ODAとは? ODA予算・実績

国別援助実績
1991年~1998年の実績
[10] ハンガリー


1.概 説

 (1) 90年4月、ハンガリーで40年ぶりに行われた自由な国会議員選挙の結果、民主主義政権が成立し、平和裡に議会制民主主義への転換が行われた。しかし体制移行後初の非共産党政権となった民主フォーラムは国民の期待に十分応えられず、94年5月の選挙では社会党(旧共産党改革派)が圧勝した。社会党政権はその後市場経済化路線を継承し、緊縮経済政策を実施したため支持率を下げ、98年5月の選挙では若手中心の青年民主同盟が第一党となり、独立小地主党、民主フォーラムとともに保守系のオルバーン連立政権が成立した。青年民主同盟は、ハンガリー社会に色濃く残る社会党の影響力の一掃を目指している。
 (2) 90年の民主政権成立後、市場経済への移行を本格的に開始し、民営化、市場育成を中心とする経済改革を遂行した。この過程で巨額な財政赤字と貿易赤字に直面し、95年3月、これらの不均衡を是正すべく通貨切下げ、輸入課徴金、社会福祉削減等を柱とする緊急経済安定化措置を導入した。同措置は95年以降徐々に成果を見せ、また、好調な輸出に支えられ、貿易赤字は減少に転じた。財政赤字も96年末で緊縮政策実施以前の約半分に減少した。このような状況の下、ハンガリー経済は調整期を経て持続可能な成長軌道に乗りつつある。
 (3) ハンガリーは体制移行後一貫して「西欧への復帰」を最大の外交目標に掲げている。NATOへは99年3月に加盟が実現した。EU加盟については、97年12月の欧州理事会で新規加盟対象国とされ、98年3月に加盟交渉が開始され、農業、運輸、環境分野の課題と取り組んでいる。ロシアとの関係では、同国にエネルギーの約50%を依存しているため、慎重な政策がとられている。
 (4) 90年1月、海部総理大臣(当時)がハンガリーを訪問、また、94年11月には高円宮・同

 (参考1)主要経済指標等

90年 95年 96年 97年
人口(千人) 10,554 10,229 10,193 10,155
名目GNP 総額(百万ドル) 30,047 42,129 44,274 45,760
一人当たり(ドル) 2,780 4,120 4,340 4,510
経常収支(百万ドル) 379 -2,535 -1,689
財政収支(十億フォリント) 16.7 -355.5 -213.1
消費者物価指数(90年=100) 100.0 300.1
DSR(%) 34.3 39.1 41.0 29.7
対外債務残高(百万ドル) 21,277 31,462 27,086 24,373
為替レート(年平均、1USドル=フォリント) 63.206 125.681 152.647 186.789
分類(DAC/国連) 移行国/-
面積(千㎞2 92.3

 (参考2)主要社会開発指標

90年 最新年 90年 最新年
出生時の平均余命
(年)
71 69(97年) 乳児死亡率
(1000人当たり人数)
15 10(97年)
所得が1ドル/日以下
の人口割合(%)
<2(93年) 5歳未満児死亡率
(1000人当たり人数)
16 12(97年)
下位20%の所得又は
消費割合(%)
9.5(93年) 9.7(93年) 妊産婦死亡率
(10万人当たり人数)
15(80-90年平均) 14(90-97年平均)
成人非識字率(%) 1(95年) 避妊法普及率
(15-49歳女性/%)
73(80-90年平均)
初等教育純就学率
(%)
90 97(96年) 安全な水を享受しうる
人口割合(%)
女子生徒比率
(%)
初等教育 49 48(96年) 森林面積(1000km2 17 17(95年)
中等教育 66 50(96年)

妃両殿下、95年4月には河野副総理兼外務大臣(当時)が同国を訪問し、95年12月にはルン首相、97年4月コヴァーチ外相、97年5月ガール国会議長が来日するなど、両国関係は緊密化している。97年10月には7年振りに行われた経団連ミッションの訪問に代表されるように、有望な投資先として我が国財界の関心が強くなっている。


2.我が国の政府開発援助の実績とあり方

 (1) ハンガリーがポーランドと並んで民主化、市場経済への移行の先駆的な役割を果たしていること、我が国との関係も金融、人的交流、本邦企業進出の面で活発化していることや、その開放的な外交政策等を踏まえ、G24の枠組みで西側諸国、国際機関等と協調しつつ、技術協力を中心に文化無償協力、環境分野の有償資金協力を行ってきている。
 (2) ハンガリーへの初の円借款供与となった「ヴァルパロタ地域環境改善計画(地方自治体公益事業)」は、同地域の環境改善のため、上下水道整備及び地域暖房システム整備を行うものである。無償資金協力では91年度から文化無償を開始し、国立劇場等文化施設に対し毎年機材供与を行っている。技術協力は、89年度から本格的に開始され、生産管理、経営管理、環境保全等の分野を中心に研修員の受入れを行っているほか、専門家の派遣、機材供与を実施してきている。また、91年度から青年海外協力隊の派遣を開始した。94年度から生産性向上についての同国に対する初のプロジェクト方式技術協力を開始し、我が国工業分野における生産性向上に関する技術移転を図っている。90年度から開始している開発調査は、環境分野の協力を中心に実施している。


