(1) 社会主義を掲げたアジェンデ政権は、73年に軍のクーデターにより倒れ、ピノチェット陸軍司令官を大統領とする政権が成立し、89年の憲法改正、大統領選挙及び上下両院議員選挙を経て、90年に反政府連合の支援を受けたエイルウィン候補が大統領に就任した。
94年に就任したフレイ大統領は、教育の充実強化、生産性の向上、インフラ整備、貧困対策・社会的弱者への福祉政策の充実、行政の効率化、司法制度の改革、医療制度の改善等を国家的課題としている。
(2) 外交面では、チリ経済の国際化、中南米地域における安定した外交関係の構築、平和維持及び民主主義を確保するための活動への参加を外交基本政策に掲げている。特に輸出市場の安定確保・拡大を目指して中南米、米国に比重を置きつつも、94年11月のAPEC正式参加にも示される通り、アジア・太平洋との関係、更には欧州との関係も考慮する多角的経済外交を行っている。96年6月には、メルコスール(南米南部共同市場)と経済補完協定を締結するとともに、カナダ(97年)、メキシコ(99年)と自由貿易協定を締結している。
(3) 経済面では、80年代初めの債務危機を克服し、85~94年の10年間で平均成長率6.4%という高い持続的成長を達成した。97年のチリ経済は、輸出及び投資の伸びに支えられ、実質経済成長率は7.1%に達し、インフレ率も6.0%に抑制された。しかし、98年はアジア経済危機等を契機とする一次産品市況の低迷(銅、林産品等)により実質経済成長は大幅に減速し、98年は3.4%であった。
(4) 我が国との関係は、伝統的に友好的である。また、集団移住は行われたことはないが、ペルー、ボリヴィア等からの再移住が行われ、現在約2,100名の日系人・日本人移住者が
(参考1)主要経済指標等
- | 90年 | 95年 | 96年 | 97年 | |
人口(千人) | 13,177 | 14,225 | 14,419 | 14,622 | |
名目GNP | 総額(百万ドル) | 25,504 | 59,151 | 70,060 | 70,510 |
一人当たり(ドル) | 1,940 | 4,160 | 4,860 | 4,820 | |
経常収支(百万ドル) | -487 | -1,403 | -3,742 | -4,062 | |
財政収支 (十億ペソ) | 74.3 | 667.6 | 657.8 | - | |
消費者物価指数 | 100.0 | 184.5 | 189.5 | 200.5 | |
DSR(%) | 25.9 | 25.5 | 31.5 | 20.4 | |
対外債務残高(百万ドル) | 19,227 | 25,562 | 27,403 | 31,440 | |
為替レート(年平均、1USドル=ペソ) | 304.90 | 396.77 | 412.27 | 419.30 | |
分類(DAC/国連) | 高中所得国/- | ||||
面積(千㎞2) | 748.8 |
(参考2)主要社会開発指標
- | 90年 | 最新年 | - | 90年 | 最新年 | |
出生時の平均余命 (年) |
72 | 75(97年) | 乳児死亡率(1000人当たり人数) | 20 | 11(97年) | |
所得が1ドル/日以下 の人口割合(%) |
- | 15.0(92年) | 5歳未満児死亡率(1000人当たり人数) | 27 | 13(97年) | |
下位20%の所得又は 消費割合(%) |
3.7(89年) | 3.5(94年) | 妊産婦死亡率(10万人当たり人数) | 67(80-90年平均) | 65(90-97年平均) | |
成人非識字率(%) | 7 | 5(95年) | 避妊法普及率(15-49歳女性/%) | 43(80-90年平均) | - | |
初等教育純就学率 (%) |
86 | 88(96年) | 安全な水を享受しうる人口割合(%) | 89(88-90年平均) | 91(96年) | |
女子生徒比率 (%) |
初等教育 | 49 | 49(96年) | 森林面積(1000km2) | 88 | 79(95年) |
中等教育 | 53 | 51(96年) |
在住している。95年11月に前年に続きフレイ大統領がAPEC大阪会合出席のため来日し、96年8月には橋本総理(当時)が訪問した。97年は、日・チリ修好百周年にあたり、8月にフレイ大統領が三度目の来日を行い、9月には常陸宮・同妃両殿下がチリを御訪問している。
我が国との貿易では、我が国が銅鉱、魚介類・飼料、木材・パルプ等を輸入し、自動車、電気・一般機械等を輸出するという関係にあり、とりわけ我が国の輸入の増加が著しい(98年実績で我が国の輸出9.0億ドル、輸入23.8億ドル)。
(1) 我が国は、チリの所得水準が比較的高いことから、技術協力を中心に協力を行ってきており、96年の橋本総理のチリ訪問に際しては、南南協力の一層の支援につき言及した。97年8月の経済協力に関する政策協議において、南南協力支援、環境協力、貧困対策等を重視していくことを確認した。99年6月には、チリの南南協力への支援を更に強化するため、「日本・チリ・パートナーシップ・プログラム(JCPP)」の署名を行い、中南米、カリブ等の開発途上国に対し、日本・チリ両国共同の経済・社会開発支援事業を支援していく基本的枠組が設定された。
