日本の安全保障と国際社会の平和と安定

平成25年11月25日
 11月11日から22日,日米両国政府は,外務省において,第3回国連平和維持活動(PKO)幹部要員訓練コース(U.S.-Japan Global Peace Operations Initiative Senior Mission Leaders Course (GPOI SML))を共催したところ,概要は以下のとおりです。

1.背景

 本訓練コースは平成21年から隔年で開催されており,日米双方の実施主体は,外務省及び米太平洋軍(PACOM)・米海軍大学院民軍関係センター(CCMR)です。今回,3回目を開催することは,共催する日米両国の強固かつ成熟した関係を示すものであり,本年10月の日米安全保障協議委員会(いわゆる「2+2」)の共同発表にも記述されているとおり,平和維持分野の日米協力の強化のための具体的な取組の一つと位置付けられます。
 また,9月の国連総会において安倍内閣総理大臣が,我が国として「積極的平和主義」の立場からこれまで以上に一層積極的に国際社会の平和と安定に寄与するとともに,国連の諸活動に相応しい人材を育成していく旨表明したところですが,本訓練コースはその具体的な取組の一つとも位置付けられます。

2.概要

(1)目的及び全体日程

 本訓練コースにおいては,アジア太平洋地域諸国出身の国連PKOの幹部要員を育成すること目的に,戦略レベルの訓練としてミッションの計画や準備,運用及び指揮に重点を置いた訓練が2週間にわたり実施されました。
 本訓練コースの初日(11日)の開講式では,石原宏高外務大臣政務官をはじめ,カート・トン在日米国大使館臨時代理大使及びマイケル・コンプトン米太平洋軍空軍准将が,日米両国政府代表として,コース開催と参加者・講師を歓迎する挨拶を行いました(石原外務大臣政務官の挨拶(PDF)PDF)。また,ジョイ・オグゥ・ナイジェリア国連代表部常駐代表(PKO特別委員会議長)が要員派遣国の立場から現在の国連PKOに関する基調講演を行い,続いてエドモンド・ミュレ国連PKO局次長(事務次長補)が国連事務局の立場から国連PKOに関する戦略的な視点から基調講演を行いました。
 最終日(22日)の閉講式では,石原宏高外務大臣政務官及びドナ・ウェルトン在日米国大使館公使が,参加者の努力と講師陣の尽力を称え,引き続き国連平和維持活動に相応しい人材を育成することに貢献する旨の挨拶を行い,石原宏高外務大臣政務官より,本訓練コース参加者18名に対し修了証が授与されました(石原大臣政務官の挨拶(PDF)PDF)。
 
(2)参加者及び講師陣

 本訓練コースには,日本を含むアジア太平洋地域の7か国より,将来国連PKOミッションの幹部要員となり得る軍人,警察官及び文民18名(内5名が女性)が参加しました。
 本訓練コースを通じて指導的役割を務めたメンターには,アジア,アフリカ,ヨーロッパで国連PKOの幹部(国連事務総長特別代表及び副代表,軍司令官及び警察長官)としての経験を有する6名が起用された他,平和維持活動における豊富な経験と専門性を有する講師が招かれました。
参加者は,メンターから幹部に求められる資質や諸課題に対する姿勢について,メンターの体験談を交えた講義を受けるとともに,講師から国連PKOの今日的な諸課題について学び,演習ではメンターや講師からの助言を受けつつ,参加者同士で議論を交わしました。

3.評価

(1)本訓練コースでは,文民,軍,警察の要員が混在して構成される複合型PKOが直面している複雑な課題に対応し,戦略レベルの各種訓練に加え,女性や子どもを含む文民の保護や,ジェンダー等の様々な講義が国連のカリキュラム及び訓練指針に則って実施されました。講義中は,国連PKO等の現場経験を有する各国軍人,警察官,国際機関勤務者を含む文民の参加者から積極的な質疑応答が行われ,ロールプレイングを取り入れた演習においても活発な討論があり,最終日には右を踏まえた参加者の発表が行われました。
このように将来PKOの現場でマンデート遂行のため適確な判断を下すことが求められる幹部要員の候補である参加者が,経験豊富なメンターや講師との議論・対話を通じて,国連PKOの諸課題及びその解決のための思考過程を学ぶとともに,普段は接することの少ない国や組織の参加者と率直な意見交換を通じて,国連PKOの現場を疑似体験したことは極めて有意義であったと評価できます。

(2)コース終了後,参加者からは本訓練コースのメンター及び講師,カリキュラム内容に対する高い評価が寄せられたほか,メンター及び講師からも,参加者の経験を踏まえた質の高い議論や将来性について高い評価を受けました。

(3)第1回目の受講者からUNDOF軍司令官が輩出されたように,今回の参加者については今後,国連PKO等ミッションの幹部として活躍することが期待されています。
  • 開講式
  • 集合写真
  • 閉講式:修了証授与場面
  • 講義中
  • 演習中1
  • 演習中2

(参考)参加者及びメンター・講師の出身国

(1) 参加者
 オーストラリア,バングラデシュ,インド,日本,モンゴル,ネパール,フィリピン

(2)メンター,講師
 オーストラリア,カナダ,エクアドル,インド,日本,ネパール,オランダ,ノルウェー,南アフリカ,米国
(メンターは,国連PKOミッションにおける幹部要員としての経験を有し,当該コースでは,講義を行うのみならず,演習を含めコース全体を通じて参加者を指導する。)

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