(1) 1958年の大統領選挙により民主政治の基盤が築かれ、二大政党による民主体制が継続していたが、93年の大統領・国会議員選挙の結果、二大政党体制は崩れ、また、大統領も二大政党以外の政党から立候補したカルデラ氏が大統領に当選した。カルデラ政権は、94年初頭の就任前に発生した金融・経済危機への対応もあり、漸次ポピュリスト的な管理経済の色彩を強めた。しかし、96年4月に経済調整政策(アジェンダ・ヴェネズエラ)を発表するとともにIMFと合意に至り、以後経済回復に努めてきたが、97年末以降のアジア経済危機、国際石油価格の低落等により厳しい経済運営を強いられてきた。
98年12月の大統領選挙では、第五共和国運動のチャベス氏(92年のクーデター未遂事件の首謀者)が当選した。チャベス大統領は新憲法の制定を最大の公約に掲げているほか、省庁削減、司法の政治からの独立、前政権の経済自由化政策の維持、債務支払いの履行、徴税機能の強化、海外からの直接投資促進のための法整備、観光業・農業の振興、社会保障制度の整備等を謳っている。
(2) 外交面では、米国との関係を重視しているが、OPEC(石油輸出国機構)の穏健派としてOPEC加盟国間の協調のために努力しているほか、中米、カリブ諸国との関係を重視し、メキシコとともにこれら諸国に特恵的に石油の供与を行うサンホセ協定などを通じて影響力を保持している。更に、アンデス・グループ、リオ・グループとの関係強化に努めている。94年末カルデラ大統領が米州マイアミ・サミットにて提案した「米州汚職防止条約」は、96年3月、カラカスにおいて21か国により署名された。
(3) 経済面では、1910年代以降海外からの空前の石油投資により一転して産油国となり、石油に大きく依存する経済構造となっている。石油部門がGDPの約22%、総輸出額の約66%、公共部門収入の79%(95年)を占めている。石油以外にも、天然ガス、石炭及び
(参考1)主要経済指標等
- |
90年 | 95年 | 96年 | 97年 | |
人口(千人) | 19,738 | 21,671 | 22,311 | 22,777 | |
名目GNP |
総額(百万ドル) | 50,574 | 65,382 | 67,333 | 79,317 |
一人当たり(ドル) | 2,560 | 3,020 | 3,020 | 3,480 | |
経常収支(百万ドル) | 8,279 | 2,014 | 8,824 | 5,999 | |
財政収支(十億ボリヴァール) | 0.9 | -493.9 | 268.6 | - | |
消費者物価指数(90年=100) | 100.0 | 507.4 | 1,094.2 |
1,517.8 |
|
DSR(%) | 23.2 | 21.5 | 16.5 | 31.3 | |
対外債務残高(百万ドル) | 33,170 | 35,842 | 35,347 | 35,542 | |
為替レート(年平均、1USドル=ボリヴァール) | 46.900 | 176.843 | 417.333 | 488.635 | |
分類(DAC/国連) | 低中所得国/- | ||||
面積(千km2) | 882.1 |
(参考2)主要社会開発指標
- |
90年 | 最新年 | - | 90年 | 最新年 | |
出生時の平均余命(年) | 70 | 73(97年) | 乳児死亡率 (1000人当たり人数) |
35 | 21(97年) | |
所得が1ドル/日以下の人口割合(%) | - | 11.8(91年) |
5歳未満児死亡率 (1000人当たり人数) |
43 | 25(97年) | |
下位20%の所得又は消費割合(%) | 3.6(90年) | 4.3(95年) |
妊産婦死亡率 (10万人当たり人数) |
- | 120(90-97年平均) | |
成人非識字率(%) | 12 | 9(95年) |
避妊法普及率 (15-49歳女性/%) |
49(80-90年平均) | - | |
初等教育純就学率(%) | 61 | 84(96年) | 安全な水を享受しうる人口割合(%) | 90(88-90年平均) | 79(96年) | |
女子生徒比率(%) | 初等教育 | 50 | 50(96年) | 森林面積(1000km2) | 457 | 440(95年) |
中等教育 | 58 | 58(96年) |
水力のエネルギー資源並びに金、ダイヤモンド、鉄鉱石、ボーキサイト等の資源も豊富である。また、オリノコ川流域に超重質油(オリノコ・ヘビーオイル)が豊富に存在する。
(4) 96年以降、構造調整政策の進捗及び堅調な石油収入を背景に、インフレ率が96年の103%から97年37.6%へと大幅に低下したほか、GDP成長率(97年5.1%)、財政収支(97年対GDP比2.4%の黒字)、外貨準備高(97年は対前年20億ドル増の173億ドル)、失業率(97年は対前年約1%減の11.1%)等のマクロ経済指標が好転し、国際的信用の回復が図られた。一方、通貨ボリバル高が続き、輸入が拡大し国内製造業の伸びは、GDP成長率の半分に留まっている。今後の大きな課題は、民営化の推進及び構造改革の実施等を通じた民間経済部門の活性化と国民生活の改善である。
(5) 我が国との関係は伝統的に良好である。92年、我が国皇族として初めて皇太子殿下が御訪問されたほか、93年には武藤外務大臣(当時)が訪問、97年2月にはリバス外相が訪日するなど友好関係は進展している。
我が国はヴェネズエラに対し自動車、機械等を主に輸出しており、アルミ地金(全輸入額の6割以上)、石油、鉄鉱石等を輸入している。日本からの対ヴェネズエラ投資は88年より鉄鋼、石油化学、自動車等の分野で大型投資が行われ、投資額は急速に増大した。その後、90年代に入り、我が国のバブル経済の崩壊、ヴェネズエラの金融危機等により投資は停滞したが、96年上半期以降やや持ち直している。
