経済

OECD閣僚理事会結論文書(仮訳)

平成21年6月25日

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1. 2009年のOECD閣僚理事会(MCM)にあたり、ハン・スンス韓国国務総理の議長の下、我々閣僚()は、世界中の経済に影響を与えている、世界恐慌以来最も深刻な世界的金融・経済・社会危機の中で集まった。我々は、危機を克服するために必要な全ての措置を実施し、より強く、クリーンで、公正な世界経済の構築へと踏み出すことに合意した。

2. 新規加盟候補5か国(チリ、エストニア、イスラエル、ロシア連邦、及びスロベニア)と、関与強化対象5ヶ国(ブラジル、インド、インドネシア、中華人民共和国、及び南アフリカ)のMCMへの参加は、高く評価され、重要である。

3. 我々は、2008年に「金融・経済危機に対する戦略的対応」に着手して以来、持続可能で健全な回復の実現を助ける、マクロ経済及び構造問題に関する政策分析・提言を行っているOECDの努力を歓迎する。

回復への道

4. 長年にわたる、不均衡な世界的成長と金融セクター及び規制・監督における主要な失敗が、今次危機の根本的な原因である。市場原理に基づく開かれた世界経済の利益を保持するため、我々は、規制をより効果的なものにし、将来の金融危機防止に資する改革を実施する決意を表明する。各国政府と国際機関は、この実現に向け、既に断固たる行動をとりつつある。

5. 我々は多くの課題に直面しつつあり、経済活動は縮小を続けているが、諸国において、安定化の兆しが見え始めたことを歓迎する。我々は、全ての国において今日まで採られている政策対応が、成長と信認に対し良い影響を与えることを確信している。我々は、バランスの取れた持続的な回復を確保するため、共同で支援措置を継続することにコミットする。

6. 回復への計画は、積極的労働市場政策、技能開発、所得支援、効果的な社会的セーフティーネット、年金、教育、及び強化訓練プロジェクト等を含む、最も脆弱な人々への支援を通じて、危機の人的・社会的側面に対応することにより、人々の役に立つべきである。特に、長期的失業につながるような雇用喪失のリスクに対抗し、若年及び高齢労働者のニーズに焦点を当てる予定である。我々は、労働供給を削減するような方法は非生産的であることを過去の経験から学んだ。即ち、長期的に労働供給を拡大するような政策措置の方が実際には望ましい。我々は、「新雇用戦略」の効果的な実施を含む、労働市場・社会政策でのOECDの更なる作業や、9月のOECD労働・雇用大臣会合に期待している。この文脈において、我々は、最近ILOの世界雇用協定が承認されたことに留意する。

7. 我々は、市場の信認を取り戻し、経済活動と雇用に対する危機の影響を緩和するため、多くの緊急的な金融・通貨・財政政策を採ってきた。我々は、これらの手段は、適時かつ効果的に実施され、また長期の潜在成長力を増加し、市民の福利厚生を高めるための、より広い目的と整合的なものであるべきことを再確認する。グローバル経済が政策主導型の回復から自律的な成長へと移行し、より強く、クリーンで、公正な世界経済に貢献できるに、我々は、OECDからOECDの責任分野について支援を受けながら、回復が確保された後、危機に対応するために取られた非常措置を解除するための適切な戦略を準備することの必要性について議論した。こうした出口戦略は国毎に異なるかもしれない。

8. 我々は、危機に取り組むために必要な措置が、多くの国において、公的債務負担をかなり増大させるであろうということを認識している。我々は今次の危機に対応して、迅速に財政政策を調整したように、我々の経済が十分に強固となった後には、財政政策のバランスは財政再建に置かれるべきである。

9. 財市場や労働市場といった分野において、経済の柔軟性や生産性を高めるような構造改革の迅速な実施は、危機による財政悪化や生活水準の低下の防止に不可欠であることを我々は確認する。我々は、OECDが、過去と現在の経済危機から教訓を導き出し、構造改革と成長との関係について、OECDの分析や提言を続けることを歓迎する。我々は同様に、生産性、競争力及び成長力向上に向け、また、世界的課題に対応するためのイノベーションを牽引するための政策ガイダンスの重要な拠り所の一つとして、OECDイノベーション戦略の成果に期待を寄せている。

10. 世界的な繁栄と安定は、世界経済をより強固にし、より機会均等なものにしてこそ達成し得るものであり、それにより、ミレニアム開発目標(MDGs)の最終的な達成につながり、発展途上国の経済は景気後退に対してより強い回復力を持ち、より脆弱でなくなる。現在の景気後退が世界の貧困層と弱者層に与える影響を緩和するための措置を支持し、また発展途上国が世界経済の最終的な回復に参加できるような良い立場を得られることを確保するための努力を進めることが重要である。我々は、援助の量及び効率性、開発に対する政策一貫性及び開発金融に関する我々の公約とコミットメントを再確認する。この関連で、我々は開発援助委員会(DAC)ハイレベル会合により承認された行動計画(Action Plan)を歓迎する。我々は、OECDが発展途上国と共に当該作業を継続するよう促す。

