(1) 1822年の独立後、一時期を除き政情は安定せず、クーデターによる政権交代が繰り返されたが、1979年の民政移管後は民主体制が維持されている。98年8月、国民民主党(中道)のマワ前キト市長が大統領に就任した。マワ政権は社会政策も掲げつつ、ネオリベラリズム的な経済政策目標を明確にし、深刻な財政赤字(対GDP7%前後)の改善のため、補助金を廃止や金融取引税の導入を行った。厳しい経済状況が続く中、99年3月には全土でゼネストが実施されたが、その後情勢は落ち着いている。
(2) 外交面では、内政不干渉、民族自決、国家間の平等、軍縮支持などを基本方針とし、米国、欧州、環太平洋諸国との関係強化に力を注いでいる。また、アンデス共同体の加盟国として、アンデス・グループの政治的結束への努力も行っており、特にコロンビア、ヴェネズエラとは密接な関係を有している。ただし、ペルーとの間には国境問題が存在し、95年1月再び軍事衝突が発生したが、関係国の仲介により同年8月に非武装地帯設置に係る合意が成立した。残る諸問題解決のため、97年4月よりブラジリアで協議が開始されたが、国境画定で一時難航した。マワ大統領は、98年8月の就任以降フジモリ・ペルー大統領との直接交渉に乗り出し、リオ議定書保証国(米国、ブラジル、チリ、アルゼンティン)の四大統領の提案に基づき、同年10月最終合意に至り、99年5月には国境の最終画定を終えた。
(3) 経済面では、石油輸出国(92年OPECより脱退)であり、経済は石油に大きく依存するとともに、バナナ、コーヒー、カカオを中心とする農業や水産業が主要な産業となっている。貿易面でも、石油が輸出額の3割以上を占め、水産加工品(主にエビ)、コーヒー、バナナ等の一次産品が残りの輸出のほとんどを占めている。
72年に石油の輸出が始まると、第一次石油危機による原油価格の高騰を受けて石油輸
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90年 | 95年 | 96年 | 97年 | |
人口(千人) | 10,559 | 11,477 | 11,698 | 11,937 | |
名目GNP |
総額(百万ドル) | 10,112 | 15,997 | 17,531 | 18,785 |
一人当たり(ドル) | 960 | 1,390 | 1,500 | 1,570 | |
経常収支(百万ドル) | -360 | -735 | 111 | -743 | |
財政収支(十億スクレ) | 147.6 | -420.2 | -282.8 | -1,165.2 | |
消費者物価指数(90年=100) | 100.0 | 473.2 | 606.8 |
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DSR(%) | 33.0 | 26.5 | 22.7 | -31.0 | |
対外債務残高(百万ドル) | 12,109 | 13,994 | 14,495 | 14,918 | |
為替レート(年平均、164ドル=スクレ) | 767.8 | 2,564.5 | 3,189.5 | 3,998.3 | |
分類(DAC/国連) | 低中所得国/- | ||||
面積(千㎞2) | 276.8 |
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90年 | 最新年 | 90年 | 最新年 | ||
出生時の平均余命(年) | 66 | 70(97年) | 乳児死亡率 (1000人当たり人数) |
60 | 33(97年) | |
所得が1ドル/日以下の人口割合(%) | - | 30.4(94年) |
5歳未満児死亡率 (1000人当たり人数) |
83 | 39(97年) | |
下位20%の所得又は消費割合(%) | 5.4(94年) | 5.4(94年) |
妊産婦死亡率 (10万人当たり人数) |
170(80-90年平均) | 150(90-97年平均) | |
成人非識字率(%) | 14 | 10(95年) |
避妊法普及率 (15-49歳女性/%) |
44(80-90年平均) | 57(90-98年平均) | |
初等教育純就学率(%) | - | 97(96年) | 安全な水を享受しうる人口割合(%) | 58(88-90年平均) | 55(96年) | |
女子生徒比率(%) | 初等教育 | - | 49(96年) | 森林面積(1000km2) | 120 | 111(95年) |
中等教育 | - | - |
出額は急増し、高い経済成長を遂げたが、86年以降、石油価格の下落、87年の地震災害、コーヒー価格の急落、洪水等の影響を受け、経済は深刻な打撃を被った。
近年も、国際石油価格の低落、97~98年のエル・ニーニョ現象に起因する集中豪雨により海岸部を中心に大きな被害が発生するなど、元来の財政赤字に加え、経済的に非常に困難な状況にある。マワ政権の課題は、財政赤字の解消、ガス・電気補助金廃止(IMFの要望)、海岸部州の復興、電気通信会社等の民営化、原油等の伝統的輸出産品に対する過剰依存状況からの脱却等となっている。
(4) 我が国との関係は、伝統的に良好である。94年にドゥラン・バジェン大統領が、95年にはレオロ外相が、98年12月にはドゥラン大統領府官房長官が、99年3月にはアヤラ外相が訪日している。また、93年11月には常陸宮・同妃両殿下がエクアドルを訪問している。
