「COP26への期待」

 昨年のCOP25を振り返り,COP26に向けた期待について議論が行われました。COP25については,多くの国が議長を務めたチリの尽力に敬意を表し,損失及び損害に関するワルシャワ国際メカニズム(WIM:Warsaw International Mechanism)のレビューの完了や,ジェンダー・アクションプランの改定等を成果として挙げ,COP26に向けて,透明性枠組み・パリ協定6条(市場メカニズム),長期気候資金,気候変動対策の野心等の多くの課題があり,SB(補助機関会合)や関連会合の機会も活用しつつ,締約国間で議論を深めていくべきとの意見が多く出されました。

(2)セッション2「パリ協定6条(市場メカニズム)」

 COP26における採択に向け検討を継続することとなったパリ協定6条の実施指針に関して議論が行われました。多くの国が,COP25における議論の進展を歓迎するとともに,実施指針について,この進展から後戻りせずに交渉を進めていくべきこと,技術移転等による緩和の野心の向上と適応への貢献を促進すべきこと,環境十全性の確保と二重計上防止が原則であること等を指摘しました。また国際航空における炭素削減オフセットスキーム(CORSIA)と6条の実施指針との関係についても議論が行われました。

(3)セッション3「NDCサイクルを通じた野心と長期戦略」

 2020年以降のパリ協定の本格実施に向けて,野心的な気候変動対策を進めるために重要な作業や交渉課題(透明性枠組み等),NDC,長期戦略について議論が行われました。パリ協定の目標達成に向けた野心的なNDCの通報/更新(communicate/update),透明性枠組みの報告表の完成,適応・支援の野心,非政府主体の関与等の重要性が指摘されました。

(4)セッション4-1「長期気候資金」

 2025年以降の長期資金目標について,本年から議論が開始されることを受け,その進め方について意見交換が行われました。2020年の1000億ドル目標から得られる教訓や,途上国のニーズを踏まえた議論をすべきという考えが多くの国から表明されました。また,一部の国からは,「資金フローを低排出型で気候変動に対して強靱な発展に向けた方針に適合させる」というパリ協定の長期目標の重要性が提起されるとともに,公的資金だけでなく,民間資金も含めた資金フロー全体を気候変動対策に振り向けるという観点も提起されました。さらに,近年の南南協力の進展を歓迎した上で,ドナー国(資金の提供国)拡大についても活発な議論が交わされました。

(5)セッション4-2「気候変動緩和・適応のための資金とシナジー」

 どのような分野における気候資金を重視しているか,SDGsと気候変動対策との関係性が議論されました。緩和分野においてはエネルギー効率性,再生可能エネルギー,適応分野においては保健・水分野を重視している国が多く,各国の取組についても共有がなされました。また,気候変動対策は多岐に亘り,SDGsでいえばゴール13(Climate action)以外のゴールの達成にも貢献しているという認識が共有されました。


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