ODAとは? ODA予算・実績

国別援助実績
1991年~1998年の実績
[18]チリ


1.概 説

 (1) 社会主義を掲げたアジェンデ政権は、73年に軍のクーデターにより倒れ、ピノチェット陸軍司令官を大統領とする政権が成立し、89年の憲法改正、大統領選挙及び上下両院議員選挙を経て、90年に反政府連合の支援を受けたエイルウィン候補が大統領に就任した。
94年に就任したフレイ大統領は、教育の充実強化、生産性の向上、インフラ整備、貧困対策・社会的弱者への福祉政策の充実、行政の効率化、司法制度の改革、医療制度の改善等を国家的課題としている。
 (2) 外交面では、チリ経済の国際化、中南米地域における安定した外交関係の構築、平和維持及び民主主義を確保するための活動への参加を外交基本政策に掲げている。特に輸出市場の安定確保・拡大を目指して中南米、米国に比重を置きつつも、94年11月のAPEC正式参加にも示される通り、アジア・太平洋との関係、更には欧州との関係も考慮する多角的経済外交を行っている。96年6月には、メルコスール(南米南部共同市場)と経済補完協定を締結するとともに、カナダ(97年)、メキシコ(99年)と自由貿易協定を締結している。
 (3) 経済面では、80年代初めの債務危機を克服し、85~94年の10年間で平均成長率6.4%という高い持続的成長を達成した。97年のチリ経済は、輸出及び投資の伸びに支えられ、実質経済成長率は7.1%に達し、インフレ率も6.0%に抑制された。しかし、98年はアジア経済危機等を契機とする一次産品市況の低迷(銅、林産品等)により実質経済成長は大幅に減速し、98年は3.4%であった。
 (4) 我が国との関係は、伝統的に友好的である。また、集団移住は行われたことはないが、ペルー、ボリヴィア等からの再移住が行われ、現在約2,100名の日系人・日本人移住者が

 (参考1)主要経済指標等

90年 95年 96年 97年
人口(千人) 13,177 14,225 14,419 14,622
名目GNP 総額(百万ドル) 25,504 59,151 70,060 70,510
一人当たり(ドル) 1,940 4,160 4,860 4,820
経常収支(百万ドル) -487 -1,403 -3,742 -4,062
 財政収支 (十億ペソ) 74.3 667.6 657.8
消費者物価指数 100.0 184.5 189.5 200.5
DSR(%) 25.9 25.5 31.5 20.4
対外債務残高(百万ドル) 19,227 25,562 27,403 31,440
為替レート(年平均、1USドル=ペソ) 304.90 396.77 412.27 419.30
分類(DAC/国連) 高中所得国/-
面積(千㎞2 748.8

 (参考2)主要社会開発指標

90年 最新年 90年 最新年
出生時の平均余命
(年)
72 75(97年) 乳児死亡率(1000人当たり人数) 20 11(97年)
所得が1ドル/日以下
の人口割合(%)
15.0(92年) 5歳未満児死亡率(1000人当たり人数) 27 13(97年)
下位20%の所得又は
消費割合(%)
3.7(89年) 3.5(94年) 妊産婦死亡率(10万人当たり人数) 67(80-90年平均) 65(90-97年平均)
成人非識字率(%) 7 5(95年) 避妊法普及率(15-49歳女性/%) 43(80-90年平均)
初等教育純就学率
(%)
86 88(96年) 安全な水を享受しうる人口割合(%) 89(88-90年平均) 91(96年)
女子生徒比率
(%)
初等教育 49 49(96年) 森林面積(1000km2 88 79(95年)
中等教育 53 51(96年)

在住している。95年11月に前年に続きフレイ大統領がAPEC大阪会合出席のため来日し、96年8月には橋本総理(当時)が訪問した。97年は、日・チリ修好百周年にあたり、8月にフレイ大統領が三度目の来日を行い、9月には常陸宮・同妃両殿下がチリを御訪問している。
 我が国との貿易では、我が国が銅鉱、魚介類・飼料、木材・パルプ等を輸入し、自動車、電気・一般機械等を輸出するという関係にあり、とりわけ我が国の輸入の増加が著しい(98年実績で我が国の輸出9.0億ドル、輸入23.8億ドル)。


