(1) 1979年の革命において中心的役割を担った左翼のサンディニスタ民族解放戦線(FSLN)のオルテガ議長は85年に大統領に就任したが、その後急激に左傾化した同政権に反発した反政府勢力(コントラ)との間で内戦が勃発し、88年に暫定停戦合意が成立した。
90年に国連等の国際監視の下で民主的な大統領選挙が実施され、国民野党連合(UNO)のチャモロ候補がオルテガ候補を破り、オルテガ政権から平和的な政権委譲が実施され、90年4月にチャモロ政権が誕生した。同政権はコントラの武装解除及び軍の削減(約9.8万人より1.57万人へ)を実施し、10年近くに及んだ内戦を終結させた。更に国家再建に取り組み、政治面では国内和解、民主化進展、外交面では、米国、西側諸国との関係修復、国際金融機関への復帰、中米統合プロセスへの参加等大きな成果を収めた。96年10月の大統領選挙の結果、97年1月に自由同盟のアレマン政権が発足した。新政権の最大の課題は、土地所有権問題の解決、経済再建等である。
(2) 経済面では、他の中南米諸国と同様に、農牧業を主体とする経済構造を有しており、農牧業はGDPの約25%を占める。主要な農産物はコーヒー、牛肉、砂糖である。90年のインフレ率は13,490%(88年33,600%)を記録したが、チャモロ政権の経済安定・構造調整計画の成果もあり、91年以降低下し97年は7.3%であった。97年の経済成長は5.0%を達成した。他方、チャモロ政権以降、債務削減に努力しているものの、依然59億ドル(97年末)に達する対外債務や高い失業率、貧困層の増加等解決すべき課題も多い。更に、98年10月末のハリケーン・ミッチは経済に大打撃を与えた。
(3) 94年に開始されたIMFの拡大構造調整融資(ESAF)は、コンディショナリティ不履行のために融資が中断されていたが、98年3月にIMFはESAF(2000年までの3年間で100.9百万SDRの融資)の再開を承認した。
- | 90年 | 95年 | 96年 | 97年 | |
人口(千人) | 3,853 | 4,375 | 4,503 | 4,677 | |
名目GNP | 総額(百万ドル) | - | 1,659 | 1,705 | 1,907 |
一人当たり(ドル) | - | 380 | 380 | 410 | |
経常収支(百万ドル) | -385.2 | -569.5 | -481.2 | -670.5 | |
財政収支(百万コルドバ) | -293 | -69 | -254 | -243 | |
消費者物価指数 | 100.0 | 846.2 | 944.5 | 1,031.4 | |
DSR(%) | 3.9 | 39.5 | 24.0 | 31.7 | |
対外債務残高(百万ドル) | 10.708 | 10,359 | 5,932 | 5.677 | |
為替レート(年平均、IUSドル=コルドバ) | 140.92 | 7.55 | 8.44 | 9.45 | |
分類(DAC/国連) | 低所得国/- | ||||
面積(千㎞2) | 124.4 |
(参考2)主要社会開発指標
- | 90年 | 最新年 | - | 90年 | 最新年 | |
出生時の平均余命 (年) |
65 | 68(97年) |
乳児死亡率 (1000人当たり人数) |
56 | 43(97年) | |
所得が1ドル/日以下 の人口割合(%) |
- | 43.8(93年) | 5歳未満児死亡率 (1000人当たり人数) |
78 | 57(97年) | |
下位20%の所得又は 消費割合(%) |
4.2(93年) | 4.2(93年) | 妊産婦死亡率 (10万人当たり人数) |
- | 160(90-97年平均) | |
成人非識字率(%) | - | 34(95年) | 避妊法普及率 (15-49歳女性/%) |
27(80-90年平均) | 44(90-98年平均) | |
初等教育純就学率 (%) |
75 | 78(96年) | 安全な水を享受しうる 人口割合(%) |
54(80-90年平均) | 62(96年) | |
女子生徒比率 (%) |
