12月12日(水曜日),マレーシア(クアラルンプール)において,文部科学省及び独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)が主催する第19回アジア・太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF-19)の機会を捉え,当省主催による宇宙環境保全ワークショップを開催しました。
1 目的
本ワークショップは,宇宙空間を長期的に持続可能な方法で利用するための課題について意見交換を行い,近年特に宇宙活動への関心が高まっているアジア太平洋地域諸国等に宇宙環境保全の重要性を広く普及するとともに,同地域において,宇宙活動によるスペースデブリ(宇宙ゴミ)の発生を最小限に抑える等の対策の進展を図り,我が国を始めとする宇宙利用国の安心,安全,安定的かつ持続可能な宇宙活動やその利用を確保することを主な目的としたものです。
2 開会・講演
- (1)冒頭,ムスタファ・マレーシア宇宙庁長官(Dr. Mustafa Din Subari, Director General of National Space Agency (ANGKASA))から歓迎の辞とともに,近年,宇宙活動の増加に伴い問題も増加してきており,国際的な規範づくりが重要であること,EU提案の国際行動規範案について,マレーシアを含む多くの国が賛同していること等,発言がありました。
- (2)続いて,堀川康国連宇宙空間平和利用委員会(COPUOS)議長(外務省参与)が,本ワークショップの開催意義及びCOPUOSの活動等について基調講演を行いました。
- (3)さらに,オスマン国連宇宙部長(Dr. Mazlan Othman, Director of the United Nations Office for Outer Space Affairs)による,国連宇宙部の組織及び活動概要,スペースデブリを含む宇宙分野における課題,宇宙活動の長期的持続可能性の重要性等についての招待講演が行われました。
3 テクニカル・プレゼンテーション
- (1)マルチネスCOPUOS科学技術小委員会宇宙活動の長期的持続可能性ワーキンググループ(長期的持続可能性WG)議長(Dr. Peter Martinez, Chairman of the Working Group on the Long-term Sustainability of Outer Space Activities, UNCOPUOS)から,スペースデブリの現況及びその影響,科学技術の側面からの取扱い,多国間による国際的な規制の枠組み等について総論的な説明がありました。
- (2)続いて,花田俊也九州大学教授から,デブリの現況についての補足説明,小型衛星ネットワークを活用したデブリ観測のプロジェクトについて説明があり,成田兼章JAXA統合追跡ネットワーク技術部長からは,衛星衝突リスク軽減のための宇宙運用等について説明がありました。
4 パネルディスカッション
マルチネスCOPUOS長期的持続可能性WG議長をモデレーター,アジア太平洋地域諸国の宇宙関係者をパネリストとして,「スペースデブリ低減のために」というテーマで活発な議論が行われました。多くのパネリストから「宇宙環境を保全するためには規範づくりが必要」との意見が出され,宇宙環境保全の重要性について,アジア太平洋地域諸国の宇宙関係者と意識を共有することができました。
5 その他
なお,本ワークショップ終了後,当省と国連軍縮研究所(UNIDIR)の共催により,地域セミナー「アジア太平洋地域にとっての安全かつ持続可能な宇宙利用の確保:行動規範の役割」を開催しました。本セミナーでは,EU提案の宇宙活動に関する国際行動規範案について,アジア太平洋地域を主な対象として情報提供,意識の醸成を行うことを目的とし,同規範づくりの重要性やその策定プロセスについて,有意義な議論が行われました。
(参考)
(1)配付資料(PDF)
(2)講演資料
(3)テクニカル・プレゼンテーション資料
(4)パネルディスカッション登壇者
(モデレーター)
- マルチネスCOPUOS長期的持続可能性WG議長
(パネリスト)
- グリーン豪州産業・イノベーション・科学・研究・高等教育省産学イノベーション部長(Dr. Michael Green, General Manager of Manufacturing Innovation Branch, Department of Industry, Innovation, Science, Research, and Tertiary Education)
- 花田九州大学教授
- ハッサン・マレーシア技術大学准教授(Dr. Azmi Hassan, Associate Professor of University of Technology Malaysia)
- 成田JAXA統合追跡ネットワーク技術部長
- ヤティーニ・インドネシア国立航空宇宙研究所宇宙科学センター長(Ms. Clara Yatini, Director of Space Science Center, National Institute of Aeronautics and Space of Indonesia)