(1) 中南米諸国の中ではハイティ、ニカラグァ等と並んで最も経済開発の遅れている国の一つである。1982年に軍事政権より民政に移管した。93年の選挙で選ばれたレイナ大統領は、軍の民主化において歴史的な業績を残したものの、大規模停電等による低成長率(94年)、インフレ昂進(96年25%)、基礎穀物の不足(96年)等の経済運営の失策により、政権支持率は低迷したままであった。
98年1月に就任したフローレス大統領は、前政権の財政赤字大幅削減の実現を受け、社会的不均衡の是正を伴った経済発展を目指している。
外交面では、基本的に対米関係を重視するが、冷戦後の変化を受け、自立的関係の樹立を目指しており、中米・カリブ諸国、南米諸国との結束を維持・強化している。
(2) 経済面では、農林業を中心とするモノカルチャー型経済であり、農業部門がGDPの約1/4、労働人口の半分以上を占める。高い人口増加率(85-96年平均3.0%)もあり、一人当たりGDPは長期にわたり停滞している。
94年は深刻な電力危機(2月~12月に一日8~9時間停電)等により実質GDP成長率はマイナス1.4%となったが、95年から、IMFと合意の上、財政赤字削減、生産奨励、物価対策、金融自由化等を内容とする新経済政策に取り組み、実質GDP成長率も95~97年は回復基調に乗った。特に97年の経済成長はコーヒー、バナナ、マキーラ(保税加工区)を中心とする輸出の好調に支えられたもので、外貨準備も過去最高の約5億ドルとなり、過去3年連続で25%を超えていたインフレ率も13%台となる等、マクロ経済指標は軒並み好転した。
財政赤字はカジェハス政権(89~93年)からの大きな負の遺産(94年初めで対GDP比11.2%)であったが、新経済政策による税収拡大等により、97年は対GDP比2.5%に抑え
(参考1)主要経済指標等
- | 90年 | 95年 | 96年 | 97年 | |
人口(千人) | 5,119 | 5,924 | 6,101 | 5,986 | |
名目GNP | 総額(百万ドル) | 3,023 | 3,566 | 4,012 | 4,426 |
一人当たり(ドル) | 590 | 600 | 660 | 740 | |
経常収支(百万ドル) | -186.4 | -200.9 | - | - | |
財政収支(百万レンピラ) | -425.7 | -1,326.1 | -1,516.1 | -1,261.3 | |
消費者物価指数(90年=100) | 100.0 | 251.4 | 308.8 | 378.0 | |
DSR(%) | 35.3 | 31.0 | 26.7 | 20.9 | |
対外債務残高(百万ドル) | 3,724 | 4,570 | 4,533 | 4,698 | |
為替レート(年平均、1USドル=レンピラ) | 4.1120 | 9.4710 | 11.7053 | 13.0035 | |
分類(DAC/国連) | 低中所得国/- | ||||
面積(千㎞2) | 111.9 |
(参考2) 主要社会開発指標
- |
90年 | 最新年 | - | 90年 | 最新年 | |
出生時の平均余命(年) | 65 | 70(97年) | 乳児死亡率 (1000人当たり人数) |
63 | 36(97年) | |
所得が1ドル/日以下の人口割合(%) | - | 46.9(92年) |
5歳未満児死亡率 (1000人当たり人数) |
84 | 48(97年) | |
下位20%の所得又は消費割合(%) | 6 | 3.4(9年) |
妊産婦死亡率 (10万人当たり人数) |
220(80-90年平均) | 220(90-97年平均) | |
成人非識字率(%) | 27 | 27(95年) |
避妊法普及率 (15-49歳女性/%) |
35(80-90年平均) | 50(90-98年平均) | |
初等教育純就学率(%) | - | 90(96年) | 安全な水を享受しうる人口割合(%) | 73(88-90年平均) | 77(96年) | |
女子生徒比率(%) | 初等教育 | 49 | 50(96年) | 森林面積(1000km2) | 46 | 41(95年) |
中等教育 | - | - |
られた。一方、累積債務による元利支払いが、予算の約33%(97年度予算)を占め、社会経済政策実施の上で大きな足枷となっている。
(3) 98年11月のハリケーン・ミッチは経済にも大きな打撃を与えた。フローレス政権は国家再建マスタープランを99年4月に作成し、同プランに基づき復興に努めている。
(4) 我が国とは1932年に外交関係が開設され伝統的に友好関係にある。大喪の礼、即位の礼に世界で最初に大統領が参列を表明する等、友好関係はより緊密化している。97年3月には、レイナ大統領、99年7月にはフローレス外相が訪日している。
(1) ホンデュラスは中南米諸国の中で最も開発が遅れた国の一つであり、開発ニーズが高いこと、また、ホンデュラスの安定は中米地域の平和と安定に重要な意義を有していること等を考慮し引き続き援助を実施していく。
(2) 有償資金協力では、79年度以来94年度までに電力、通信、道路の分野のほか、債務繰延べも含め総額約409億円の協力を行っている。93年度には44.81億円の債務繰延べを行った。
無償資金協力では、75年度に初めて食糧援助を行って以来農業、保健・医療等の分野を中心に協力を行っている。また近年は、橋梁等基礎インフラ分野に対する協力も実施している。
技術協力では、農業、通信・放送などの分野を中心に各種形態により協力を行ってきており、特に98年度までの青年海外協力隊員派遣累計は700名で、中南米諸国中第1位でありホンデュラス側の評価も高い。また、プロジェクト方式技術協力を1件実施中である。開発調査については、運輸、保健等の分野で協力を行っている。
(3) 98年11月、ハリケーン・ミッチによりホンデュラスの人口の3分の1に当たる220万人が被災した際には、我が国は国際緊急援助隊として初の自衛隊の派遣を行った。陸上・航空自衛隊員185名のほか、外務省、JICA職員を加え総勢205名の緊急援助隊は、現地の青年海外協力隊員の通訳等の協力の下、首都テグシカルパで医療・防疫活動を2週間実施し、4,031名の診察と約3万m2の防疫を行った。
