(1) リトアニアは、91年9月にソ連からの独立を達成した。96年の総選挙では、与党民主労働党が大きく後退し、保守党、キリスト教民主党及び中央同盟連立によるヴァグノリュス政権が成立し、ブラザウスカス大統領(民主労働党)の下、前政権同様EU、NATOへの加盟を目指すとともに、内政では引き続き経済改革に取り組んだ。98年1月アダムクス新大統領が選出され、第二次ヴァグノリウス政権が発足したが、99年5月には大統領との確執から辞任した。その後パクサス・ヴィルニス市長が首相に就任した。
(2) 経済面では、農業、繊維、食品、木材等が主要産業である。ソ連からの独立後、リトアニアは民営化等の経済改革を実施し、市場経済体制推進を図っている。他のバルト諸国に比べその進捗が遅れていたが、96年には物価上昇率が前年比15%と大幅に改善され、経済成長率は94年からプラスに転じた。貿易については95年1月、EUとの自由貿易協定が発効し、西側との貿易が年々増加傾向にあり、現在の主要貿易相手国はロシア、ドイツ等となっている。
(3) 外交面では、政治、経済、安全保障面での欧州への統合のため、EU加盟とNATO加盟を希望するとともに、バルト諸国をはじめとする近隣諸国との友好関係の維持に努めている。98年1月にはワシントンで「米国、エストニア、ラトヴィア、リトアニア間のパートナーシップ憲章(いわゆる米・バルト憲章)」に調印した。この憲章は、米国がバルト三国の防衛に法的義務を負うことを保証するものではないが、バルト三国のNATO加盟に対する熱意を歓迎するとしている。ロシアとの関係では、エストニア、ラトヴィアとは異なりロシア語系住民の比率が低く、ロシア語系住民を巡る問題はない。
(4) 我が国との関係では、96年1月ビルジスキス運輸相、97年5月にブラザウスカス大統領、98年3月にサウダルガス外相が訪日している。
(参考1) 主要経済指標等
- | 90年 | 95年 | 96年 | 97年 | |
人口(千人) | - | 3,715 | 3,709 | 3,706 | |
名目GNP | 総額(百万ドル) | - | 7,070 | 8,455 | 8,360 |
一人当たり(ドル) | - | 1,900 | 2280 | 2,260 | |
経常収支(百万ドル) | - | -614.4 | -722.6 | -981.3 | |
財政収支(百万リタス) | - | -1,274.6 | -1,137.3 | - | |
消費者物価指数 | - | 223.1 | 279.0 | 319.4 | |
DSR(%) | - | 1.3 | 2.9 | 6.0 | |
対外債務残高(百万ドル) | - | 763.4 | 1,226.8 | 1,540.5 | |
為替レート(年平均、1USドル=リタス) | - | 4.000 | 4.000 | 4.000 | |
分類(DAC/国連) | 移行国/- | ||||
面積(千㎞2) | 64.8 |
(参考2) 主要社会開発指標
- | 90年 | 最新年 | - | 90年 | 最新年 | |
出生時の平均余命 (年) |
- | 70(97年) | 乳児死亡率 (1000人当たり人数) |
- | 10(97年) | |
所得が1ドル/日以下 の人口割合(%) |
- | <2(93年) | 5歳未満児死亡率 (1000人当たり人数) |
- | 13(97年) | |
下位20%の所得又は 消費割合(%) |
- | 8.1(93年) | 妊産婦死亡率 (10万人当たり人数) |
- | 13(90-97年平均) | |
成人非識字率(%) | - | 1(95年) | 避妊法普及率 (15-49歳女性/%) |
- | - | |
初等教育純就学率 (%) |
- | - | 安全な水を享受しうる 人口割合(%) |
- | - | |
女子生徒比率 (%) |
初等教育 | - | 48(96年) | 森林面積(1000km2) | - | 20(95年) |
中等教育 | - | 50(96年) |
(1) リトアニアが、民主化、市場経済化へ積極的に取り組んでいること、我が国との関係も良好で、近年着実に進展していることを踏まえ、これまで輸銀による世銀及び欧州復興開発銀行との協調融資及び種々の招聘等の非ODAスキームにより援助を実施してきている。
(2) 96年度より、我が国の有償資金協力、技術協力の対象国とし、96年10月には経済協力政策協議を実施し、先方からは金融市場、健康保険制度、下水処理プラント、クライペダ港の再開発等についての要望があった。97年には、初の開発調査案件として「ビルザイ市・スクオダス市下水処理施設計画」の調査を開始している。技術協力では、96年度より研修員受入を開始、98年度からは専門家派遣を実施している。
年度別・形態別実績 | (単位:億円) |
年度 | 有償資金協力 | 無償資金協力 | 技術協力 | ||||||||||
96 | なし |
なし |
0.03億円
|
||||||||||
97 | なし |
0.50億円
|
0.67億円
|
||||||||||
98 | なし |
なし |
1.74億円
|
||||||||||
98年度 までの 累計 |
なし |
なし |
2.45億円
|
(注)1.「年度」の区分は、有償資金協力は交換公文締結日、無償資金協力及び技術協力は予算年度による。(ただし、96年度以降の実績については、当年度に閣議決定を行い、翌年5月末日までにE/N署名を行ったもの。)
2.「金額」は、有償資金協力及び無償資金協力は交換公文ベース、技術協力はJICA経費実績ベースによる。
(参考) 98年度実施開発調査案件
案件名 |
ビルザイ市・スクオダス市下水道施設改善計画調査 |