気候変動
国連気候変動枠組条約に関する特別作業部会及び補助機関会合
1 パリ協定特別作業部会(APA)について
昨年12月に第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)において、「パリ協定」が採択され、その発効及び第1回パリ協定締約国会合に向けた準備のためにAPAを設置することが決定された。パリ協定の採択後初めての公式の交渉会合となる今次APA会合においては、共同議長の選任、議題の採択、作業の進め方への合意により今後のパリ協定の実施のための指針等の策定に向けた交渉の基礎を整えるとともに、採択された議題について各国が最初の意見交換を行い、交渉を開始した。また、次回会合においてさらに具体的・技術的な議論を速やかに行うための今後の作業の進め方についても合意した。
(1)共同議長の選任
開会初日に共同議長の選任が行われ、附属書I国からは、ジョー・ティンダル氏(ニュージーランド)、非附属書I国からは、サラ・バシャーン氏(サウジアラビア)が共同議長を務めることとなった。
(2)議題の採択等
会期前に事務局より示された暫定的な議題について、開会初日に途上国より修正が提案され、先進国と途上国の間で修正案に関連するパリ協定の解釈を巡って議論が行われた。非公式協議等における調整の結果、緩和に係る議題の文言の修正、適応に係る議題の追加及びAPAを含む複数の機関で行われるパリ協定の実施に向けた作業のストックテイク(進捗状況の検討)に関する議題の追加等が行われ、20日に議題が採択された。
(3)各議題に関する議論
- ア
- 各国より作業の進め方についての意見を聴取するため行われた非公式協議における提案を踏まえ、単一の全体会合で最初の意見交換を行った上で、各議題について技術的な非公式協議を行うこととなった。
- イ
- APAの議題である緩和、適応、透明性枠組み、グローバル・ストックテイク(世界全体の実施状況の検討)、実施及び遵守の促進、早期発効等についてそれぞれ、全体会合において(ア)スコープと鍵となる課題、(イ)技術的な作業の進め方、(ウ)COP22に向けた作業について議論を行った。その上で非公式協議を開催し、各議題について共同議長から示された技術的な論点に沿って、各国がパリ協定の実施のための指針等の策定に向けたより詳細な意見を交換し、各国の立場や見解の一致・違いについて理解が深まった。
- ウ
- これらの議論を踏まえ、25日に共同議長より、各国からの提案を踏まえた今後の会合における作業の進め方やCOP22に向けた作業を含む結論文書案が示され、非公式協議における議論を経て、最終日となる26日に採択された。
- エ
- 我が国は、各議題について、パリ協定の実効的な実施のために必要となる要素や作業の進め方を提案し、技術的な議論に貢献するとともに、COP22までの作業については、できる限り速やかにパリ協定の実施のための指針等の策定を目指す観点から、各議題について各国から見解の提出を求めること等を提案した。
(4)今後のAPA交渉予定
次回APA会合は、第22回気候変動枠組条約締約国会議(COP22)の開催と合わせて11月7日~18日にモロッコ・マラケシュにて開催される予定。
2 補助機関会合(SB)
年に2回開催される科学上及び技術上の助言に関する補助機関(SBSTA)及び実施に関する補助機関(SBI)の第44回会合では、パリ協定第6条に基づく市場メカニズム等に関する事項、IPCCのグローバル・ストックテイクへの情報提供方法、パリ協定第9条7項に基づく資金のアカウンティングのモダリティなど、パリ協定の実施のための指針等の策定に関する事項、また、LULUCF(土地利用、土地利用変化及び林業)、農業、定期的レビュー、国別報告書・隔年報告書、国別適応計画、対応措置、技術、キャパシティ・ビルディング、事務局予算等に関する議論を行い、合意を得られた議題について結論文書がまとめられた。
また、会合期間中に途上国の温室効果ガス削減の取組に関する促進的な意見共有(FSV)が実施され、ブラジル、南アフリカ、ベトナム等の13カ国が今次会合の対象とされた。建設的な雰囲気の中で質疑応答が行われ、我が国からも積極的に質問を行った。
3 我が国の立場に関する説明等
(1)二国間・多国間の会談
会合期間中、英国、豪州、ニュージーランド、タイ、モロッコとの会談を行い、パリ協定の締結及び実施に向けた取組、今後のAPAプロセスの進め方やパリ協定の指針等に係る見解等について意見交換を行った。また、JCMパートナー国とJCMの更なる推進について協議した。
(2)ステークホルダーとの対話
会合期間中、国内外のNGOと意見交換を行った。
(3)プレスへの説明
会合期間中、邦人記者に対するブリーフを行い、交渉の状況や我が国の立場について説明した。