(1) 1989年、35年にわたるストロエスネル軍事政権は、ロドリゲス将軍のクーデターにより倒壊した。ロドリゲス政権は「民主化と人権尊重」を掲げ、政治活動の自由、言論の自由、労働者の団結権等を保障する新憲法を公布(92年)し、国内政治体制の民主化を進めた。93年に39年ぶりの文民大統領として就任したワスモシ大統領は、人権の尊重、司法権刷新、憲法遵守等、民主化定着の観点から政治的には成果をあげた。
98年8月に就任したクーバス大統領は、新政府の政策として、信頼できる司法制度の確立、富の偏在の排除、インフラ整備等による経済再活性化、犯罪撲滅等を掲げた。しかし、クーバス大統領は、選挙公約のオビエド将軍の釈放手続きをめぐり、最高裁及び国会と対立し、99年3月に国会議事堂前で起きた流血事件の責任を取り辞任した。新大統領にはゴンザレス上院議長が就任し、53年ぶりの連立政権の下、挙国一致の諸改革、腐敗・汚職の追放及び税制改革、民営化、金融システム改善等の経済活性化に取り組む姿勢を打ち出している。
外交面では、中南米諸国との関係を重視し、特にメルコスール諸国とは経済関係のみならず政治関係も強化している。
(2) 経済面では、基本的に農牧林業の生産及び同産品の輸出に依存している。特に綿花及び大豆の輸出が輸出額の半分近くを占めるため、経済成長は両作物の生産状況と国際価格に左右される。
ワスモシ政権は、財政均衡主義を採用してインフレを抑えた反面、赤字歳出削減のための緊縮財政、政局の流動化に伴う民間投資の減少、国内最大手銀行の破綻、綿花の減産等により、96年以降経済停滞が続いている(97年経済成長率は2.6%)。
(3) 我が国とは1919年に外交関係を開設し、1936年には我が国移住者の入植も始まった。
(参考1) 主要経済指標等
- |
90年 | 95年 | 96年 | 97年 | |
人口(千人) | 4,314 | 4,828 | 4,955 | 5,085 | |
名目GNP |
総額(百万ドル) | 4,796 | 8,158 | 9,179 | 10,183 |
一人当たり(ドル) | 1,110 | 1,690 | 1,850 | 2,000 | |
経常収支(百万ドル) | -172.3 | - | - | - | |
財政収支(十億グァラニー) | 189.6 | - | - | - | |
消費者物価指数(90年=100) | 100.0 | 233.1 | 255.9 |
- |
|
DSR(%) | 16.3 | 6.4 | 5.6 | 5.5 | |
対外債務残高(百万ドル) | 2,104 | 2,240 | 2,162 | 2,053 | |
為替レート(年平均、1USドル=グァラニー) | 1,229.8 | 1,970.4 | 2,062.8 | 2,191.0 | |
分類(DAC/国連) | 低中所得国/- | ||||
面積(千㎞2) | 74.4397.3 |
(参考2) 主要社会開発指標
- |
90年 | 最新年 | 90年 | 最新年 | ||
出生時の平均余命(年) | 67 | 70(97年) | 乳児死亡率 (1000人当たり人数) |
41 | 23(97年) | |
所得が1ドル/日以下の人口割合(%) | - |
5歳未満児死亡率 (1000人当たり人数) |
60 | 28(97年) | ||
下位20%の所得又は消費割合(%) | 2.3(95年) | 2.3(95年) |
妊産婦死亡率 (10万人当たり人数) |
300(80-90年平均) | 190(90-97年平均) | |
成人非識字率(%) | 10 | 8(95年) |
避妊法普及率 (15-49歳女性/%) |
45(80-90年平均) | 51(90-98年平均) | |
初等教育純就学率(%) | 95 | 91(96年) | 安全な水を享受しうる人口割合(%) | 34(88-90年平均) | 39(96年) | |
女子生徒比率(%) | 初等教育 | 48 | 48(96年) | 森林面積(1000km2) | 129 | 115(95年) |
中等教育 | 50 | 51(96年) |
パラグァイ在住の約7,000名の移住者及び日系人は、特に農業の発展に大きく貢献しており、パラグァイ社会からの評価も高い。その日系人の存在と我が国の経済技術協力を背景に、二国間関係は非常に良好である。
貿易は、我が国が大豆、木材を輸入する一方、自動車、機械等を輸出しており、我が国の輸出超過が続いている。
