(1) マラウイ議会党(MCP)による一党制の下で独立以来政権の座に就いていたバンダ大統領に対し、92年3月民主化を求める声が高まり、また、援助国側も、マラウィの民主化の遅れ及び人権状況を理由に人道援助以外の援助の制限を検討する動きを見せた。こうした中、93年6月の国民投票により、複数政党制への以降が決定され、国外亡命者の赦免、終身大統領制の廃止等の民主化措置を実施し、94年5月には複数政党制による独立後初めての大統領選挙及び議会選挙を実施した。その結果、野党統一民主戦線(UDF)が議会選挙で勝利し、ムルジUDF党首が大統領に就任し、政権交替が平和的かつ民主的に行われた。
(2) 外交面では、サハラ以南アフリカ諸国の中で唯一早くから南アと外交関係をもつなど独自の路線をとり、また、領土を巡る緊張もあり、従来周辺国との関係は良好とは言えなかった。しかし、南アの民主化の達成やマラウィの政権交代により、周辺国との関係は改善され、南部アフリカ開発共同体(SADC)諸国との協調を重視している。
(3) 経済面では、農業を基盤としているが(GDPの約40%、労働人口の約85%、輸出の90%)、主要産物であるタバコ、茶、砂糖等の国際価格の動向に左右され、経済基盤は脆弱である。今後の課題として財政赤字の削減、インフレの抑制、経済の多角化等がある。
(4) 我が国は、マラウィからタバコ等を輸入し(98年輸入額4,669万ドル)、同国に自動車等を輸出している(同輸出額2,887万ドル)。
(参考1) 主要経済指標等
- |
90年 | 95年 | 96年 | 97年 | |
人口(千人) | 8,504 | 9,757 | 10,016 | 10,276 | |
名目GNP |
総額(百万ドル) | 1,662 | 1,623 | 1,832 | 2,129 |
一人当たり(ドル) | 200 | 170 | 180 | 210 | |
経常収支(百万ドル) | -86.2 | - | - | - | |
財政収支(百万クワチャ) | -81.4 | - | - | - | |
消費者物価指数(90年=100) | 100.0 | 417.5 | 592.3 | 666.1 | |
DSR(%) | 29.3 | 27.7 | 16.9 | 12.4 | |
対外債務残高(百万ドル) | 1,558 | 2,242 | 2,312 | 2,206 | |
為替レート(年平均、1USドル=クワチャ) | 2.7289 | 15.2837 | 15.3085 | - | |
分類(DAC/国連) | 後発開発途上国/LDC | ||||
面積(千km2) | 94.1 |
(参考2) 主要社会開発指標
- |
90年 | 最新年 | - | 90年 | 最新年 | |
出生時の平均余命 (年) |
48 | 41(97年) | 乳児死亡率 (1000人当たり人数) |
144 | 133(97年) | |
所得が1ドル/日以下 の人口割合(%) |
- | - |
5歳未満児死亡率 (1000人当たり人数) |
253 | 224(97年) | |
下位20%の所得又は 消費割合(%) |
- | - |
妊産婦死亡率 (10万人当たり人数) |
170(80-90年平均) | 620(90-97年平均) | |
成人非識字率(%) | - | 44(95年) |
避妊法普及率 (15-49歳女性/%) |
7(80-90年平均) | 22(90-98年平均) | |
初等教育純就学率 (%) |
54 | 68(96年) |
安全な水を享受しうる 人口割合(%) |
56(88-90年平均) | 60(96年) | |
女子生徒比率 (%) |
初等教育 | 45 | 47(96年) | 森林面積(1000km2) | 35 | 33(95年) |
中等教育 | 35 | 21(96年) |
(1) 我が国は、92年から94年にかけて民主化の遅れ及び人権状況を理由に新規の国際収支支援型の援助を一時停止していたものの、マラウィの民主化・経済改革努力を支援するため、有償資金協力、無償資金協力及び技術協力の各形態により積極的に援助を実施してきた。
97年2~3月には、無償資金協力及び技術協力に関する政策協議を実施した。今後は、農業分野における生産性向上を目的とした農村地域の開発と貧困層の生活環境改善のための基礎生活分野に対する支援(食糧増産、教育、保健・医療、環境保全)を中心に可能性を検討することとし、また、長期的な視点から、構造調整支援に加え、同国の民間活動の活性化と、経済成長のため、電力・通信・運輸等経済基礎インフラ整備に対する支援の可能性を検討する方針である。
(2) 有償資金協力については、空港及び通信施設の整備等に円借款を供与してきたが、近年はプロジェクト案件の実績はない。
無償資金協力については、食糧援助・食糧増産援助をはじめ、農業分野、水供給分野等基礎生活分野を中心に援助を実施している。
同国の構造調整努力を支援するため、98年度までに合計241億円の円借款及び合計26億円のノン・プロジェクト無償資金協力を供与した。
技術協力については、特に青年海外協力隊による協力が早くから進んでおり(隊員派遣数の累計はアフリカ地域で第一位、全世界でも比、マレイシアに次いで第三位)、保健・医療、社会基盤、行政、工業等多岐にわたる分野に隊員が派遣され、同国における評価も高い。また、運輸、保健・医療分野等で開発調査を実施している。
(1) 我が国のODA実績 |
(支出純額、単位:百万ドル) |
暦年 | 贈与 | 政府貸付 | 合計 | |||
無償資金協力 | 技術協力 | 計 | 支出総額 | 支出純額 | ||
94 95 96 97 98 |