2.我が国の政府開発援助の実績とあり方

 (1) 我が国は、チリの所得水準が比較的高いことから、技術協力を中心に協力を行ってきており、96年の橋本総理のチリ訪問に際しては、南南協力の一層の支援につき言及した。97年8月の経済協力に関する政策協議において、南南協力支援、環境協力、貧困対策等を重視していくことを確認した。99年6月には、チリの南南協力への支援を更に強化するため、「日本・チリ・パートナーシップ・プログラム(JCPP)」の署名を行い、中南米、カリブ等の開発途上国に対し、日本・チリ両国共同の経済・社会開発支援事業を支援していく基本的枠組が設定された。
 (2) 技術協力は、水産、鉱業、保健・医療、環境などの分野を中心に研修員受入れ、専門家派遣等により行っているほか、第三国研修についても積極的に実施している。また、プロジェクト方式技術協力として、現在、環境センター、資源環境研修などの協力を実施中である。また、97年より青年海外協力隊の派遣を開始した。開発調査については、これまでに環境、運輸・交通等の地域開発分野で協力を実施している。有償資金協力では、65年度にリファイナンスを供与して以来、85、87年度に債務繰延べを行い、92年度には上下水道整備、灌漑計画等の案件に対し円借款の供与を行った。無償資金協力については、78年度に初めて「漁業調査船」に対する協力を実施して以来、水産分野及び文化無償を中心に協力を行ってきた。


3.政府開発援助実績

(1)我が国のODA実績

(支出純額、単位:百万ドル)

暦年 贈   与 政府貸付 合 計
無償資金協力 技術協力 支出総額 支出純額
94
95
96
97
98
3.10(10)
13.79(22)
5.17(10)
2.47(6)
0.76(2)
24.10(77)
24.28(39)
21.54(41)
20.31(47)
16.88(52)
27.20(87)
38.06(61)
26.70(51)
22.78(53)
17.65(54)
4.75
26.19
27.20
21.32
15.82
4.19(13)
24.69(39)
26.16(49)
20.39(47)
14.96(46)
31.39(100)
62.75(100)
52.86(100)
43.17(100)
32.61(100)
累計 57.90(15) 231.08(59) 288.97(73) 141.72 104.41(27) 393.35(100)

 (注)( )内は、ODA合計に占める各形態の割合(%)。

 (2)DAC諸国・国際機関のODA実績

国際機関、ODANET

(支出純額、単位:百万ドル)

暦年 1位 2位 3位 4位 5位 うち日本 合 計
95
96
97
日本
日本
日本

62.8
52.9
43.2

ドイツ
フランス
ドイツ

44.6
43.5
33.8

フランス
ドイツ
フランス

29.6
43.0
17.4

スペイン
イタリア
オランダ

13.3
11.9
8.5

オランダ
オランダ
ベルギー

10.9
8.3
3.8

62.8
52.9
43.2
143.3
182.7
113.1
DAC諸国、ODA NET

(支出純額、単位:百万ドル)

暦年 1位 2位 3位 4位 5位 その他 合 計

95
96
97

CEC
CEC
CEC

12.1
10.4
11.8

UNDP
UNDP
UNDP

5.0
7.8
10.7

UNTA
UNTA
UNTA

2.5
1.6
1.8

UNICEF
UNICEF
UNICEF

1.0
0.8
0.7

UNHCR
UNHCR
UNHCR

0.4
0.4
0.3

-3.3
-0.3
-1.9
17.6
20.7
23.4

 

 (3)年度別・形態別実績

(単位:億円)

年度 有償資金協力 無償資金協力 技術協力
90年度
までの
累計

56.22億円

内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照(http://www.mofa.go.jp/mofaj/b_v/odawp/index.htm)

53.26億円

内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照(http://www.mofa.go.jp/mofaj/b_v/odawp/index.htm)

127.06億円
研修員受入
専門家派遣
調査団派遣
機材供与
プロジェクト技協
開発調査

870人
438人
692人
3,606百万円
8件
20件

91

なし

0.92億円

災害緊急援助(土砂崩れ) (10万ドル=0.13)
国立サンティアゴ大学付属プラネタリウムに対する視聴覚機材 (0.44)
国立図書館に対するマイクロ・フィルム機材 (0.35)