(1) 我が国は、パラグァイとの伝統的友好関係、移住者及び日系人の存在等を踏まえて、資金協力、技術協力により援助を行ってきている。
97年7月の経済協力に関する政策協議においては、ワスモシ政権の方針を踏まえた協力の重点分野、実施上の問題点等について政策対話を行った。同政策協議では、同国の基幹産業である農業への支援とともに、保健・医療、人的資源開発、環境面での協力等を重視していくことについて確認した。
(2) 我が国援助を支出純額で見ると、97年までの累計でパラグァイは技術協力の受取国と
しては第10位の地位を占めている。
(3) 有償資金協力では、1959年度にインド、ヴィエトナムに続き、我が国として第三番目の円借款を供与したのをはじめとして、運輸・交通、通信、エネルギー、農業などの分野での協力を実施してきている。
(4) 無償資金協力については、77年度以降、農業、医療、教育、人材育成、通信等の分野を中心に協力を行ってきたが、過去3年間の1人当たりGNPの水準の向上より99年度をもって終了する予定としている。
(5) 技術協力に関しては、農林畜産業をはじめ、通信、保健・医療などの分野におけるプロジェクト方式技術協力、研修員受入れ、専門家及び青年海外協力隊派遣等の協力を実施している。また、開発調査については、農業、運輸・交通分野を中心に協力を行っている。
(1)我が国のODA実績 |
(支出純額、単位:百万ドル) |
暦年 | 贈与 | 政府貸付 | 合計 | |||
無償資金協力 | 技術協力 | 計 | 支出総額 | 支出純額 | ||
94 95 96 97 98 |
9.97(14) 16.20(21) 8.83(21) 7.40(-) 5.52(-) |
34.50(49) 33.84(44) 27.35(66) 26.68(-) 23.69(-) |
44.47(63) 50.04(64) 36.18(88) 34.08(-) 29.20(-) |
58.08 62.99 31.96 22.84 13.94 |
25.84(37) 27.56(36) 5.00(12) -2.69(-) -8.17(-) |
70.31(100) 77.60(100) 41.18(100) 31.41(100) 21.03(100) |
累計 | 151.96(19) | 403.53(50) | 555.48(68) | 526.72 | 257.92(32) | 813.39(100) |
(注)( )内は、ODA合計に占める各形態の割合(%)。
(2)DAC諸国・国際機関のODA実績
DAC諸国、ODA NET |
(支出純額、単位:百万ドル) |
暦年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | うち日本 | 合計 |
95 96 97 |
日本 77.6 日本 41.2 日本 31.4 |
ドイツ 14.2 ドイツ 9.8 ドイツ 20.1 |
スペイン 8.7 スペイン 5.8 スペイン 11.3 |
米国 1.0 米国 2.0 スウェーデン 2.5 |
スウェーデン 1.0 スイス 1.1 米国 2.0 |
77.6 41.2 31.4 |
105.8 62.6 70.1 |
国際機関、ODA NET |
(支出純額、単位:百万ドル) |
暦年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | その他 | 合計 |
95 96 97 |
IDB 18.0 IDB 16.5 IDB 26.1 |
CEC 9.9 UNDP 12.6 UNDP 14.1 |
UNDP 9.6 CEC 2.8 CEC 4.6 |
UNICEF 1.3 WFP 1.5 UNICEF 1.2 |
UNTA 1.3 UNICEF 1.2 UNFPA 1.0 |
0.2 -0.1 -0.8 |
40.4 34.5 46.2 |
(3)年度別・形態別実績
年度 | 有償資金協力 | 無償資金協力 | 技術協力 |
90年度 までの 累計 |
596.81億円 (内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照 |
146.70億円 (内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照 |
309.77億円 研修員受入 1,059人 |