初等教育 | 51 | 50(96年) | 森林面積(1000km2) | 60 | 56(95年) |
中等教育 | 58 | 53(96年) |
(4) 我が国とは1935年に外交関係を開設した。91年2月には、チャモロ大統領が、ニカラグァ大統領としては初めて我が国を公式訪問し、両国関係の緊密化に大きく寄与した。
また、94年7月、96年4月にはレアル外相が訪日した。
(1) 内戦状態の終結を受け、チャモロ政権は西側諸国より経済援助を得て経済の再建に取り組んだ。我が国はニカラグァの安定にとって民生の向上、経済の早期回復が極めて重要であり、また、中米の安定が中南米の平和と安定に寄与することを踏まえ、ODA大綱の原則に則り、今後とも民主主義の確立と経済再建に対する同国の努力を積極的に支援する方針である。
ニカラグァにおける開発の現状と課題、開発計画等に関する調査・研究及び94年12月に派遣した経済協力総合調査団及びその後の政策協議等によるニカラグァ側との政策対話を踏まえ、我が国は、対ニカラグァ援助方針として以下を重点分野としている。
(イ)社会開発・貧困対策分野
未だ経済発展の素地が整っていないニカラグァにおいては、経済改革の底支えのためにも保健・医療、教育、低所得者住宅、農業水産振興分野への協力が重要である。
(ロ)社会・経済インフラ
内戦による破壊、長期にわたるメンテナンス不足に加え、ハリケーン・ミッチ(98年10月)に代表される自然災害によりインフラ不足が深刻な状況にあり、道路、橋梁、港湾、灌漑、エネルギー関連等への協力が重要である。
(ハ)環境
持続可能な開発のためには、水供給、下水・排水対策、人口増加率の高い首都圏での廃棄物処理への協力が重要である。
(ニ)民主化・経済安定化支援
我が国は、ニカラグァに対し民主化と経済安定化のための直接的な支援を行ってきたが、今後とも、NGO活動の重要性をも念頭においた草の根無償の活用を継続していく。
我が国は従来ニカラグァに対しては技術協力及び災害援助を中心とした援助を実施してきたが、90年の内戦終結を機に無償資金協力を中心に援助を大幅に拡充しており、現在、同国への援助形態は多岐にわたっている。また、97年6月には、政府ミッションを派遣し、アレマン政権と初の政策協議を行い、94年12月に合意された上記重点分野を引き続き重点分野とすることを確認するとともに、先方より、その中でも農牧、保健・衛生、地方格差是正(低開発地域である大西洋側地域の開発を重視)の取り組みについて要望があった。
(2) 有償資金協力について、我が国は民主政権成立後の経済再建支援のための国際的な資金協力体制作りに積極的に参加しており、構造調整借款のほか、経済復興計画(第二期)に対して94年に38.78億円の円借款供与を行った。
無償資金協力については、90年4月の内戦終結後、民主化支援の観点から大幅に協力を拡充し、医療・保健、基礎インフラ整備を中心に94年度以降毎年40億円を超える援助を実施している。
技術協力については、ニカラグァが内戦状態にあった89年度までは研修員受入れを中心とした協力を行っていたが、90年度以降は研修員受入れを拡充したほか、91年度よりは専門家の派遣を開始した。また91年7月に青年海外協力隊派遣取極を締結し、初の協力隊員を派遣した。開発調査については、都市の環境、交通等の分野で協力を行っている。
(1)我が国のODA実績 |
(支出純額、単位:百万ドル) |
暦年 | 贈 与 | 政府貸付 | 合 計 | |||
無償資金協力 | 技術協力 | 計 | 支出総額 | 支出純額 | ||
94 95 96 97 98 |
25.31(46) 43.64(84) 46.66(66) 42.03(86) 19.95(69) |
9.48(17) 8.24(16) 6.92(10) 7.00(14) 90.7(31) |
34.79(64) 51.87(100) 53.58(76) 49.02(100) 29.03(100) |
19.90 - 16.95 - - |
19.90(36) -(-) 19.95(24) -(-) -(-) |
