(1) 91年12月、ソ連の解体とともに実質的に独立国家となった。独立以降、一貫して民主化路線を進んできており、政情は一応安定している。96年12月の選挙の結果、中道社会民主主義を掲げたルチンスキー最高会議議長が大統領に就任し、穏健な改革を進めている。98年3月の議会選挙では共産党が議席の約4割を占めたが、中道及び中道右派勢力を基盤として、改革路線はかろうじて継続されている。そうした中、99年2月、経済の不振を理由にチュブク内閣が辞職、3月にストゥルザ内閣が成立した。モルドヴァにおける最大の懸案は、ドニエストル川東岸に住むロシア人の独立問題を巡る民族紛争の解決である。この問題は、ロシア軍の介入を招いたが、92年7月、停戦合意が成立し、97年5月には当事者間より関係正常化の覚書が署名され、紛争解決に踏み出した。しかし決着の具体的な目途は立っていない。
(2) 外交面では、94年採択された憲法に中立外交路線が明記されており、西側諸国、旧ソ連諸国と現実的な外交を進めている。中でも隣国であるウクライナ及びルーマニア、そしてロシアとの関係が重要となっている。ルーマニアとは共通の言語体系をもち、歴史的、文化的につながりが深い。しかしルーマニアとの統合問題は、94年3月の国民投票で9割以上が独立を支持したように、現状では実現の見込みは低い。ロシアとの関係は、沿ドニエストル紛争後、依然としてロシア軍が駐留していることもあり、微妙である。また、ウクライナとは国境画定を巡る対立がある。
(3) 経済面では、モルドヴァはGNPの約6割を農業が占めている農業国であり、葡萄を主要作物としている。ソ連崩壊後、ソ連の産業構造に組み込まれていた同国の経済は混乱し、現在の貿易の主要相手国も旧ソ連諸国であるため、貿易量は縮小している。エネル
(参考1) 主要経済指標等
- | 90年 | 95年 | 96年 | 97年 | |
人口(千人) | - | 4,344 | 4,327 | 4,312 | |
名目GNP | 総額(百万ドル) | - | 3,996 | 2,542 | 1,974 |
一人当たり(ドル) | - | 920 | 590 | 460 | |
経常収支(百万ドル) | - | -134.3 | -214.0 | - | |
財政収支(百万ドル) | - | - | - | - | |
消費者物価指数 | - | - | - | - | |
DSR(%) | - | 7.7 | 5.2 | 10.9 | |
対外債務残高(百万ドル) | - | 681 | 844 | 1,040 | |
為替レート(年平均、164ドル=レイ) | - | 4.4958 | 4.6045 | 4.6236 | |
分類(DAC/国連) | 低中所得国/- | ||||
面積(千㎞2) | 33.0 |
(参考2) 主要社会開発指標
- | 90年 | 最新年 | - | 90年 | 最新年 | |
出生時の平均余命 (年) |
- | 68(97年) | 乳児死亡率 (1000人当たり人数) |
- | 20(97年) | |
所得が1ドル/日以下 の人口割合(%) |
- | 6.8(92年) | 5歳未満児死亡率 (1000人当たり人数) |
- | 24(97年) | |
下位20%の所得又は 消費割合(%) |
- | 6.9(92年) | 妊産婦死亡率 (10万人当たり人数) |
- | 23(90-97年平均) | |
成人非識字率(%) | - | 1(95年) | 避妊法普及率 (15-49歳女性/%) |
- | 74(90-98年平均) | |
初等教育純就学率 (%) |
- | - | 安全な水を享受しうる 人口割合(%) |
- | 56(96年) | |
女子生徒比率 (%) |
初等教育 | - | 49(96年) | 森林面積(1000km2) | - | 4(95年) |
中等教育 | - | 52(96年) |
ギー面でもロシアに大きく依存している。また、度重なる洪水、干魃などの大きな被害、更に沿ドニエストル紛争も加わって経済状態は悪化した。1人当たりGNPについては、95年の920ドルから96年590ドル、97年460ドルにまで低下している。失業者の増加、インフレなどの問題を抱えたまま、98年にはロシア経済危機の影響をまともに受け、輸出の低迷、高価なエネルギー輸入により財政赤字が拡大するなど、経済状況は悪化している。
こうした苦しい経済情勢の下で、同国政府は市場経済化に向けての改革を積極的に推進しており、IMF等の国際金融機関と協調しつつ、輸出入規制の緩和、価格自由化、金融財政改革、民営化等の構造調整に努めている。
(4) 我が国との関係では、92年10月にツユ外相、97年12月にグツ副首相、99年1月にタバカル外相が訪日している。
(1) モルドヴァは旧ソ連地域と欧州の間という地政学的重要性を有し、同国における民主化・市場経済化に向けた改革努力はODA大綱の観点からも望ましいものとして、我が国はこうした動きを支援していく方針である。
(2) モルドヴァに対しては、同国が97年1月よりDACリストパート2(移行経済国及びより進んだ開発途上国)からパート1(ODA受取り開発途上国)に移行したことに伴い、我が国のODAによる協力を開始している。
97年7月、我が国はモルドヴァに政策協議団を派遣し、モルドヴァの開発重点分野が、(1)市場経済化支援、(2)保健・医療等の基礎生活分野、(3)農業分野(基盤整備を含む)であることを確認している。これを踏まえ、98年1月には保健医療分野における優良案件を発掘形成するためのプロジェクト形成調査団を派遣し、今後の協力実現に向け取り組みを強化している。
また、94年及び97年の洪水被害に対し無償資金協力を行ったほか、99年度には、キシニョフの母子病院医療機材整備計画支援のために初の一般無償資金協力を行った。技術協力については、行政研修、電気通信、輸出管理などの分野で97年より研修受入を開始している。
(3) モルドヴァに対して我が国は、同国がDACリストパート1に掲載される以前の91年から市場経済化のための研修員、専門家受入れ等の協力を行っているほか、93年以降は計2億ドルの旧ソ連諸国緊急人道支援の一環として、医薬品、医療機器、ワクチンなどを中心に約372万ドルの支援を供与した。
(3)年度別・形態別実績 | (単位:億円) |
年度 | 有償資金協力 | 無償資金協力 | 技術協力 | ||||||||
94 | なし | 0.05億円
|
0.09億円
|
||||||||
95 | なし | なし | なし | ||||||||
96 | なし | なし | なし | ||||||||
97 | なし | 0.05億円
|
0.26億円
|
||||||||
97 | なし | 5.05億円
|
0.71億円
|
||||||||
98 | なし | なし | 1.07億円
|
(注)1.「年度」の区分は、有償資金協力は交換公文締結日、無償資金協力及び技術協力は予算年度による。(ただし、96年度以降の実績については、当年度に閣議決定を行い、翌年5月末日までにE/N署名を行ったもの。)
2.「金額」は、有償資金協力及び無償資金協力は交換公文ベース、技術協力はJICA経費実績ベースによる。