グリーン成長

11. 我々は、経済回復と将来の経済成長が、持続可能な開発と整合的であるよう確保することにコミットする。我々は、現在の危機は、環境、雇用及び経済上の利益を生み出すような極めて必要性の高い改革のための触媒になり得ると確信している。OECD加盟国並びにチリ、エストニア、イスラエル、及びスロベニアが、グリーン成長宣言を承認したのは、この点を念頭に置いてのことである。この宣言では、本年末にコペンハーゲンで開催される国連気候変動会議における、共通だが差異ある責任および各国の能力の原則に従った、野心的、実効的、効率的かつ公平な国際合意に向けたOECDの分析的貢献を歓迎する。さらに、長期的な経済成長と環境の相互関係や、気候変動の経済その他環境に関する課題の分析に関連するOECDの作業を歓迎する。

市場開放の維持

12. 我々は保護主義に対抗しなければならない。貿易及び投資の自由な流れは、持続的な経済成長への回帰と、全ての国々、特に発展途上国の生活水準の向上を確保するために不可欠である。我々は、2009年4月2日のロンドン・サミットにおいて承認されたように、グローバルな貿易・投資の促進及び円滑化のため、開放性、現状維持、ロールバック(既に取られた措置の是正)、無差別にコミットする。各種産業支援については、透明、一時的、かつWTO整合的で、貿易・投資上の歪曲を最小化したものであるべきである。我々は、引き続き関連する分析を行い、最も効率的かつ貿易・投資に対する歪曲が最も少ない政策アプローチを確定するというOECDの役割を歓迎する。我々はまた、OECDに対し、WTOと協力しながら、引き続き発展途上国のために効果的な貿易のための援助を推進するよう求める。

13. 我々は、既になされた進展を土台として、野心的かつバランスのとれた、包括的なドーハ開発ラウンド交渉の妥結が、喫緊に必要であると信じる。我々は、貿易を支えるために、特に新興国市場や発展途上国向けの輸出信用の利用を確保する。我々は、世界金融危機及び輸出信用に関する声明に示されたような、 2009年4月2日のロンドン・サミットにおける輸出信用に関するコミットメントにつき、OECDが果たす役割を歓迎する。

14. 「投資の自由プロジェクト」の下で、全ての参加者は、投資政策に関連する共通の原則と価値の重要性を共有している。我々は、危機から回復するための緊急措置が、開放性、無差別及び現状維持についての国際的なコミットメントを尊重し、内外投資の自由な流れを奨励するという我々の全体的な目的と整合的であることを誓約する。我々は、UNCTAD、WTO及びIMFと協力して、各国の投資措置についてOECDが報告を行うこと、及び「投資の自由プロジェクト」が、我々の国際的なコミットメントの順守を監視することを歓迎する。我々は、国際投資の分野における共通利益の問題について、共有された理解を深めるために協議を続けることを歓迎する。

適切性・健全性・透明性

15. 我々は、責任ある企業行動について改めてコミットすることが、市場の信頼と信認を再構築するために有益であることを考慮する。我々は、適切性、健全性、透明性の原則に固くコミットする。このため、我々は、国際ビジネスや金融の活動にかかる一連の共通基準及びプロセスを策定する必要性に合意する。この目的に向け、我々はレッチェ・フレームワーク及び持続可能な経済活動のための世界憲章に関するOECDの作業を歓迎する。我々は、OECDがコーポレートガバナンスと金融リテラシーに関する取組を強化することを求める。我々は、企業の社会的責任(CSR)の推進を継続するともに、行動指針の重要性を高め民間セクターの責任を明確にするために、「OECD多国籍企業行動指針」のアップデートに関する更なる協議を歓迎する。

16. 我々の腐敗と贈賄との戦いは、引き続き高い優先順位と共有された責任のもとにある。我々は、OECD外国公務員贈賄防止条約や、国連腐敗防止条約に沿った、外国公務員への贈賄に対する刑事法令を含め、国際商取引における腐敗との戦いにおいて強固な行動をとることを慫慂する。我々は、外国公務員への贈賄の捜査及び訴追にあたっては、自国の経済的利益に対する配慮、他国との関係に対する潜在的影響又は関係する自然人若しくは法人がいずれであるかに影響されないことを確保するよう注意深くなければならない。

17. 我々は、OECDによって策定されている租税問題に関する透明性及び効果的な情報交換の原則へのほぼ全世界的なコミットメントがなされたことを歓迎する。我々は、メンバー拡大を含め、透明性と情報交換に関するグローバル・フォーラムの強化を期待する。我々は、グローバル・フォーラム内における断固とした包括的な相互審査の実施及び合意された基準と手法の効果的実施を世界的に確保するための防護措置に関する項目表の策定を支持する。

国際場裏におけるOECDの役割

18. 我々は、新興国や発展途上国、国際機関やその他の国際フォーラムと、より緊密に協力するため、OECDが行ってきた活動を歓迎する。我々は、チリ、エストニア、イスラエル、及びスロベニアのOECD加盟に向けた進展と、ロシア連邦のイニシャル・メモランダム提出を歓迎する。我々は、関与強化プログラムを通した、ブラジル、インド、インドネシア、中華人民共和国、及び南アフリカとOECDの、更なる協力の強化に期待する。


)オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、チリ、チェコ共和国、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイスランド、アイルランド、イスラエル、イタリア、日本、韓国、ルクセンブルク、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ロシア連邦、スロバキア共和国、スロベニア、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、英国、アメリカ合衆国を代表する大臣及び欧州委員会を代表する委員。

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