国際組織犯罪に対する国際社会と日本の取組
サイバー犯罪
1 背景
情報通信技術分野の急速な発展に伴い、不正アクセスやランサムウェアなどコンピュータ・システムを攻撃するような犯罪及びコンピュータ・システムを利用して行われる犯罪(いわゆるサイバー犯罪)が出現するようになりました。
サイバー犯罪は、犯罪行為の結果が国境を越えて広範な影響を及ぼし得るという特質を備えていることから、その防止及び抑制のために国際的に協調して有効な手段をとる必要性があります。
2 サイバー犯罪に関する条約(通称:ブダペスト条約)
サイバー犯罪に対処するための法的拘束力のある国際文書の作成が必要であるとの認識が欧州評議会において共有されるようになり、平成9年(1997年)以降、欧州評議会におけるサイバー犯罪を取り扱う専門家会合においてサイバー犯罪に関する条約の作成作業が行われてきました。その結果、平成13年(2001年)9月に行われた欧州評議会閣僚委員会代理会合においてこの条約の案文について合意し、同年11月8日に行われた欧州評議会閣僚委員会会合において正式に採択されました。その後、同条約は、平成16年(2004年)7月に発効しています。
同条約は、サイバー犯罪から社会を保護することを目的として、コンピュータ・システムに対する違法なアクセス等一定の行為の犯罪化、コンピュータ・データの迅速な保全等に係る刑事手続の整備、犯罪人引渡し等に関する国際協力等につき規定しています。
我が国は、平成24年(2012年)7月3日に同条約の受諾書を欧州評議会(ストラスブール)の事務局長に寄託しました。これにより、同条約は、我が国については平成24年(2012年)11月1日に効力が発生しました。
3 サイバー犯罪に関する条約の第二追加議定書
平成29年(2017年)以降、欧州評議会において、容易に国境を越えるサイバー犯罪対策のための枠組みとして、他の締約国から、より迅速かつ円滑な手続による電子的形態の証拠の収集を可能にすること等を目的として、サイバー犯罪に関する条約の追加議定書の作成交渉が行われました。そして、令和3年(2021年)11月17日の欧州評議会閣僚委員会において、「協力及び電子的証拠の開示の強化に関するサイバー犯罪に関する条約の第二追加議定書」が採択されました。
我が国は、令和5年(2023年)8月10日に同議定書の受諾書を欧州評議会(ストラスブール)の事務局長に寄託しました。
同議定書は、サイバー犯罪に関する条約の締約国のうち5か国が同議定書に拘束されることに同意する旨を表明した日の3か月後の月の翌月の初日に効力を生じます。(令和6年(2024年)8月現在、その旨を表明した締約国は我が国を含め2か国にとどまり、現時点で未発効です。)
4 国連サイバー犯罪条約(仮称)
2024年7月29日から8月9日の日程で、国連本部において開催されていた国連サイバー犯罪条約案作成交渉のためのアドホック委員会再開最終会合は、現地時間8月8日、条約案がコンセンサスにて承認(合意)され、交渉が妥結しました。
同条約案は、主な内容として、(1)情報通信技術システム又は電子データに関する一定の行為の国内犯罪化及び裁判権の設定、(2)電子データの迅速な保全・捜索・押収等の手続措置の整備、(3)犯罪人引渡し・電子的証拠の収集のための相互援助などの国際協力、(4)途上国への技術支援等について規定しています。
同条約案は、国連総会第78会期中(2024年9月9日まで)に総会に提出され、その後、総会において採択される見通しです。