(1) 第二次大戦後、一党体制が続いていたが、90年に入り東欧の民主化の影響を受けて複数政党制導入等の民主化が進められた。92年3月の選挙後に、戦後初の非共産主義元首として就任したベリシャ大統領(民主党)の政権は、政治の民主化、経済関連等の法体系の整備、経済改革等多くの課題に直面した。96年5月の議会選挙では、引き続き民主党が圧勝した。
97年1月以降、ねずみ講の倒産を発端とする騒乱が南部地域を中心に発生し、首相の辞任にもかかわらず情勢は沈静化しなかったため、4月から人道援助配給の安全確保等のためイタリアを中心とする多国籍防護部隊約6,000名が各地に展開した。6月の総選挙では、旧体制下で政権にあった社会党が圧勝し、7月メイダーニ大統領とナノ首相が選出され、国際社会の支援を受けて国内秩序の回復と経済再建に努めていたが、98年9月、民主党の有力議員が暗殺された事件を契機に反政府運動が起こり、ナノ首相は辞任、後任に社会党のマイコ書記長が首相に就任した。その後11月には新憲法が発布されるなど、混乱は一応収拾されたが、与野党間の対立は続いている。
(2) 外交面では、70年代後半から80年代末までは半鎖国的政策をとってきたが、90年にソ連と、91年には欧米諸国と国交を回復、OSCE(欧州安保協力機構)及び世銀、IMFへ加盟した。その後民主党中心の政権はNATO加盟を申請するなど、親西側路線をとった。社会党のナノ政権は、欧州への統合を目標としつつ、他のバルカン諸国との関係改善にも力を入れた。隣国ユーゴースラヴィアのコソヴォ自治州で9割を占める180万人のアルバニア系住民の問題については、ナノ首相がユーゴーのミロシェヴィッチ大統領と会談するなど穏健な姿勢をとって国内から反発を招いたのに対し、後任のマイコ首相は、コソヴォ・アルバニア系住民自身が決定すべき問題であるとの立場をとっている。
(参考1) 主要経済指標等
- | 90年 | 95年 | 96年 | 97年 | |
人口(千人) | 3,255 | 3,260 | 3,286 | 3,324 | |
名目GNP | 総額(百万ドル) | - | 2,199 | 2,705 | 2,540 |
一人当たり(ドル) | - | 670 | 820 | 760 | |
経常収支(百万ドル) | -118.3 | -11.5 | -107.3 | -272.2 | |
財政収支(十億レク) | - | -20,157 | - | - | |
消費者物価指数 | - | - | - | - | |
DSR(%) | 0.9 | 1.4 | 3.0 | 7.1 | |
対外債務残高(百万ドル) | 348.6 | 643.6 | 672.1 | 706.0 | |
為替レート(年平均、1USドル=レク) | - | 92.70 | 104.50 | 148.93 | |
分類(DAC/国連) | 低所得国/- | ||||
面積(千㎞2) | 27.4 |
(参考2) 主要社会開発指標
- | 90年 | 最新年 | - | 90年 | 最新年 | |
出生時の平均余命 (年) |
72 | 71(97年) | 乳児死亡率 (1000人当たり人数) |
31 |
26(97年) |
|
所得が1ドル/日以下 の人口割合(%) |
- | - | 5歳未満児死亡率 (1000人当たり人数) |
37 | 40(97年) |
|
下位20%の所得又は 消費割合(%) |
- | - | 妊産婦死亡率 (10万人当たり人数) |
- | 28(90-97年平均) | |
成人非識字率(%) | - | - | 避妊法普及率 (15-49歳女性/%) |
- | - | |
初等教育純就学率 (%) |
- | 102(96年) |
安全な水を享受しうる |
- | 76(96年) | |
女子生徒比率 (%) |
初等教育 | - | 48(96年) | 森林面積(1000km2) | 14 | 10(95年) |
中等教育 | - | 49(96年) |
(3) 経済水準は世界でも最も低い諸国に属する。近年は、経済開発のための外国からの設備・技術導入の必要性から、90年に外資導入を決定する等、経済面での門戸開放を進めた。91年には、G24の支援対象国に加えられている。
91年4月の憲法改正により私有制を承認し、またIMFの支援の下、貿易自由化、価格自由化等経済改革努力を行っているが、計画型社会主義体制から市場経済への移行に伴う混乱により国民生活は一時的にはかえって悪化した。しかし、国際機関及びG24諸国等の援助によって、93年以降は徐々にではあるが経済状況はインフレ沈静化、為替レートの安定、農業の生産向上等、回復傾向も見られるようになってきた。対外的には大幅な輸入超過による貿易赤字(毎年4~6億ドル)を抱え、外国援助への依存度は高い。