(1) 我が国は、ヴェネズエラとの友好関係、同国が有力な貿易及び投資相手国であることを踏まえ、所得水準が比較的高いことから技術協力を中心に援助を実施している。96年2月にはプロジェクト確認調査団を派遣し、協力の方向性、実施上の問題点等に関する政策対話を行った。同協議においては、優良案件の発掘・形成不足、我が国協力スキームの理解不足を背景として対ヴェネズエラ援助量が低い水準で推移してきたことを踏まえ、案件形成について今後努力していくことを確認した。また、第9次国家開発計画(95~99年)の柱として掲げられている教育水準向上、環境等への協力を重視していくことにつき確認した。
(2) 技術協力では、行政、保健・医療、運輸・交通、社会基盤など幅広い分野で研修員受入れ、専門家派遣等を行っており、また、建設、鉱工業分野で開発調査の実績もある。87年度以降はほぼ毎年文化無償も供与している。
(3) 草の根無償資金協力については、99年度から導入した。
(1) 我が国のODA実績 |
(支出純額、単位:百万ドル) |
暦年 | 贈 与 | 政府貸付 | 合 計 | |||
無償資金協力 | 技術協力 | 計 | 支出総額 | 支出純額 | ||
94 95 96 97 98 |
0.42(-) 0.47(-) 0.43(-) 0.35(-) 0.22(-) |
5.97(-) 6.12(-) 5.98(-) 5.56(-) 3.02(-) |
6.39(-) 6.59(-) 6.41(-) 5.92(-) 3.24(-) |
- - - - - |
-0.09(-) -0.07(-) -0.04(-) -0.04(-) -0.05(-) |
6.30(100) 6.51(100) 6.36(100) 5.88(100) 3.18(100) |
累計 | 3.90(6) | 65.59(94) | 69.50(100) | 1.64 | 0.25(0) | 69.74(100) |
(注)( )内は、ODA合計に占める各形態の割合(%)。
(2)DAC諸国・国際機関のODA実績
DAC諸国、ODA NET |
(支出純額、単位:百万ドル) |
暦年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | うち日本 | 合計 |
95 96 97 |
フランス 8.1 スペイン 7.2 日本 5.9 |
日本 6.5 日本 6.4 ドイツ 5.0 |
スペイン 5.5 フランス 4.6 フランス 3.7 |
ドイツ 5.3 ドイツ 4.5 ベルギー 1.0 |
カナダ 1.0 カナダ 0.9 カナダ 0.9 |
6.5 6.4 5.9 |
29.0 26.0 -1.8 |
国際機関、ODANET |
(支出純額、単位:百万ドル) |
暦年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | その他 | 合計 |
95 96 97 |
CEC 12.1 UNDP 6.3 UNDP 19.0 |
UNDP 5.5 CEC 5.3 CEC 3.5 |
UNTA 2.2 UNICEF 2.0 UNICEF 1.6 |
UNHCR 1.2 IDB 1.7 UNHCR 1.6 |
UNICEF 1.0 UNHCR 1.1 UNTA 1.6 |
-2.3 1.8 0.5 |
19.6 18.2 29.4 |
(3)年度別・形態別実績 |
(単位:億円) |
年度 | 有償資金協力 | 無償資金協力 | 技術協力 |
90年度までの累計 |
なし |
1.82億円 (内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照 |
29.94億円 研修員受入 443人 |
91 |
なし |
なし |
5.45億円 研修員受入 56人 |
92 |
なし |
0.48億円
中央大学に対する音響機材及びビデオ機材 (0.48) |
6.05億円 研修員受入 45人 |
93 |
なし |
0.67億円 災害援助 (0.24) |
5.68億円 研修員受入 44人 |
94 |
なし |
0.44億円
国営ラジオ放送局に対する番組制作用機材 (0.44) |
2.67億円 研修員受入 58人 |
95 |
なし |
0.47億円 教育省に対する教育文化番組制作用機材 (0.47) |
4.42億円 研修員受入 64人 |
96 |
なし |
0.43億円
国立図書館機材供与 (0.43) |
5.72億円 研修員受入 54人 |
97 |
なし |
0.50億円 国立ユースオーケストラ楽器供与 (0.50) |
3.21億円 研修員受入 58人 |
98 |
なし |
0.50億円
テレサ・カレーニョ劇場音響機材 (0.50) |
3.79億円 研修員受入 45人 |
98年度までの累計 |
なし |
5.31億円 |
66.94億円 研修員受入 867人 |
(注)1.「年度」の区分は、有償資金協力は交換公文締結日、無償資金協力及び技術協力は予算年度による。(ただし、96年度以降の実績については、当年度に閣議決定を行い、翌年5月末日までにE/N署名を行ったもの。)
2.「金額」は、有償資金協力及び無償資金協力は交換公文ベース、技術協力はJICA経費実績ベースによる。
3.87年度から90年度までの無償資金協力実績の内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照(http://www.mofa.go.jp/mofaj/b_v/odawp/index.htm)
(参考1)98年度までに実施済及び実施中のプロジェクト方式技術協力案件
案件名 | 協力期間 |
癌対策(84)(90)(95) | 82.4~88.3 |
(参考2)98年度実施開発調査案件
案件名 |
オリノコ川河川総合改修計画調査 |