(2) 技術協力は、水産、鉱業、保健・医療、環境などの分野を中心に研修員受入れ、専門家派遣等により行っているほか、第三国研修についても積極的に実施している。また、プロジェクト方式技術協力として、現在、環境センター、資源環境研修などの協力を実施中である。また、97年より青年海外協力隊の派遣を開始した。開発調査については、これまでに環境、運輸・交通等の地域開発分野で協力を実施している。有償資金協力では、65年度にリファイナンスを供与して以来、85、87年度に債務繰延べを行い、92年度には上下水道整備、灌漑計画等の案件に対し円借款の供与を行った。無償資金協力については、78年度に初めて「漁業調査船」に対する協力を実施して以来、水産分野及び文化無償を中心に協力を行ってきた。
(1)我が国のODA実績 |
(支出純額、単位:百万ドル) |
暦年 | 贈 与 | 政府貸付 | 合 計 | |||
無償資金協力 | 技術協力 | 計 | 支出総額 | 支出純額 | ||
94 95 96 97 98 |
3.10(10) 13.79(22) 5.17(10) 2.47(6) 0.76(2) |
24.10(77) 24.28(39) 21.54(41) 20.31(47) 16.88(52) |
27.20(87) 38.06(61) 26.70(51) 22.78(53) 17.65(54) |
4.75 26.19 27.20 21.32 15.82 |
4.19(13) 24.69(39) 26.16(49) 20.39(47) 14.96(46) |
31.39(100) 62.75(100) 52.86(100) 43.17(100) 32.61(100) |
累計 | 57.90(15) | 231.08(59) | 288.97(73) | 141.72 | 104.41(27) | 393.35(100) |
(注)( )内は、ODA合計に占める各形態の割合(%)。
(2)DAC諸国・国際機関のODA実績
国際機関、ODANET |
(支出純額、単位:百万ドル) |
暦年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | うち日本 | 合 計 | ||||||||||
95 96 97 |
|
|
|
|
|
62.8 52.9 43.2 |
143.3 182.7 113.1 |
DAC諸国、ODA NET |
(支出純額、単位:百万ドル) |
暦年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | その他 | 合 計 | ||||||||||
95 |
|
|
|
|
|
-3.3 -0.3 -1.9 |
17.6 20.7 23.4 |
(3)年度別・形態別実績 |
(単位:億円) |
年度 | 有償資金協力 | 無償資金協力 | 技術協力 | ||
90年度 までの 累計 |
56.22億円 内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照(http://www.mofa.go.jp/mofaj/b_v/odawp/index.htm) |
53.26億円 内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照(http://www.mofa.go.jp/mofaj/b_v/odawp/index.htm) |
127.06億円
|
||
91 |
なし |
0.92億円 災害緊急援助(土砂崩れ) (10万ドル=0.13) |
16.23億円
|
||
92 |
243.70億円 ラハ・ディギジン灌漑計画 (124.77) |
0.40億円 サンチャゴ市交響楽団に対する楽器 (0.40) |
15.65億円
|
||
93 |
なし |
4.34億円 首都圏水産物市場建設計画(1/2期) (3.65) |
24.03億円
|
||
94 |
なし |
5.13億円 首都圏水産物市場建設計画(2/2期-1) (4.71) |
20.79億円
|
||
95 |
なし |
14.92億円 環境センター機材整備計画 (7.49) |
18.41億円
|
||
96 |
なし |
0.50億円 ホセ・ミゲル・カレーラ国立学校機材供与 (0.50) |
22.13億円
|
||
97 |
なし |
1.11億円 緊急無償洪水災害 (0.11) |
20.74億円
|
||
98 | なし | なし | 18.14億円
|
||
98年度 までの 累計 |
299.92億円 | 80.58億円 | 283.20億円
|
(注)1.「年度」の区分は、有償資金協力は交換公文締結日、無償資金協力及び技術協力は予算年度による。(ただし、96年度以降の実績については、当年度に閣議決定を行い、翌年5月末日までにE/N署名を行ったもの。)
2.「金額」は、有償資金協力及び無償資金協力は交換公文ベース、技術協力はJICA経費実績ベースによる。
3.65年度から90年度までの有償資金協力及び無償資金協力実績の内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照
(http://www.mofa.go.jp/mofaj/b_v/odawp/index.htm)
(参考1)98年度までに実施済及び実施中のプロジェクト方式技術協力案件
案 件 名 | 協力期間 |
胃癌対策 |
77.4~82.3 76.11~83.3 79.10~89.10 83.4~88.3 87.6~91.5 88.7~91.6 89.1~95.12 89.10~94.9 91.1~95.12 92.7~97.7 93.3~99.3 94.7~99.6 95.6~00.5 97.7~02.6 |
(参考2)98年度実施開発調査案件
案 件 名 |
環境配慮型首都近郊農業開発計画調査(第1年次) |