97年のねずみ講による被害の影響で、93年以来高成長を記録していたGDPも97年にはマイナス8%の成長率となった。国内混乱のため国際社会からの援助は緊急人道支援を除き事実上停止していたが、97年10月にアルバニア支援国会合が開催され、短期資金不足及び中期復興計画に対する国際的な支援が再開されることとなった。また、アルバニア政府は、短期的には外国からの財政支援に頼りつつも、公共事業の雇用創出による貧困緩和を目指している。
アルバニアは、89年にDACリストに加えられ、我が国は90年から援助を開始した。民主化を図りつつも市場指向経済への移行の過程での混乱等により極めて深刻な経済不振に陥っている同国に対し、他の中・東欧諸国と同様に、現在G24諸国と協調して援助を実施している。
94年5月に21億6,600万円(2,000万ドル相当)の円借款(農業セクター調整計画)を行ったほか、同国への経済協力のあり方を検討するため、94年8月に経済協力調査団を派遣した。同国の外貨収入の1/4は水力発電による電力輸出が占めているが、近年、電力システムの老朽化、非効率化が進行していることを踏まえ、我が国は95年度「水力発電所改善計画」、96年度「送配電網整備計画」に対し合わせて約48億円の円借款を供与した。
なお、97年は、3月に起きた国内騒乱のため、我が国の支援は国内被災民に対する緊急無償援助及び研修員受入れにとどまったが、治安情勢の改善を受けて、98年7月に保健医療分野でのプロジェクト形成調査団を派遣し、協力の方向性の検討及び案件の形成
を行った。
99年6月、コソヴォ問題により生じた難民の受け入れ国に対する支援として、我が国はアルバニアに対し、食糧増産援助、ノンプロジェクト無償資金協力の合計13億円を供与した。
(1) 我が国のODA実績 | (支出純額、単位:百万ドル) |
暦年 | 贈 与 | 政府貸付 | 合 計 | |||
無償資金協力 | 技術協力 | 計 | 支出総額 | 支出純額 | ||
94 95 96 97 98 |
-(-) -(-) -(-) 0.11(1) -(-) |
0.61(7) 1.53(38) 2.70(100) 1.67(15) 1.44(54) |
0.61(7) 1.53(38) 2.70(100) 1.78(17) 1.44(54) |
8.24 2.56 - 9.01 1.24 |
8.24(93) 2.56(63) -(-) 9.01(84) 1.24(46) |
8.85(100) 4.08(100) 2.70(100) 10.78(100) 2.67(100) |
累計 | 0.11(0) | 9.01(30) | 9.12(30) | 21.05 | 21.05(70) | 30.14(100) |
(注)( )内は、ODA合計に占める各形態の割合(%)。
(2) DAC諸国、国際機関のODA実績
DAC諸国、ODA NET | (支出純額、単位:百万ドル) |
暦年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | うち日本 | 合 計 | ||||||||||
95 96 97 |
|
|
|
|
|
4.1 2.7 10.8 |
74.8 114.2 100.0 |
国際機関、ODANET | (支出純額、単位:百万ドル) |
暦年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | その他 | 合 計 | ||||||||||
95 |
|
|
|
|
|
4.3 2.8 2.0 |
99.8 103.7 52.8 |
(3) 年度別・形態別実績 | (単位:億円) |
年度 | 有償資金協力 | 無償資金協力 | 技術協力 | ||||||
90年度 までの 累計 |
なし | なし | 0.06億円
|
||||||
91 | なし | 1.00億円
|
0.15億円
|
||||||
92 | なし | なし | 0.24億円
|
||||||
93 | なし | なし | 0.13億円
|
||||||
94 | 21.66億円
|
なし | 0.30億円
|
||||||
95 | 16.81億円
|
なし | 1.63億円
|
||||||
96 |
31.24億円
|
3.00億円
|
3.66億円
|
||||||
97 | なし | 0.85億円
|
0.59億円
|
||||||
98 | なし | 0.10億円
|
1.37億円
|
||||||
98年度 までの 累計 |
69.71億円 | 4.95億円 | 8.13億円
|
(注)( )内は、ODA合計に占める各形態の割合(%)。
(参考) 98年度実施草の根無償資金協力案件
案 件 名 |
ティラナ市「シリ・コドラ」初等学校教育環境改善計画 |