気候変動

平成27年12月28日

1 全体の概要と評価

(1)11月30日から12月13日まで,フランス・パリにおいて,国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21),京都議定書第11回締約国会合(CMP11)等が行われた。我が国からは,丸川環境大臣,木原外務副大臣,星野経済産業大臣政務官,鬼木環境大臣政務官,外務・経済産業・環境・財務・文部科学・農林水産・国土交通各省関係者が出席した。なお,11月30日には,オランド仏大統領の主催により首脳会合が開催され,安倍総理他が出席した。

(2)「強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム特別作業部会(ADP)」における事務レベルの交渉を経て,12月6日以降閣僚間でさらに協議を重ねた結果,最終的に12月12日に新たな法的枠組みである「パリ協定」が採択された。我が国としては,すべての国が参加し,公平かつ実効的な枠組みとなる「パリ協定」が採択されたことを高く評価する。

2 日本政府の対応

(1)「パリ協定」について,我が国は,丸川環境大臣,木原外務副大臣を筆頭に,積極的に会合に参加し,新たな枠組みは全ての国が参加する公平かつ実効的なものであるべきとの立場を発信するとともに,具体的なテキスト案を提案するなど議論に貢献した。

(2)丸川環境大臣が閣僚級ステートメントにおいて日本代表として演説した。すべての国が参加する法的合意をできる限り実効性あるものとすることを改めて強調し,長期目標の設定や,目標の提出・見直しのサイクル,レビューの仕組みを法的合意に位置付けることを主張した。またできるだけ早期に地球温暖化対策計画を策定し,排出削減への取組を着実に実行していくこと,先日決定した適応計画に基づき具体的な適応策を実行していくこと,2020年に官民あわせて年間約1兆3千億円の気候変動関連の途上国支援を行うこと,革新的技術開発を強化していくこと等を発表した。こうした発言を通じ,パリ協定の合意を後押しした。

(3)さらに,丸川環境大臣及び木原外務副大臣は,会合期間中に,COP21議長国フランス,米国,中国,インド,南アフリカなどの主要国の閣僚や潘基文国連事務総長など国際機関の長等,合計14の国・国際機関と会談を行い,新たな枠組みのあるべき姿,それぞれの主張や合意に向けて協調していくことの重要性を確認した。また,丸川環境大臣は,リマ・パリ・アクション・アジェンダ(LPAA)の都市・地域をテーマにした公式イベント等に登壇し,日本とアジアの都市間連携の取組等をアピールした。星野経済産業大臣政務官は,LPAAのイノベーションをテーマにした公式イベント等に登壇し,イノベーションの重要性を強調することでCOP21後も見据えた温暖化問題解決に向けた議論をリードできるよう主張した。鬼木環境大臣政務官は,OECD玉木事務次長,GEF石井CEO兼議長などと会談し,新たな枠組みの方向性等,国際機関の見解も聴取しつつ意見交換を行った。

(4)二国間クレジット制度(JCM)に署名した16か国が一堂に会する「第3回JCMパートナー国会合」を開催し,JCMの進捗を歓迎し,引き続き協力してJCMを実施していくこと等が表明された。また,丸川環境大臣とパヘ・比環境天然資源大臣との間で,両国間のJCMの構築に向けて覚書への署名を行った。また我が国を含む18か国が,国際的な市場メカニズムの活用について協力していく意思を示す「炭素市場に関する閣僚宣言」に加わった。

(5)丸川環境大臣と仏ロワイヤルエコロジー・持続可能開発・エネルギー大臣との間で,両国間の友好関係の強化と,国際及び国内レベルにおける低炭素社会の構築を目指した環境協力の覚書への署名を行った。

(6)日本政府として「ジャパン・パビリオン」と題するイベントスペースを設置し,国,各種機関・組織,研究者等の取組の紹介や議論を行うイベントを多数開催し,気候変動対策に関する我が国の貢献等について紹介した。

(7)東アジア地域の低炭素成長の方向性について議論する「第4回東アジア低炭素成長パートナーシップ対話」を公式サイドイベントとして開催した。同イベントに合わせて,第3回までの成果を踏まえた提言集を発表し,低炭素成長の優良事例をベトナム,カンボジア,マレーシア,日本から紹介した。

3 今次会合の成果

(1)「パリ協定」の採択
 新たな法的枠組みとなる「パリ協定」を含むCOP決定が採択された。「パリ協定」においては,
  • 世界共通の長期目標として2℃目標のみならず1.5℃への言及
  • 主要排出国を含むすべての国が削減目標を5年ごとに提出・更新すること,共通かつ柔軟な方法でその実施状況を報告し,レビューを受けること
  • JCMを含む市場メカニズムの活用が位置づけられたこと
  • 森林等の吸収源の保全・強化の重要性,途上国の森林減少・劣化からの排出を抑制する仕組み
  • 適応の長期目標の設定及び各国の適応計画プロセスと行動の実施
  • 先進国が引き続き資金を提供することと並んで途上国も自主的に資金を提供すること
  • イノベーションの重要性が位置づけられたこと
  • 5年ごとに世界全体の状況を把握する仕組み
  • 協定の発効要件に国数及び排出量を用いるとしたこと
  • 「仙台防災枠組」への言及(COP決定)
が含まれている。この中には日本の提案が取り入れられたものも多い。
(2)その他のCOP/CMP決定
 気候資金,緑の気候基金,長期目標に関する2013-2015年レビュー,適応委員会,ワルシャワ国際メカニズム,技術メカニズムと条約の資金メカニズムの連携,京都議定書の第二約束期間の実施に関する細則等のCOP/CMP決定が採択された。
(3)次回COP/CMPの予定
 COP22は,2016年11月にモロッコ・マラケシュで開催されることとなっている。

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