3.政府開発援助実績

 (1) 我が国のODA実績

(支出純額、単位:百万ドル)

暦年 贈   与 政府貸付 合 計
無償資金協力 技術協力 支出総額 支出純額
94
95
96
97
98
-(-)
0.47(4)
0.84(5)
0.79(3)
0.37(2)
7.76(100)
8.57(75)
8.87(51)
8.72(36)
7.11(35)
7.76(100)
9.03(79)
9.70(55)
9.51(39)
7.48(37)

2.35
7.78
14.69
12.57
-(-)
2.35(21)
7.78(45)
14.69(61)
12.57(63)
7.76(100)
11.38(100)
17.48(100)
24.20(100)
20.05(100)
累計 3.25(3) 61.44(60) 64.67(63) 37.79 37.79(37) 102.46(100)

 (注)( )内は、ODA合計に占める各形態の割合(%)。

 (2) 年度別・形態別実績

(単位:億円)

年度 有償資金協力 無償資金協力 技術協力
90年度
までの
累計
なし

なし

3.34億円
研修員受入
専門家派遣
調査団派遣
機材供与
開発調査

144人
1人
15人
86.3百万円
2件

91 なし

0.43億円

国立シンフォニーオーケストラ
に対する楽器

(0.43)


 
4.82億円
研修員受入
専門家派遣
調査団派遣
協力隊派遣
機材供与
開発調査

107人
1人
30人
2人
3.6百万円
3件

92 なし

0.49億円

国立オペラ座に対する音響・視
聴覚機材

(0.49)

9.51億円
研修員受入
専門家派遣
調査団派遣
協力隊派遣
機材供与
開発調査

100人
3人
54人
5人
55.7百万円
3件

93 なし

0.44億円

エトヴェシ・ローランド大学へ
の外国語学習用機材

(0.44)

6.05億円
研修員受入
専門家派遣
調査団派遣
協力隊派遣
機材供与
開発調査

79人
3人
43人
5人
79.0百万円
2件

94 49.14億円
ヴァルパロタ地域環境改善計画
(地方自治体公共事業) (49.14)

0.41億円

国立劇場に対する音響・映像機

(0.41)

3.76億円
研修員受入
専門家派遣
調査団派遣
協力隊派遣
機材供与
プロジェクト技協
開発調査

56人
8人
24人
13人
13.1百万円
1件
2件

95 なし

0.50億円

国立博物館へのマルチメディア
及びAV機材

(0.50)

5.79億円
研修員受入
専門家派遣
調査団派遣
協力隊派遣
機材供与
プロジェクト技協
開発調査

41人
12人
44人
9人
112.6百万円
1件
4件

96 なし

0.95億円

リスト音楽院機材供与
国営テレビ局機材供与

(0.50)
 (0.45)

6.75億円
研修員受入
専門家派遣
調査団派遣
協力隊派遣
機材供与
プロジェクト技協
開発調査

27人
10人
39人
7人
77.5百万円
1件
3件

97  

0.49億円

ヴェスプレム・ペトフィ劇場音
響機材供与

(0.49)

7.12億円
研修員受入
専門家派遣
調査団派遣
協力隊派遣
機材供与
プロジェクト技協
開発調査

25人
4人
32人
19人
70.6百万円
1件
3件

98 なし

0.46億円

サボー・エルヴィン・ブタペス
ト市立図書館視聴覚機材 

(0.46)

5.49億円
研修員受入
専門家派遣
調査団派遣
協力隊派遣
機材供与
プロジェクト技協
開発調査

23人
9人
16人
10人
62.5百万円
1件
1件

98年度
までの
累計
49.14億円 4.17億円 52.64億円
研修員受入
専門家派遣
調査団派遣
協力隊派遣
機材供与
プロジェクト技協
開発調査

602人
51人
297人
70人
560.9百万円
1件
6件

(注)1.「年度」の区分は、有償資金協力は交換公文締結日、無償資金協力及び技術協力は予算年度による。(ただし、96年度以降の実績については、当年度に閣議決定を行い、翌年5月末日までにE/N署名を行ったもの。)
   2.「金額」は、有償資金協力及び無償資金協力は交換公文ベース、技術協力はJICA経費実績ベースによる。

 (参考1) 98年度までに実施済及び実施中のプロジェクト方式技術協力案件案件名

案   件   名 協 力 期 間
バラトン湖環境改善計画調査(第3年次)

95.1~99.12

 (参考2) 98年度実施開発調査案件

案   件   名

バラトン湖環境改善計画調査(第2年次(その1))
バラトン湖環境改善計画調査(第2年次(その2))
ボルショド発電所性能向上・環境保全再建計画調査(第3年次)
バラトン湖環境海瀬改善調査(第3年次)

 



このページのトップへ戻る
前のページへ戻る次のページへ進む目次へ戻る