18.75(19) 39.11(-) 28.49(45) 8.72(25) 41.37(-) |
10.04(10) 11.93(-) 12.58(20) 12.72(36) 12.30(-) |
28.79(29) 51.04(-) 41.08(64) 21.45(61) 53.66(-) |
72.64 0.11 27.17 20.00 - |
71.46(71) -3.74(-) 22.92(36) 13.69(39) -6.25(-) |
100.26(100) 47.30(100) 63.99(100) 35.13(100) 47.41(100) |
累計 | 239.91(41) | 123.54(21) | 363.45(62) | 255.86 | 221.43(38) | 584.85(100) |
(注)( )内は、ODA合計に占める各形態の割合(%)。
(2) DAC諸国・国際機関のODA実績
DAC諸国、ODA NET |
(支出純額、単位:百万ドル) |
暦年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | うち日本 | 合計 |
95 96 97 |
米国 58.0 英国 83.6 日本 35.1 |
英国 47.7 日本 64.0 ドイツ 32.8 |
日本 47.3 米国 32.0 英国 28.4 |
ドイツ 36.7 ドイツ 31.7 米国 27.0 |
オランダ 8.7 デンマーク 15.2 デンマーク 17.7 |
47.3 64.0 35.1 |
220.9 263.9 174.0 |
国際機関、ODANET |
(支出純額、単位:百万ドル) |
暦年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | その他 | 合計 |
95 96 97 |
CEC 76.2 IDA 132.8 IDA 98.1 |
IDA 66.2 CEC 43.2 AfDF 29.5 |
WFP 26.9 AfDF 15.3 CEC 28.5 |
AfDF 15.8 UNDP 11.6 UNDP 12.5 |
UNDP 9.8 WFP 8.0 UNICEF 6.7 |
18.4 25.3 0.9 |
213.3 236.1 176.2 |
(3) 年度別・形態別実績 |
(単位:億円) |
年度 | 有償資金協力 | 無償資金協力 | 技術協力 |
90年度までの累計 |
213.33億円 (内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照 |
101.65億円 (内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照 |
76.47億円 研修員受入 116人 |
91 | なし |
24.09億円 穀物倉庫建設計画(96) (4.41) |
6.98億円 研修員受入 18人 |
92 | なし |
20.92億円
ムチンジ地下水開発計画(1/3期)(96) (6.46) |
9.03億円 研修員受入 24人 |
93 |
74.36億円
企業家育成・旱魃対策計画 (74.36) |
22.45億円 ムチンジ地下水開発計画(2/3期)(96) (2.37) |
10.27億円 研修員受入 21人 |
94 | なし |
19.39億円
リロングウェ市下水道整備計画(国債1/3期) (4.64) |
8.50億円 研修員受入 40人 |
95 | なし |
31.04億円 リロングウェ市下水道整備計画(国債2/3期) (15.52) |
12.31億円 研修員受入 39人 |
96 |
53.76億円
財政改革・規制緩和計画 (53.76) |
24.29億円
食糧増産援助 (4.00) |
14.25億円 研修員受入 50人 |
97 | なし |
45.10億円 ムジンバ西地区給水計画(国債13期) (6.33) |
15.35億円 研修員受入 69人 |
98 | なし |
31.51億円
ブワンジェバレー灌漑開発計画(国債2/3) (9.90) |
16.77億円 研修員受入 96人 |
98年度までの累計 | 341.36億円 | 320.43億円 |
169.93億円 研修員受入 473人 |
(注)1.「年度」の区分は、有償資金協力は交換公文締結日、無償資金協力及び技術協力は予算年度による。(ただし、96年度以降の実績については、当年度に閣議決定を行い、翌年5月末日までにE/N署名を行ったもの。)
2.「金額」は、有償資金協力及び無償資金協力は交換公文ベース、技術協力はJICA経費実績ベースによる。
3.77年度から90年度までの無償資金協力実績の内訳は、1997年版のODA白書参照、もしくはホームページ参照(http://www.mofa.go.jp/mofaj/b_v/odawp/index.htm)
(参考1) 98年度までに実施済及び実施中のプロジェクト方式技術協力案件
案 件 名 | 協力期間 |
公衆衛生 在来種増養殖研究計画 |
94.9~00.8 96.4~99.3 |
(参考2) 98年度実施開発調査案件
案 件 名 |
プライマリヘルスケア強化計画調査(第1年次) シレ川中流域森林保全計画事前調査(S/W協議) |
(参考3) 98年度実施草の根無償資金協力案件
案 件 名 |
ンカタベイ女子中学校設備支援計画 ンコタコタ公設市整備計画 ブランタイアー橋修復・建設計画 村落女性・子供福祉向上計画 ロビ地区青果物輸送支援計画 聖ルーカス病院薬局建設計画 ドーワ・村落給水計画 ムルングジ住民生活向上計画 ムランジェ・ミッション病院男性病棟整備整備計画 マガワ中等学校設備整備計画 リロングエ西部エイズ防止教育支援計画 |