(1) スロヴェニアは、91年6月、共和国議会が旧ユーゴーからの独立を宣言した。これに伴い旧ユーゴー連邦軍との間で10日間の武力衝突が発生したが、ECの調停により停戦が成立し、EC諸国は92年1月以降国家承認を行った。比較的順調な独立が達成できたのは、スロヴェニアが人口の9割以上をスロヴェニア系住民が占める実質的な「単一民族国家」であったことが幸いしたと言える。92年12月の初の議会選挙及び96年11月の選挙では自由民主主義党を中心とする連立内閣が成立したが、96年の選挙では社会保障を抑えようとする政府への不満を受けた右派の人民党が議席を伸ばしたため、97年2月にはそれまでの連立パートナーであったキリスト教民主党に代わり、人民党及び年金党との間で連立内閣を構成した。
(2) 外交面では、スロヴェニアは旧ユーゴー色を払拭し、民主主義、市場経済に基づく西欧先進国家の仲間入りを果たすことを基本としている。特にEU加盟を最重要目標とし、97年12月の欧州理事会で新規加盟対象国に決定され、21世紀初頭の加盟を目指して加盟交渉を開始している。NATO加盟については「平和のためのパートナーシップ」を締結したが、NATO拡大第一陣の対象国とはならなかったため、第二次拡大における加盟が課題となっている。また、旧ユーゴー諸国との関係では相互に国家承認を済ませているが、在外資産等の承継問題は未解決である。
(3) 経済面では旧ユーゴーの先進工業地域であり、市場経済化に努力を集中するとともに、西側諸国との経済関係強化に力を注いでいる。現在でも対EU貿易が貿易全体の約3分の2を占めている。94年10月にGATT、96年1月に中欧自由貿易協定(CEFTA)に加盟し、現在OECD加盟を申請している。98年の経済成長率は3.8%と経済状況は良好で、1人当たりGDPも9000ドルを超えて中・東欧諸国の中で最高水準に達している。
(参考1) 主要経済指標等
- | 90年 | 95年 | 96年 | 97年 | |
人口(千人) | - | 1,992 | 1,991 | 1,986 | |
名目GNP | 総額(百万ドル) | - | 16,328 | 18,390 | 19,550 |
一人当たり(ドル) | - | 8,200 | 9,240 | 9,840 | |
経常収支(百万ドル) | - | -23.0 | 39.0 | 36.5 | |
財政収支(十億トラル) | - | -6.46 | 1.61 | -43.20 | |
消費者物価指数 | 100.0 | 1,162.5 | - | - | |
DSR(%) | - | - | - | - | |
対外債務残高(百万ドル) | - | - | - | - | |
為替レート(年平均、1USドル=トラル) | - | 118.52 | 135.36 | 159.69 | |
分類(DAC/国連) | 高中所得国/- | ||||
面積(千㎞2) | 20.1 |
(参考2) 主要社会開発指標
- | 90年 | 最新年 | - | 90年 | 最新年 | |
出生時の平均余命 (年) |
- | 73(97年) | 乳児死亡率 (1000人当たり人数) |
- | 5(97年) | |
所得が1ドル/日以下 の人口割合(%) |
- | <2(93年) | 5歳未満児死亡率 (1000人当たり人数) |
- | 6(97年) | |
下位20%の所得又は 消費割合(%) |
- | 9.3(93年) | 妊産婦死亡率 (10万人当たり人数) |
- | 5(90-97年平均) | |
成人非識字率(%) | - | 0x(95年) | 避妊法普及率 (15-49歳女性/%) |
- | - | |
初等教育純就学率 (%) |
- | 95(96年) | 安全な水を享受しうる 人口割合(%) |
- | 98(96年) | |
女子生徒比率 (%) |
初等教育 | - | 49(96年) | 森林面積(1000km2) | - | 11(95年) |
中等教育 | - | 49(96年) |
スロヴェニアに対しては、92年10月、G24が同国を支援対象国に決定したことを受け、我が国は政府開発援助を開始している。スロヴェニアは、一人当たりGDPが高いため、ODAによる資金協力は困難であるが、市場経済移行や環境対策等の分野を中心に、93年度から技術協力により支援を行っている。96年10月には経済協力政策協議を実施した。特に中小企業振興(運輸・保険等サービス産業)及び観光振興が援助重点分野として挙げられている。
(1) 我が国のODA実績 |
(支出純額、単位:百万ドル) |
暦年 | 贈 与 | 政府貸付 | 合 計 | |||
無償資金協力 | 技術協力 | 計 | 支出総額 | 支出純額 | ||
94 95 96 97 98 |
-(-) -(-) -(-) -(-) -(-) |
-(-) 0.14(100) 1.14(100) 0.98(100) 0.78(100) |
-(-) 0.14(100) 1.14(100) 0.98(100) 0.78(100) |
- - - - - |
-(-) -(-) -(-) -(-) -(-) |
-(-) 0.14(100) 1.14(100) 0.98(100) 0.78(100) |
累計 | -(-) | 3.04(100) | 3.04(100) | - | -(-) | 3.04(100) |
(注)( )内は、ODA合計に占める各形態の割合(%)。
(2) 年度別・形態別実績 |
(単位:億円) |
年度 | 有償資金協力 | 無償資金協力 | 技術協力 | ||||||||||
93 | なし |
なし |
0.23億円
|
||||||||||
94 | なし |
なし |
0.18億円
|
||||||||||
95 | なし |
なし |
0.42億円
|
||||||||||
96 | なし |
なし |
1.34億円
|
||||||||||
97 | なし |
なし |
0.38億円
|
||||||||||
98 | なし |
なし |
0.73億円
|
||||||||||
98年度 までの 累計 |
なし |
なし |
3.30億円
|
(注)1.「年度」の区分は、有償資金協力は交換公文締結日、無償資金協力及び技術協力は予算年度による。(ただし、96年度以降の実績については、当年度に閣議決定を行い、翌年5月末日までにE/N署名を行ったもの。)
2.「金額」は、有償資金協力及び無償資金協力は交換公文ベース、技術協力はJICA経費実績ベースによる。