(1) コロンビアは憲政100年を誇る民主国家であるが、約40年にわたり左翼ゲリラ勢力との武力抗争が継続しており、国内和平が最大の課題となっている。98年8月、野党保守党のパストラーナ氏が大統領に就任し、国内ゲリラとの和平(99年1月に最大ゲリラ組織FARCとの対話を正式に開始)、雇用創出、財政赤字削減、腐敗防止、前政権の麻薬疑惑で低下した国際的信頼の回復等の課題に取り組んでいる。
(2) 外交面では、中南米の地域統合の活性化に熱心で、アンデス共同体の一員としてメルコスールとの貿易自由化交渉を進めており、最終的には米州自由貿易地域(FTAA)の設立を目指している。近年は従来の欧米志向外交を転換し、日本をはじめとするアジア・太平洋地域との関係強化にも重点を置き、APECへの加盟を強く希望(APEC域内エネルギー協力WGのメンバー)している。
(3) 経済面では、かつてはコーヒー産業を中心とする農業主体の経済であったが、近年は、輸出産品の多角化を推進している。86年からは、原油輸出を開始し、また、石炭、ニッケル等の鉱物資源開発を行っているほか、切り花、バナナ等非伝統的農産品の輸出を伸ばしている。コロンビアは、堅実な経済運営、良好な経済パフォーマンスを背景として、80年代の中南米債務危機にも債務繰延べをせず一貫してプラス成長を記録した。特に、90年代前半はクシアナ油田(90年代に入り発見された有望な大油田(軽質油))関連を中心とする設備投資需要に牽引され、国営企業民営化、諸規制緩和等により5%前後の経済成長を維持した。その後、二大輸出産品であるコーヒー及び石油の価格低迷、アジア経済危機に起因する世界的な不況の影響で、98年の経済成長率は0.6%に減速(1943年以来最低)した。98年11月には経済緊急事態宣言を発し、再建策を実施しているが、未だに効果は現れず、失業率も99年3月には史上最悪の19.5%まで悪化している。一方、インフレ抑制策の推進で、ここ数年間約20%で推移しているインフレを98年は16.7%(83
(参考1)主要経済指標等
- | 90年 | 95年 | 96年 | 97年 | |
人口(千人) | 32,843 | 36,813 | 37,451 | 40,042 | |
名目GNP | 総額(百万ドル) | 40,805 | 70,263 | 80,174 | 87,125 |
一人当たり(ドル) | 1,240 | 1,910 | 2,140 | 2,180 | |
経常収支(百万ドル) | 542 | -4,101 |
-4,754 |
- | |
財政収支(十億ペソ) | -163.7 | -1,939.8 | -3,780.2 | -4,524.2 | |
消費者物価指数(90年=100) | 100.0 | 290.2 | 346.2 |
- |
|
DSR(%) | 40.9 | 29.3 | 34.6 | 26.6 | |
対外債務残高(百万ドル) | 17,222 | 25,048 | 28,900 | 31,777 | |
為替レート(年平均、1USドル=ペソ) | 502.26 | 912.83 | 1,036.69 | 1,140.96 | |
分類(DAC/国連) | 低中所得国/- | ||||
面積(千㎞2) | 1,038.7 |
(参考2) 主要社会開発指標
- |
90年 | 最新年 | - | 90年 | 最新年 | |
出生時の平均余命(年) | 69 | 71(97年) | 乳児死亡率 (1000人当たり人数) |
39 | 24(97年) | |
所得が1ドル/日以下の人口割合(%) | 7.4(91年) |
5歳未満児死亡率 (1000人当たり人数) |
50 | 30(97年) | ||
下位20%の所得又は消費割合(%) | 3.6(91年) | 3.1(95年) |
妊産婦死亡率 (10万人当たり人数) |
200(80-90年平均) | 100(90-97年平均) | |
成人非識字率(%) | 13 | 9(95年) |
避妊法普及率 (15-49歳女性/%) |
65(80-90年平均) | 72(90-98年平均) | |
初等教育純就学率(%) | 73 | 85(96年) | 安全な水を享受しうる人口割合(%) | 88(88-90年平均) | 75(96年) | |
女子生徒比率(%) | 初等教育 | 49 | 49(96年) | 森林面積(1000km2) | 541 | 530(95年) |
中等教育 | 50 | 53(96年) |
年以来最低)に押さえた。
(4) 我が国とは1908年に外交関係を開設し伝統的に友好的な関係にあり、約1,800名(97年10月)の日系人・日本人移住者がいる。89年のバルコ大統領の訪日を契機として日本・コロンビア経済合同委員会が発足し、91年東京における第1回合同会議から回を重ね、99年ボゴタにて第4回合同会議が開催された。94年にはガビリア大統領、95年ペリー蔵相、98年1月メヒーア外相、99年5月パストラーナ大統領が訪日した。
貿易は我が国の大幅な輸出超過であり、98年実績でみると、我が国は自動車、電気機器、鉄鋼等を中心に9.61億ドルの輸出を行い、コーヒー、石炭等3.13億ドルを輸入している。
(1) コロンビアは石炭、石油等の資源に恵まれ、経済運営も比較的堅実で中南米地域における数少ない債務繰延べを行っていない国の一つであること、また、我が国との伝統的友好関係及び近年の二国間関係の一層の緊密化等を考慮し、技術協力を中心とした援助を実施している。99年1月のコロンビアにおける地震災害についても、我が国は緊急物資援助、緊急無償資金協力とともに国際緊急援助隊救助チーム及び医療チームや、インフラ等の復興支援のための専門家等を派遣している。
コロンビアでは治安の悪化から、91年、92年、98年と邦人の誘拐・殺害事件が相次いだことから、現在安全確保の観点から人の派遣を伴う援助は、対象都市・地域を制限して実施している。
(2) 有償資金協力については、居住環境、エネルギー、農業開発分野において協力実績がある。また、コロンビア政府は最近アジア太平洋地域へのアクセス改善を目的とした整備計画を策定しており、我が国の協力に対する期待が高まっている。