91 | なし |
14.03億円 ラ・コルメナ農村総合整備計画(2/2期) (95)(6.21) |
29.75億円 研修員受入 115人 |
92 | なし |
13.40億円 電気通信学園拡充計画 (9.49) |
38.38億円 研修員受入 123人 |
93 |
32.34億円 衛星通信地球局整備拡充計画 (32.34) |
16.82億円 救急医療機材整備計画 (1.98) |
35.20億円 研修員受入 110人 |
94 |
81.00億円 アスンシオン送配電網整備計画 (81.00) |
11.01億円 第二次イタプア県地方道整備計画 (6.27) |
32.66億円 研修員受入 115人 |
95 |
60.68億円 アスンシオン上水道整備計画 (60.68) |
10.35億円 東部農村地域給水計画 (6.04) |
32.52億円 研修員受入 109人 |
96 |
なし |
8.00億円 東部地域農村給水計画(2/2期) (3.40) |
33.15億円 研修員受入 153人 |
97 |
349.53億円 全国道路整備計画(II) (194.28) |
13.63億円 アスンシオン大学病院日本・パラグァイ友好母子センター建設計画(詳細設計) (0.63) |
30.60億円 研修員受入 131人 |
98 | なし |
8.53億円 アスンシオン大学病院日本・パラグァイ友好母子センター建設計画(国債1/2) (2.50) |
33.34億円 研修員受入 148人 |
98年度までの累計 | 1,120.36億円 |
247.474億円 |
575.35億円 研修員受入 2,063人 |
(注)1.「年度」の区分は、有償資金協力は交換公文締結日、無償資金協力及び技術協力は予算年度による。(ただし、96年度以降の実績については、当年度に閣議決定を行い、翌年5月末日までにE/N署名を行ったもの。) 2.「金額」は、有償資金協力及び無償資金協力は交換公文ベース、技術協力はJICA経費実績ベースによる。 3.59年度から90年度までの有償資金協力及び無償資金協力実績の内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照(http://www.mofa.go.jp/mofaj/b_v/odawp/index.htm) |
(参考1)98年度までに実施済及び実施中のプロジェクト方式技術協力案件
案 件 名 | 協力期間 |
らい対策(91) 職業訓練センター(81)(91) 南部パラグァイ林業開発(83)(86) 南部パラグァイ農業開発(83)(86) 厚生省中央研究所(82)(95) アスンシオン市中央食品卸売市場改善(86) 家畜繁殖(87) 中部パラグァイ森林造成(97) シャガス病等寄生虫症研究 農牧統計強化(96) 主要穀物生産強化 青果物流通改善計画 繊維産業品質管理 電気通信訓練センター 地域保健強化 ピラール南部地域農村開発計画 東部造林普及計画 小農野菜生産技術改善 大豆生産技術研究 職業能力促進センター |
70.12~81.3 78.2~83.2 79.3~87.3 79.3~88.3 80.8~87.8 81.12~88.12 82.12~89.12 87.6~94.12 88.3~93.3 90.3~95.2 90.6~97.3 91.3~98.3 92.2~97.2 92.4~99.3 94.12~99.11 94.7~01.3 96.4~01.4 97.4~02.3 97.10~02.9 97.9~02.9 |
(参考2)98年度実施開発調査案件
案 件 名 |
経済開発調査 アスンシオン首都圏都市交通整備計画アフターケア当査(第2年次) アスンシオン首都圏都市交通整備計画アフターケア当査(第1年次その1) 国道2号・7号線改良計画調査(第1年次) 国道2号・7号線改良計画事前調査(S/W協議)(交通調査) 国道2号・7号線改良計画事前調査(S/W協議)(自然条件/環境) |
(参考3)98年度実施草の根無償資金協力案件
案 件 名 |
移動眼科診療機材供与計画 ペドロ・ファン・カバジェロ青少年センター建設計画 精神病院医療機材等供与計画 児童栄養改善モデル食堂建設計画 プエルタ・デル・ソル小学校教室増築計画 クリニカ日系医療機材供与計画 フェルナンド・デ・ラ・モラ消防隊車両供与計画 パラグァイ消防隊救急車供与計画 身体障害者等施設に対する訓練用機材等供与計画 |