(1) ウクライナは、91年8月24日にソ連邦からの独立を宣言し、同年12月のソ連解体とともに実質的に独立国家となった。94年7月に選出されたクチマ大統領は、独立直後からのインフレや生産低下に対処するため、IMF等国際金融機関と協調路線をとって、経済改革に着手した。96年6月の新憲法制定後、政情は比較的安定しているが、98年3月に選出された議会は保守傾向が強いため、改革路線に若干の影響を与えている。
(2) 経済面では、農業、鉄鋼業が産業の柱である。エネルギーは輸入に頼っており、特に供給の大半をロシアに依存している。輸入、輸出ともに主要相手国は旧ソ連諸国である。市場経済化への改革は、マクロ面では一定の改善が見られたものの、民営化や産業構造改革等ミクロ面での改革は大幅に遅れており、賃金、年金の未払い等の問題が恒常化している。98年には、ロシア金融危機の影響を直接受け、財政赤字拡大への影響のみならず、国際収支悪化の問題が深刻化した。
(3) 西側諸国は、ウクライナに対し、経済改革、非核化、原発の安全性向上等の面での支援を継続している。経済改革については、ウクライナの積極的な改革路線を評価し、その継続を支援しており、94年のナポリ・サミット以降、毎年サミットの場で同国支援の意向が確認されている。非核化についても、先進諸国はソ連から残された核兵器の移送・解体を支援し、96年6月には全ての核兵器の移送・解体が終了した。更に、原発の安全性に関しては、94年のナポリ・サミットで表明されたG7の支援の意向を受けて、95年4月、ウクライナは2000年までにチェルノブイリ原発を閉鎖する旨を表明した。
ウクライナは欧州経済への統合を目指して、EU加盟を最終目標としている。95年には欧州評議会への加盟が認められたが、改革の進展が遅いこともあり、欧州評議会との関係は不調になっている。
(参考1) 主要経済指標等
- | 90年 | 95年 | 96年 | 97年 | |
人口(千人) | - | 51,550 | 50,718 | 50,698 | |
名目GNP | 総額(百万ドル) | - | 84,084 | 60,904 | 52,625 |
一人当たり(ドル) | - | 1,630 | 1,200 | 1,040 | |
経常収支(百万ドル) | - | -1,152 | -1,184 | -1,335 | |
財政収支(百万ドル) | - | - | - | - | |
消費者物価指数 | - | - | - | - | |
DSR(%) | - | 6.6 | 6.1 | 6.6 | |
対外債務残高(百万ドル) | - | 8,390 | 9,499 | 10,901 | |
為替レート(年平均、1USドル=グリブナ) | - | 1.4731 | 1.8295 | 1.8617 | |
分類(DAC/国連) | 移行国/- | ||||
面積(千㎞2) | 579.4 |
(参考2) 主要社会開発指標
- | 90年 | 最新年 | - | 90年 | 最新年 | |
出生時の平均余命 (年) |
- | 69(97年) | 乳児死亡率 (1000人当たり人数) |
- | 14(97年) | |
所得が1ドル/日以下 の人口割合(%) |
- | <2(92年) | 5歳未満児死亡率 (1000人当たり人数) |
- | 17(97年) | |
下位20%の所得又は 消費割合(%) |
- | 4.3(95年) | 妊産婦死亡率 (10万人当たり人数) |
- | 30(90-97年平均) | |
成人非識字率(%) | - | 1(95年) | 避妊法普及率 (15-49歳女性/%) |
- | - | |
初等教育純就学率 (%) |
- | - | 安全な水を享受しうる 人口割合(%) |
- | 55(96年) | |
女子生徒比率 (%) |
初等教育 | - | 49(96年) | 森林面積(1000km2) | 92 | 92(95年) |
中等教育 | - | - |
また、ウクライナは独立後、ロシアとの間に一線を画した独自路線の政策を進めているが、エネルギー供給をロシアに依存していることもあり、外交政策上対ロシア関係は依然重要となっている。
(4) 96年7月に池田外務大臣(当時)がウクライナを訪問、95年3月にクチマ大統領、97年5月及び98年3月にはドヴェンコ外相が訪日している。
(1) ウクライナは旧ソ連地域と欧州の間という地政学的重要性を有しており、同国における民主化・市場経済化に向けた改革努力はODA大綱の観点からも望ましいものとして、我が国はこうした動きを支援していく方針である。
(2) 97年5月ウドヴェンコ外相(当時)訪日の際に池田外務大臣(当時)よりODA供与を検討する旨表明し、同年7月には政策協議ミッションを派遣。我が国ODAを説明したほか、市場経済化、医療保健、環境等の分野における協力のニーズを確認した。その結果を踏まえ、98年4月にプロジェクト形成調査団を派遣し、環境分野での情報収集を行った。また、98年度に国立フィルハーモニーに対する文化無償を供与した。技術協力については、97年度及び98年度に産業政策、財政金融、中小企業等の分野で研修員の受入れを行っている。
(3) なお、我が国はウクライナに対し、ODAによる援助を開始する以前から、チェルノブイリ被災支援を中心とする人道支援や技術支援のほか、非核化支援や原子力安全支援等も行ってきている。
年度別・形態別実績 |
(単位:億円) |
年度 | 有償資金協力 | 無償資金協力 | 技術協力 | ||||||||||
97 | なし |
なし |
0.04億円
|
||||||||||
98 | なし |
0.61億円
|
0.27億円
|
||||||||||
98年度 までの 累計 |
なし |
0.61億円 |
0.30億円
|
(注)1.「年度」の区分は、有償資金協力は交換公文締結日、無償資金協力及び技術協力は予算年度による。(ただし、96年度以降の実績については、当年度に閣議決定を行い、翌年5月末日までにE/N署名を行ったもの。)
2.「金額」は、有償資金協力及び無償資金協力は交換公文ベース、技術協力はJICA経費実績ベースによる。