(1) エクアドルは、伝統的に我が国と友好関係にあること、南米諸国の中で開発の遅れている国の一つであり開発需要が大きいこと等を考慮し、無償資金協力及び技術協力を中心とした援助を実施している。98年2月にはプロジェクト確認調査団を派遣し、保健・医療、鉱業、灌漑等の分野における協力を引き続き重視していくことを確認した。
また、99年8月にはエクアドル・ペルー国境地域開発に関するプロジェクト形成調査団を派遣した。
(2) 有償資金協力では、これまでエネルギー分野における協力を行ったほか、電気・通信分野と農業分野に対しても協力を実施、また、債務繰延べも行っている。
無償資金協力では、77年度以来、水産分野での協力を行っているほか、文化無償、災害緊急援助を行っている。また、91年度以降、医療・保健、飲料水供給分野等において一般プロジェクト無償援助を行っている。
技術協力では、行政、通信・放送、水産の分野を中心に各種形態により協力を行っている。また、90年度より海洋研究センターに関するプロジェクト方式技術協力を行った。開発調査については、運輸、鉱工業等の分野で協力実績がある。
(1) 我が国のODA実績 |
(支出純額、単位:百万ドル) |
(注)( )内は、ODA合計に占める各形態の割合(%)。
(2) DAC諸国・国際機関のODA実績
DAC諸国、ODA NET |
(支出純額、単位:百万ドル) |
国際機関、ODA NET |
(支出純額、単位:百万ドル) |
暦年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | その他 | 合計 |
95 96 97 |
IDB 36.7 UNDP 18.3 UNDP 17.4 |
UNDP 14.0 IDB 13.2 CEC 10.5 |
CEC 12.0 CEC 9.4 UNICEF 3.9 |
WFP 4.4 UNICEF 4.7 WFP 1.8 |
UNICEF 2.7 WFP 3.0 UNFPA 1.6 |
8.1 5.3 -2.7 |
77.8 53.9 32.5 |
(3) 年度別・形態別実績 |
(単位:億円) |
年度 |
有償資金協力 | 無償資金協力 | 技術協力 |
90年度までの累計 |
538.24億円 (内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照 |
32.70億円 (内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照 |
50.23億円 研修員受入 438人 |
91 |
なし |
4.62億円 キト及びグアヤキル国立音楽学校に対する楽器 (0.48) |
8.22億円 研修員受入 52人 |
92 |
33.01億円 債務繰延べ (24.47) |
5.63億円 ピチンチャ州地方道整備計画(96) (4.95) |
7.49億円 研修員受入 44人 |
93 |
なし |
16.13億円 主要病院医療機材整備計画(1/2期) (10.74) |
11.34億円 研修員受入 51人 |
94 |
32.07億円 債務繰延べ (23.87) |
17.30億円 主要病院医療機材整備計画(2/2期) (9.41) |
12.40億円 研修員受人 55人 |
95 |
85.76億円 第2次送電線網計画フェーズ・B-2 (85.76) |
15.33億円 東部地域道路整備用機材強化計画 (9.72) |
8.74億円 研修員受入 54人 |
96 |
124.04億円 ポルトビエホ川流域環境改善計画 (124.04) |
20.79億円 キト市南部上水道施設整備計画(国債1/2)(97) (4.57) |
9.36億円 研修員受入 54人 |
97 | なし |
27.14億円 キト市南部上水道施設整備計画(国債2/2期)(97) (13.07) |
8.21億円 研修員受入 57人 |
98 | なし |
5.01億円 ピチンチャ州地下水開発計画(2/2期) (3.81) |
6.25億円 研修員受入 52人 |
98年度までの累計 | 813.12億円 |
144.66億円 |
123.15億円 研修員受入 857人 |
(注)1.「年度」の区分は、有償資金協力は交換公文締結日、無償資金協力及び技術協力は予算年度による。(ただし、96年度以降の実績については、当年度に閣議決定を行い、翌年5月末日までにE/N署名を行ったもの。)
2.「金額」は、有償資金協力及び無償資金協力は交換公文ベース、技術協力はJICA経費実績ベースによる。
3.73年度から90年度までの有償資金協力及び無償資金協力実績の内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照
(http://www.mofa.go.jp/mofaj/b_v/odawp/index.htm)
(参考1) 98年度までに実施済及び実施中のプロジェクト方式技術協力案件
案件名 | 協力期間 |
微生物病研究対策(88)(95) 消化器病研究対策(93) 国立養殖・海洋研究センター計画F/U(93) |
77.4~84.3 86.1~90.12 90.8~97.7 |
(参考2) 98年度実施草の根無償資金協力案件
案件名 |
身障小児リハビリ施設拡充計画 身体障害者自立のためのリハビリ計画 カヤンベ郡巡回医療計画 マナビ州地震災害緊急援助計画 キト市サン・ホセ社会援助後援会診療所医療機材整備計画 エクアドル赤十字社グアヤス州委員会救急車更新計画 救急車更新計画 小学校トイレ改築計画 |