気候変動

平成27年12月16日
 12月7日,第4回東アジア低炭素成長パートナーシップ対話がCOP21公式サイドイベントとしてフランス・パリで開催されたところ,概要と評価は以下のとおり。今回のパートナーシップ対話は,環境省,公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES),国立環境研究所(NIES),マレーシア工科大学(UTM)と共催。

1 出席者

 イズマイル・イスカンダル・マレーシア地域開発庁長官,プトラジャヤ市ハシム市長,ホー・マレーシア工科大学教授,フイ・ベトナム天然資源管理・環境省 気象・水文・気候変動局課長,テイ・カンボジア環境省気候変動課長が登壇。我が国からは,丸川環境大臣(冒頭挨拶),堀江外務省参与(地球環境問題担当大使),浜中公益財団法人地球環境戦略研究機関理事長等が登壇。
 加えて,EASメンバー国の交渉官,IPCCやUNEPをはじめとする国際機関関係者,東京都やマレーシア・イスカンダールはじめとする地方自治体,NGO及び研究者等,総計約90人が出席。

2 概要

  1. 今回の第4回対話において日本は、これまでのパートナーシップ対話の議論や成果を踏まえ, EAS地域が目指すべき低炭素成長の方向性についてまとめた「提言集」を発表。パートナーシップ対話では,提言集のグッドプラクティスの一部をベトナム,カンボジア,マレーシア,日本から参加者に紹介。最後に,「COP21後の具体的な取組に向けて」をテーマに会場参加者も踏まえたパネルディスカッションを行った。
  2. 第1回対話でEAS参加国が協力していくことで一致した,第1の柱「各国の低炭素成長戦略の策定,実施」について,国だけでなく地方自治体レベルでの低炭素成長戦略の策定・実施の重要性,科学的知見の重要性,戦略策定のためのキャパシティビルディングの必要性が確認された。
  3. 第2の柱「技術,市場メカニズムの重要性」について,二国間クレジット制度(JCM)の成果が共有されるとともに,低炭素技術普及に向けた官民連携の重要性,地方自治体同士の連携の重要性,民間投資促進に向けた経済的インセンティブ及び安定的な政策枠組みの必要性,環境・社会配慮を含む質の高いインフラ投資の重要性が確認された。
  4. 第3の柱「様々なステークホルダー間の効果的なネットワークの構築」について,政府,地方自治体,国際機関,民間企業,研究機関,NGOをはじめとする全ての関係者とグローバル・パートナーシップを構築し,協力,連携していくことの重要性が確認された。また,東アジア低炭素成長ナレッジ・プラットフォーム等,既存のネットワークの更なる活用の重要性が確認された。
  5. 会場参加者も踏まえたパネルディスカッションでは,地方自治体や非政府主体の役割の重要性,INDCはじめ排出量削減を促す仕組みを確実にすることの重要性等について言及があった。また,会場参加者からはJCMの今後の活用や適応に関するコミュニティ教育の必要性について言及がある等,自由闊達な議論が行われた。

3 評価

 東アジア低炭素成長パートナーシップ対話は,世界経済の成長センターであるともに,世界最大の温室効果ガス排出地域である東アジア首脳会議(EAS)地域において,低炭素成長に向けた取組を地域レベルで推進するため,日本が2012年から主導してきた政策対話である。4回目となる今回の会合では,EAS地域が目指すべき低炭素成長の方向性を日本として明示するとともに,日本を含めたEAS域内のこれまでのグッドプラクティスを政府関係者,地方自治体,国際機関,NGO等,世界中から集まった関係者へ共有することができた。また,今後のEAS地域が進むべき方向性について様々な立場の参加者と有意義な議論を行うことで,COP21後の具体的取組の実施に向け認識を共有することができた。また,EAS関係者含む多くの参加者から「提言集」が評価された。

4 提言集『東アジア低炭素成長パートナーシップ対話からの提言 低炭素成長への変革』

低炭素成長を実現するための方向性:

1 各国の低炭素成長戦略の策定、実施

  • 国による包括的な基本戦略の下で、各地方自治体や産業界が主体となり、市民、地元企業、NGO、大学・研究機関の研究者等の様々なアクターを巻き込みながら、低炭素成長計画を策定し実施する。
  • 低炭素成長戦略の策定には、各国や地域の実情を理解している研究者による政策担当者への科学的知見の提供が不可欠である。
  • 低炭素成長戦略及び計画の策定、実施を行うための人材育成の強化が必要である。

2 技術、市場メカニズムの活用

  • 低炭素成長を効果的に促進させるためには、温室効果ガスの削減ポテンシャルの高い分野における現地ニーズに適合した適正技術の普及が重要である。
  • 技術の普及のために、優れた技術を有する民間セクターとの連携を強化する。
  • 技術普及・能力向上のために、地方自治体同士の協力を強化する。
  • 低炭素成長に資する民間投資を促進するためには、経済的なインセンティブの強化及び安定的な政策的枠組みと投資・ビジネス環境のさらなる整備が必要である。
  • 環境・社会配慮を含む質の高いインフラ投資の重要性を理解し、低炭素技術を駆使したインフラを導入する。

3 様々なステークホルダー間の効果的なネットワークの構築

  • 政府、地方自治体、国際機関、民間企業、研究機関、NGOを始めとする全ての関係者とグローバル・パートナーシップを構築し、協力、連携していく。
  • 東アジア低炭素成長ナレッジ・プラットフォームをはじめとした既存のネットワークの活用をさらに活性化する。
  • 異なるアクター間で知見の共有を行い、そのアクター間での知識の共鳴から生ずる新たな発想の創成を促進する。

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