無償資金協力については、文化無償、草の根無償が中心であるが、85年度及び90年度には医療分野の一般プロジェクト無償資金協力を行った。94年度及び98年度には地震被害に対する復興、被災者支援を行っている。
技術協力については、援助関係者の安全確保に十分な配慮を払いつつ、保健・医療、農業、鉱工業などの分野で各種形態により協力を行っているほか、交通、環境等の分野で開発調査を実施している。
(1) 我が国のODA実績 |
(支出純額、単位:百万ドル) |
暦年 | 贈与 | 政府貸付 | 合計 | |||
無償資金協力 | 技術協力 | 計 | 支出総額 | 支出純額 | ||
94 95 96 97 98 |
1.17(6) 0.68(2) 0.80(2) 7.28(20) 0.86(3) |
8.59(46) 11.84(34) 9.32(25) 8.13(23) 7.12(25) |
9.77(52) 12.52(36) 10.12(28) 15.42(43) 7.98(28) |
18.36 32.29 35.31 28.18 30.04 |
8.96(48) 22.07(64) 26.48(72) 20.23(57) 20.97(72) |
18.73(100) 34.59(100) 36.60(100) 35.65(100) 28.95(100) |
累計 | 35.67(12) | 146.92(50) | 182.61(62) | 204.92 | 110.77(38) | 293.38(100) |
(注)( )内は、ODA合計に占める各形態の割合(%)。
(2) DAC諸国・国際機関のODA実績
DAC諸国、ODA NET |
(支出純額、単位:百万ドル) |
暦年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | うち日本 | 合 計 | ||||||||||
95 |
|
|
|
|
|
34.6 36.6 35.7 |
160.7 159.8 171.2 |
国際機関、ODANET |
(支出純額、単位:百万ドル) |
暦年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | その他 | 合 計 | ||||||||||
95 |
|
|
|
|
|
-10.1 -5.9 0.6 |
70.9 91.0 102.9 |
(3) 年度別・形態別実績 |
(単位:億円) |
年度 | 有償資金協力 | 無償資金協力 | 技術協力 | ||
90年度までの累計 |
596.43億円 内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照 |
43.01億円 内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照 |
113.17億円
|
||
91 |
なし |
0.54億円 ペレイラ市立劇場に対する音響機材 (0.47) |
12.34億円
|
||
92 |
なし |
0.63億円 災害緊急援助(地震災害) (5万ドル=0.06億円) |
8.82億円
|
||
93 |
なし |
0.82億円 災害援助 (0.24) |
7.97億円
|
||
94 |
なし |
1.08億円 災害援助 (0.58) |
8.55億円
|
||
95 |
76.73億円 アリアリ川流域農業開発計画 (76.73) |
0.77億円 国立コロンビア大学芸術学部に対する楽器 (0.50) |
10.08億円
|
||
96 |
なし |
8.55億円 主要病院医療機材整備計画 (7.51) |
9.12億円
|
||
97 |
なし |
1.27億円 文化庁(コロン劇場)音響・視聴覚機材供与 (0.50) |
9.18億円
|
||
98 |
なし |
1.95億円 緊急無償地震災害 (0.47) |
11.56億円
|
||
98年度までの累計 |
673.16億円 |
58.63億円 |
190.80億円
|
(注)1.「年度」の区分は、有償資金協力は交換公文締結日、無償資金協力及び技術協力は予算年度による。(ただし、96年度以降の実績については、当年度に閣議決定を行い、翌年5月末日までにE/N署名を行ったもの。)
2.「金額」は、有償資金協力及び無償資金協力は交換公文ベース、技術協力はJICA経費実績ベースによる。
3.77年度から90年度までの無償資金協力実績の内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照(http://www.mofa.go.jp/mofaj/b_v/odawp/index.htm)
(参考1) 98年度までに実施済及び実施中のプロジェクト方式技術協力案件
案件名 | 協力期間 |
中央医学研究所(85) マラリア等熱帯性感染症診断技術開発 家族計画・母子保健 傾斜地域かんがい農業開発計画 含金複雑鉱処理技術 |
83.1~86.3 86.10~89.9 85.11~90.11 91.10~97.9 92.3~95.3 |
(参考2) 98年度実施開発調査案件
案件名 |
ボゴタ市クリーナープロダクション技術の推進による産業公害低減調査(第1年次) フケネ湖周辺環境改善計画調査(第1年次) ボゴタ市高速道路バスレーン網建設計画調査(第2年次) ボゴタ市産業廃棄物処理システム改善計画予備調査(製造行程(C/P)) フケネ湖周辺環境改善計画事前調査(S/W協議)(流域管理) フケネ湖周辺環境改善計画事前調査(S/W協議)(水質汚濁対策) |
(参考3) 98年度実施草の根無償資金協力案件
案件名 |
グアヒラ生活用水供給計画 ビチャダ県医療改善計画 アルメニア市貧困街託児所再建計画 ポバジャン市医療改善計画 身体障害児童医療サービス向上計画 カンデラリア医療水準向上計画 パロ川水源保全維持計画 クイティバ村医療改善計画 零細漁民技術革新プログラム ブエナベントゥーラ市医療改善計画 プロビデンシア島医療改善計画 巡回医療改善計画 貧困乳幼児栄養改善計画 スバ市貧困街孤児院拡張計画 食品加工職業訓練工房整備計画 被虐幼母職業訓練計画 知的障害者職業訓練工房整備計画 結核検査改善計画 火傷者救済皮膚バンク創設計画 |