16.23億円
研修員受入
専門家派遣
調査団派遣
機材供与
プロジェクト技協
開発調査

95人
46人
81人
303百万円
5件
4件

92

243.70億円

ラハ・ディギジン灌漑計画 (124.77)
バルパライソ上下水道整備計画 (54.81)
鉄道修復計画 (64.12)

0.40億円

サンチャゴ市交響楽団に対する楽器 (0.40)

15.65億円
研修員受入
専門家派遣
調査団派遣
機材供与
プロジェクト技協
開発調査

100人
49人
86人
271百万円
5件
4件

93

なし

4.34億円

首都圏水産物市場建設計画(1/2期) (3.65)
災害援助 (0.24)
国営テレビ局に対する教育番組及び編集機材 (0.45)

24.03億円
研修員受入
専門家派遣
調査団派遣
機材供与
プロジェクト技協
開発調査

117人
59人
119人
405百万円
5件
4件

94

なし

5.13億円

首都圏水産物市場建設計画(2/2期-1) (4.71)
国立サンチャゴ大学に対するLL機材 (0.42)

20.79億円
研修員受入
専門家派遣
調査団派遣
機材供与
プロジェクト技協
開発調査

114人
73人
80人
529百万円
6件
4件

95

なし

14.92億円

環境センター機材整備計画 (7.49)
首都圏水産物市場建設計画(国債2/2) (6.96)
文部省に対する視聴覚機材 (0.47)

18.41億円
研修員受入
専門家派遣
調査団派遣
機材供与
プロジェクト技協
開発調査

118人
57人
86人
416百万円
6件
3件

96

なし

0.50億円

ホセ・ミゲル・カレーラ国立学校機材供与 (0.50)

22.13億円
研修員受入
専門家派遣
調査団派遣
機材供与
プロジェクト技協
開発調査

122人
44人
71人
334.1百万円
4件
3件

97

なし

1.11億円

緊急無償洪水災害 (0.11)
チリ大学芸術学部楽器・音響機材供与 (0.50)
アウストラル大学文化センター視聴覚機材供与 (0.50)

20.74億円
研修員受入
専門家派遣
調査団派遣
協力隊派遣
機材供与
プロジェクト技協
開発調査

127人
62人
74人
7人
360.2百万円
5件
2件

98 なし なし 18.14億円
研修員受入
専門家派遣
調査団派遣
協力隊派遣
機材供与
プロジェクト技協
開発調査

147人
42人
70人
18人
170.3百万円
4件
3件

98年度
までの
累計
299.92億円 80.58億円 283.20億円
研修員受入
専門家派遣
調査団派遣
協力隊派遣
機材供与
プロジェクト技協
開発調査

1,810人
870人
1,359人
25人
6,393.3百万円
14件
32件

(注)1.「年度」の区分は、有償資金協力は交換公文締結日、無償資金協力及び技術協力は予算年度による。(ただし、96年度以降の実績については、当年度に閣議決定を行い、翌年5月末日までにE/N署名を行ったもの。)
   2.「金額」は、有償資金協力及び無償資金協力は交換公文ベース、技術協力はJICA経費実績ベースによる。
   3.65年度から90年度までの有償資金協力及び無償資金協力実績の内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照
    (http://www.mofa.go.jp/mofaj/b_v/odawp/index.htm)

 (参考1)98年度までに実施済及び実施中のプロジェクト方式技術協力案件

案   件   名 協力期間

胃癌対策
銅精錬開発
水産養殖(86)(91)
沿岸漁業訓練普及(90)
鉱山公害防止技術(91)(94)
教育テレビ(91)
植物遺伝資源(94)
コンセプシオン大学鉱床学研究センター
消化器がん
ディジタル通信訓練センター
半乾燥地治山緑化計画
資源環境研修センター
チリ国環境センター
貝類増養殖開発

77.4~82.3
76.11~83.3
79.10~89.10
83.4~88.3
87.6~91.5
88.7~91.6
89.1~95.12
89.10~94.9
91.1~95.12
92.7~97.7
93.3~99.3
94.7~99.6
95.6~00.5
97.7~02.6

 (参考2)98年度実施開発調査案件

案   件   名

環境配慮型首都近郊農業開発計画調査(第1年次)
全国橋梁補修整備計画調査フェーズ2(第3年次)
鉱工業プロジェクト形成基礎調査(リーチング工場環境配慮型操業改善計画)(鉱石処理技術)(排水処理技術)



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