54.68(100) 51.87(100) 70.52(100) 49.02(100) 29.03(100) |
累計 | 241.50(59) | 57.10(14) | 298.59(73) | 116.65 | 109.57(27) | 408.14(100) |
(注)( )内は、ODA合計に占める各形態の割合(%)。
(2)DAC諸国・国際機関のODA実績
DAC諸国、ODA NET |
(支出純額、単位:百万ドル) |
暦年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | うち日本 | 合 計 | ||||||||||
95 96 97 |
|
|
|
|
|
51.9 70.5 49.0 |
492.1 764.0 258.3 |
国際機関、ODANET |
(支出純額、単位:百万ドル) |
暦年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | その他 | 合 計 | ||||||||||
95 |
|
|
|
|
|
8.9 8.3 8.9 |
164.2 187.5 162.4 |
(3)年度別・形態別実績 |
(単位:億円) |
年度 | 有償資金協力 | 無償資金協力 | 技術協力 | ||||
90年度 までの 累計 |
75.00億円
|
35.98億円
|
5.50億円
|
||||
91 | 97.01億円
|
20.89億円
|
3.59億円
|
||||
92 | なし | 25.32億円
|
6.84億円
|
||||
93 | なし |
28.39億円
レオン市地方道基盤復旧計画 |
7.12億円
|
||||
94 | 38.78億円
経済復興計画(第二期)(38.78)
|
40.99億円
カラソ台地地下水開発計画(2/3期)(5.76) |
7.87億円
|
||||
95 | なし | 41.44億円
初等学校建設計画(0.24) |
7.37億円
|
||||
96 | なし |
50.82億円 |
6.90億円
|
||||
97 | なし | 28.56億円
マナグァ市上水道施設整備計画(国債3/3期)(6.55) |
10.38億円
|
||||
98 | なし | 58.13億円
グラナダ病院建設計画(国債2/2)(1.48) |
11.46億円
|
||||
98年度 までの 累計 |
210.79億円 |
330.52億円 |
67.04億円
|
(注) |
1. | 「年度」の区分は、有償資金協力は交換公文締結日、無償資金協力及び技術協力は予算年度による。(ただし、96年度以降の実績については、当年度に閣議決定を行い、翌年5月末日までにE/N署名を行ったもの。) |
2. | 「金額」は、有償資金協力及び無償資金協力は交換公文ベース、技術協力はJICA経費実績ベースによる。 | |
3. | 72年度から90年度までの有償資金協力及び無償資金協力実績の内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照(http://www.mofa.go.jp/mofaj/b_v/odawp/index.htm) | |
(参考1)98年度実施開発調査案件
案 件 名 |
太平洋岸第2・第4地域農業開発計画調査(第2年次) 首都圏交流網整備計画調査(第2年次) |
(参考2)98年度実施草の根無償資金協力案件
案 件 名 |
サン・ホセ孤児院施設改善支援計画 ホソルテガ飲料水供給支援計画 ヌエバ・ビダ飲料水供給計画 アカウアリンカ足跡博物館整備支援計画 日本ニカラグァ友好病院救急システム改善計画 ブルーフィールズ衛生環境改善支援計画 ヌエバ・ビダ北部地区電化計画 マサヤ婦人職業訓練センター整備計画 ヌエバ・ビダ南部地区電化計画 巡回医療活動用車両供与計画 ヌエバ・ビダ衛生環境改善計画 フロール・デ・サクアンホチェ小学校教育環境改善計画 女性研修センター建設支援計画 孤児院小学校教育インフラ改善支援計画 家畜飼料加工機整備計画 ディリアンバ排水溝修復支援計画 小学校図書供与計画 |