平成21年6月25日
6月24日(水曜日)から25日(木曜日)にかけ、パリのOECD本部でOECD閣僚理事会が開催され、我が国からは、中曽根外務大臣、伊藤外務副大臣、二階経済産業大臣、岡本内閣府大臣政務官他が出席した。今次閣僚理事会には、OECD加盟国30カ国に加え、加盟候補国5カ国(チリ、エストニア、イスラエル、ロシア、スロベニア)、関与強化国5カ国(ブラジル、中国、インド、インドネシア、南ア)が参加した。
閣僚理事会の最後に、加盟国30か国及び加盟候補国5カ国の賛同を得て、「結論文書」(和文骨子、和訳、英文(PDF))及び「グリーン成長に関する宣言」(和文骨子、和訳、英文(PDF)
)を採択した(但し、ロシアは「グリーン成長に関する宣言」には参加せず。)。
(1)経済・金融危機への対応に加え、危機克服後の世界経済のあり方について世界的に関心が高まる中、今次閣僚理事会は、「経済危機とその後、より強く、クリーンで、公平な世界経済の構築」をメインテーマに、1)OECDの戦略的方向性、2)回復への道、3)世界的な政策協力におけるOECDの役割、4)グリーン成長、及び5)貿易・投資のための市場開放維持、という5つの議題について例年以上に活発に議論を行った。
(2)議論の成果は、「結論文書」及び「グリーン成長に関する宣言」として発表され、危機の克服とその後の持続的成長実現に向けた加盟国の強い決意が表明された。OECD閣僚理事会が包括的な合意文書を発出するのは7年ぶりであり、加盟国のみならず非加盟国にとっても、危機とその後の政策対応を進めるための重要な指針となることが期待される。また、わが国の外務大臣による4年ぶりの閣僚理事会参加は、OECDにおけるわが国のプレゼンス強化に貢献した。
(3)ブラジル、韓国、米国との二国間会談では、二国間関係の一層の緊密化とともに国際的な課題への取組について連携を更に強化していくことが確認された。また、伊藤副大臣とグリア事務総長の会談においては、我が国とOECDとの協力関係を更に強化していくことで意見の一致をみた。
(1)OECDの戦略的方向性(24日ワーキング・ランチ)
グリア事務総長より、1)主要新興国との関係、2)他の国際機関との協調、3)OECDの活動の広報の3点をどのように強化していくべきか問題提起があり、各国から関与強化戦略、国際機関との連携について支持があり、分析や分野横断的議論でのOECDの比較優位を歓迎する意見が示された。我が国は、OECDが、国際機関間の政策協調についての戦略策定に主導的な役割を果たすべきである旨等強調した。
(2)回復への道(24日午後)
世界経済の見通しについては、危機的情況から脱しつつあるが、引き続き注意が必要であることについては概ね意見の一致を見た。特に、出口戦略については、経済が回復した時に備えて今から準備を始めるべきだが、実施するのは時期尚早であるとの点で幅広い認識の一致をみた。また、財政の持続可能性或いは財政再建の問題、雇用問題等について幅広く議論が行われた。
伊藤副大臣から、1)資本主義の行き過ぎを是正し、多様な価値観を尊重し、より多くの人々を幸せにする仕組みを構築するためのパラダイムシフトの必要性、 2)「人間の安全保障」の観点から、人間らしく生きるための基盤としての職業の重要性、3)量的な成長から質的な成長への移行等を訴えた。(3)世界的な政策協力におけるOECDの役割(24日ディナー)
上記(1)同様、OECDの役割等について出席閣僚による自由な意見交換が行われた。(4)グリーン成長:危機の克服とその後(25日午前)
中曽根大臣は、G8外相会合に向かう直前の限られた時間を利用して、本セッションに出席した。大臣は、我が国の経済危機への対応や持続的成長のための構造改革について紹介するとともに、貿易・投資の自由化の促進を強調した。また、各国から危機により深い影響を受ける最貧国の支援の重要性を表明する中で、大臣より最大2兆円規模のODA等我が国の取組について紹介を行った。更に、わが国の温室効果ガス削減の中期目標の意義について明確な説明を行った。
二階大臣を始め各国からは、自国のグリーン成長に向けた取組等を紹介するとともに、グリーン成長宣言の採択を支持する発言が数多くなされた。
(5)貿易・投資のための市場開放維持(25日昼)
保護主義への対抗、ドーハ・ラウンドの早期妥結、貿易金融や「貿易のための援助(Aid for Trade)」の重要性、投資の保護主義のモニターをはじめとして投資分野でのOECDの役割の重要性等の点について意見の一致を見た。
伊藤副大臣からは、産業の立地について、コストの安さのみならず、資源・自然環境等の特色を生かしたより包括的な比較優位も考慮した国際分業のあり方を模索すべきであり、このような適地適産という考え方は環境負荷の低減やグリーン成長にもつながるとの考え方を説明した。貿易のための援助、貿易金融、サービス制限指標策定、投資分野における保護主義的な措置のモニタリング等、各分野におけるOECDの積極的な取組を評価するとともに、投資協定の一貫性を確保するための共通の理解を模索すべき旨主張した。
OECD閣僚理事会の機会に、中曽根大臣はアモリン・ブラジル外相と短時間の会談を行った。また、伊藤副大臣は、ハン・スンス韓国国務総理を表敬し、グリアOECD事務総長、ルー米国務副長官との会談を行った。
(1)日ブラジル外相会談(25日午前)
25日午後のWTO非公式閣僚会合をはじめとしてドーハ・ラウンドの早期妥結に向け、両国が緊密に連携していくことが確認された。
(2)伊藤副大臣によるハン・スンス韓国首相の表敬(24日午前)
日韓EPAについて交渉再開に向けて積極的に取り組むことで意見の一致をみた。また、北朝鮮問題、気候変動問題、海賊対策等国際社会における諸問題についても、両国が一層緊密に連携して取り組んでいくことが確認された。
(3)伊藤副大臣とグリア事務総長の会談(24日夜)
危機への対応及び克服に関しOECDが主導的な役割を果たすことを期待する旨表明し、我が国の取組等を紹介した。グリア事務総長より、OECDの役割の強化にむけた我が国の支持に対する謝意が述べられた。
(4)伊藤副大臣とルー米国務副長官との会談(25日午前)
日米両国がAPEC、国際保健等の分野で協力を進めていくことが確認された。また、「日米保健パートナーシップ」推進のためのアクション・プランを歓迎した。アフガニスタンにおける日米の協力及びパキスタンに対する日本の支援に対し米より謝意が表明され、一層の協力強化につき一致した。