また、99年2月に復興支援のニーズを見極めるために政策対話ミッションを派遣するとともに、99年度には、被災による医療・栄養状態の悪化に起因する下痢性、急性呼吸器感染症等が子供を中心に蔓延していることを受け、13病院及び510診療所を対象とした「子供の疾病対策計画」に医薬品・冷蔵庫購入資金を無償資金協力として供与するなど、復興支援を行っている。
(1) 我が国のODA実績 |
(支出純額、単位:百万ドル) |
暦年 | 贈 与 | 政府貸付 | 合 計 | |||
無償資金協力 | 技術協力 | 計 | 支出総額 | 支出純額 | ||
94 95 96 97 98 |
16.51(36) 39.89(53) 42.63(67) 21.04(50) 15.70(58) |
18.62(41) 20.05(27) 21.12(33) 18.24(43) 11.31(42) |
35.13(77) 59.95(80) 63.75(100) 39.28(93) 27.01(100) |
10.48 14.84 - 2.75 - |
10.48(23) 14.84(20) -(-) 2.75(7) -(-) |
45.61(100) 74.78(100) 63.75(100) 42.03(100) 27.01(100) |
累計 | 290.35(42) | 193.28(28) | 483.64(70) | 222.15 | 212.05(30) | 695.67(100) |
(注)( )内は、ODA合計に占める各形態の割合(%)。
(2) DAC諸国・国際機関のODA実績
DAC諸国、ODA NET |
(支出純額、単位:百万ドル) |
暦年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | うち日本 | 合 計 | ||||||||||
95 |
|
|
|
|
|
74.8 63.8 42.0 |
232.9 155.2 155.0 |
国際機関、ODANET |
(支出純額、単位:百万ドル) |
暦年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | その他 | 合 計 | ||||||||||
95 |
|
|
|
|
|
14.2 7.5 5.6 |
177.5 201.7 142.5 |
(3) 年度別・形態別実績 |
(単位:億円) |
年度 | 有償資金協力 | 無償資金協力 | 技術協力 | ||
90年度までの累計 |
347.74億円 (内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照 |
193.93億円 (内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照 |
94.51億円
|
||
91 |
なし |
16.80億円 コマヤグァ県地下水開発計画(2/2期)(94) (3.94) |
13.26億円
|
||
92 |
16.69億円 債務繰延べ (16.69) |
20.59億円 病院網強化計画 (10.67) |
23.01億円
|
||
93 |
44.81億円 債務繰延べ (44.81) |
10.50億円 第二保健区農村地帯給水計画(1/2期) (5.20) |
20.87億円
|
||
94 |
なし |
35.66億円 サンペドロスーラ市浄水場整備計画(1/2期) (12.36) |
14.93億円
|
||
95 |
なし |
25.94億円 テグシガルバ市周辺地域供給水計画 (6.24) |
21.57億円
|
||
96 |
なし |
32.43億円 サン・ペドロ・スーラ市浄水場整備計画(2/2期の国債2/2期) (7.07) |
23.47億円
|
||
97 |
25.05億円 債務繰延 (25.05) |
13.41億円 新チョルテカ橋建設計画(国債2/3期) (7.00) |
19.47億円
|
||
98 |
なし |
43.06億円 チョロマ川洪水対策・砂防計画(国債1/3) (4.44) |
15.02億円
|
||
98年度 までの 累計 |
434.29億円 |
492.32億円 |
246.10億円
|
(注)1.「年度」の区分は、有償資金協力は交換公文締結日、無償資金協力及び技術協力は予算年度による。(ただし、96年度以降の実績については、当年度に閣議決定を行い、翌年5月末日までにE/N署名を行ったもの。)
2.「金額」は、有償資金協力及び無償資金協力は交換公文ベース、技術協力はJICA経費実績ベースによる。
3.75年度から90年度までの無償資金協力実績の内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照
(http://www.mofa.go.jp/mofaj/b_v/odawp/index.htm)
(参考1) 98年度までに実施済及び実施中のプロジェクト方式技術協力案件
案件名 | 協力期間 |
農業開発研究センター(85)(88) 看護教育強化 養豚開発計画 灌漑排水技術開発計画(95) |
83.7~92.6 |
(参考2) 98年度実施開発調査案件
案件名 |
テグシガルパ首都圏固形廃棄物管理計画調査(第2年次) |
(参考3) 98年度実施草の根無償資金協力案件
案件名 |
コルテス県南部公立学校教育機材整備計画 プエルト・コルテス市周辺地区農業生産緊急回復計画 エル・チレ橋補強計画 ハリケーン被災者住宅建設計画 北部街道道路修復計画(フェーズ2) 北部街道道路補強計画 電気通信網修復計画 北部街道道路舗装化修復計画(フェーズ3) リオ・チキート橋緊急修復計画 ラス・アメリカ基礎教育学校増築計画 ハポン小学校増設計画 ハリケーン被災者医薬品・食品援助計画 インデペンデンシア小学校及びホセマリア小学校建設計画 |