気候変動

平成28年9月26日

1 日程・参加国

 9月23日,米国・ニューヨークにて開催された。世界の排出の大部分を占める主要経済国(16の国と機関:日本,米国,英国,フランス,ドイツ,イタリア,カナダ,中国,インド,韓国,豪州,メキシコ,南アフリカ,ブラジル,インドネシア,EU(スロバキア(議長国)及び欧州委員会))及びオブザーバー7カ国(ノルウェー,シンガポール,マーシャル,モロッコ(COP22議長国),サウジアラビア,エジプト,アラブ首長国連邦)の計23カ国の環境大臣や気候変動特使に加え,国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局長及びパリ協定に関する特別作業部会(APA)共同議長他が参加した。全体の議長はディーズ米大統領特別補佐官が務めた。

2 外務大臣セッション

 各国外務大臣,その他の参加を得て開催され,我が国からは相星外務省地球規模課題審議官が出席した。ケリー米国務長官から,気候変動がもたらす気温上昇や難民などの問題及びそれらが安全保障に与えるリスクに言及しつつ,低炭素経済への移行の重要性を訴えた。また,21日に開催された国連事務総長主催パリ協定発効に関するハイレベルイベントで発効要件の一つである55か国を上回ったことを重要なステップであるとし,今後1,2か月の間にもう一つの発効要件である排出量55%も満たされるとの見方を示した上で,差し迫ったその他優先案件としてハイドロフルオロカーボン(HFC)に関するモントリオール議定書の改正及びICAOでの航空部門における市場メカニズムを活用した排出削減制度の採択への言及があった。その後,ビショップ豪外相から,今後はパリ協定の実施が重要である旨述べた上で,豪における長期戦略や気候資金への取組について言及したほか,参加国から自国が決定する貢献(NDC)を実施する上での支援の必要性,気候変動問題の政治的関心を維持する上での外相の役割の必要性などへの言及に加え,ケリー長官の発言に賛同する発言もあった。また,イタリア及び独からはそれぞれ来年のG7及びG20の議長国として気候変動を主要議題とする旨発言があった。

3 議論の概要

 今次会合は,21日に開催された国連事務総長主催パリ協定発効に関するハイレベルイベントの結果を受け,早期発効の見通しが高まる中開催された。

(1)マラケシュの成果

 何をもってマラケシュ(COP22)の成功とするか,それを達成するために必要な取組,早期発効を見据えたパリ協定の実施に係る指針等の策定のための準備,途上国のNDCの実施支援を含む能力開発の強化,マラケシュ及びそれ以降のアクション・アジェンダの関与のあり方などにつき,議論が行われた。パリ協定の早期発効がマラケシュの成功に資するとの見方が多くの国から示され,パリ協定を未締結の国(我が国を含む)から締結に向けた国内の取組について説明があった。また,UNFCCC事務局長から,第一回締約国会合(CMA1)までに指針等の策定が完了しない場合には,CMA1を中断しAPAのマンデートを延長するとともに,指針等の策定を2018年までに完了させることを視野に中断期限を2018年までとする考えが示され,一定のコンセンサスが得られた。また,COP22議長国のモロッコから,COP22会期中に各国首脳が参加する協定発効イベントを準備している旨紹介があった。

(2)パリ協定の実施

 今後はパリ協定の実施に向けた作業が主流となるとの認識の下,各国の適応に係る国内実施状況,緑の気候基金(GCF)の実効的な発展の方策,各国の長期戦略についての取組状況につき,議論が行われた。また,途上国のNDCの実施を支援するため,締約国と非政府主体の協力強化が必要との意見があったほか,緩和及び適応を実施する上でのGCFの役割に期待する意見があった。長期戦略についての自国の取組を説明する中で,一部の国からはCOP22において長期戦略を発表する旨言及があった。

(3)HFCに関するモントリオール議定書の改正

 温室効果ガス削減に大きなインパクトを与えるHFCを,オゾン層破壊物質に関するモントリオール議定書を改正してその規制対象とする議論がなされていることを踏まえ,来る10月の同議定書第28回締約国会合でのあり得べき進展につき,議論が行われた。野心的な改正が採択されることがパリ協定の目標に合致しマラケシュの成果になるとの意見が見られ,前日のプレスイベントで公表されたモントリオール議定書HFC改正に関するドナー宣言を歓迎する意見も見られたほか,改正に盛り込む凍結期日などを巡り,参加国の間で見解の違いが見られた。


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