3.2.2 インフラ整備(電力・運輸等)
(1)日本の援助実績
1)インフラ分野全体
ベトナム国のインフラ整備に対する日本のこれまでの援助は、日本の対越援助において最も重要な位置を占めてきたと言える。援助額では、インフラ分野に対しては1991年度から2000年度の間に総額で5,477.10億円の有償資金協力が行われており(交換公文ベース)、これは対越有償資金協力全体の実に約84%を占めている。また、無償資金協力に関しても、1991年から1999年度の間にインフラ分野に対して総額で60.86億円の援助が行われており(交換公文ベース)、これは対越無償資金協力全体の約12%を占めている。
開発調査やプロジェクト方式技術協力をはじめとする技術協力も多数実施されているが、インフラ分野に対する援助は、施設整備については有償資金協力を中心に行われている。1991年度以降の実績を分野別に見ると、運輸セクターでは、道路・橋梁の建設および復旧・改善と港湾の復旧・拡張が有償資金協力を中心に行われている。無償資金協力による援助は北部地方橋梁改修と道路建設訓練所等の2件である。電力セクターでは、発電所の建設や送配電線網の建設等が有償資金協力によって行われている。また、通信・放送分野では、テレビ放送センターの建設や地方通信網および沿岸無線等の通信施設の整備が有償資金協力によって行われている。さらに、都市開発/地方開発の分野では、ハノイ市の都市インフラ整備や地方に基礎インフラ整備に対して、有償資金協力を中心に援助を行ってきている。個々の案件の実績に関しては、表を参照されたい。
このように、インフラ整備に関するこれまでの日本の対越援助の実績を見ると、インフラの中でも特に運輸(道路、橋梁、港湾)と電力について重点的に協力を行ってきたことが分かる。
表 1991年度以降の日本の対越援助実績(インフラ分野)(PDF)
2)運輸分野での実績
運輸分野では、これまで日本は道路、橋梁、港湾等を中心に援助を行ってきた。道路については、1992年度の援助再開後、国道5号線、10号線、18号線のリハビリについて有償資金協力によって援助した。また、サイゴン東西ハイウェイの建設と国道1号線バイパス道路整備についても有償資金協力による援助を行っている。また、道路建設技術者の養成を行っている第一交通技術訓練校の訓練能力を向上させるために、「ベトナム道路建設技術者養成計画」(プロジェクト方式技術協力)による技術協力を2000年度から2005年度までの予定で実施中である。さらに、国道1号線のハイヴァン峠(ベトナム中部地方のダナン市北郊)を通過する区間にトンネルを建設する「ハイヴァン・トンネル建設」プロジェクトに対して有償資金協力を行っている。
橋梁については、国道1号線橋梁や南北統一鉄道橋梁の復旧を有償資金協力により、また北部地方橋梁の改修を無償資金協力により、それぞれ援助したほか、ビン橋、タインチ橋(ハノイ紅河橋)、カントー橋の建設を有償資金協力によって援助している。
港湾については、ハイフォン港復旧、カイラン港拡張、ダナン港改良をそれぞれ有償資金協力によって援助した。また、開発調査によって「全国沿岸海上輸送開発計画」(1994~1996年度実施)、「中部重点地域港湾開発計画」(1996~1998年度実施)、「南部港湾開発計画」(2000年度実施)等、港湾や海上運輸の開発計画策定についても協力を行ってきた。
また、1998~2000年度にかけて行われた「運輸交通開発戦略調査」(開発調査)では、ベトナム国の運輸交通システムの整備を効率的に進めていくために、主に全国幹線交通及び全交通モードを対象として、2020年に至るまでの長期戦略とともに、中期および短期計画の策定を行なった。これまでに実施された主な開発調査としては、このほかに「南北縦貫鉄道整備計画」(1993~1995年度実施)、「ハノイ新国際空港開発計画」(1994~1996年度実施)、「カントー橋建設計画実施設計調査」(1998~2000年度)等がある。
3)電力分野での実績
電力分野における日本の援助の主な実績としては、1992年度の援助再開以降、有償資金協力によって発電所の建設や増設と、送配電網の整備について援助を行ってきている。前者については、フーミー火力発電所建設、ファーライ火力発電所増設、ハムトアン・ダーミー水力発電所建設、オモン火力発電所建設、ダイニン水力発電所建設、等の案件があり、後者については、フーミー~ホーチミン市500kv送電線建設、オモン火力発電所及びメコン・デルタ送変電網建設、等の案件がある。また、1995~1996年度に開発調査によって電力開発計画マスタープランの作成(「全国電力開発計画調査」)を行い、2001年度から2006年度まで「ベトナム電力技術者養成」(プロジェクト方式技術協力)によって、電力設備の運転・保守に関する技術指導に知見をもった現場技術者を持続的に養成できるための技術協力を行っている。さらに2000年度より、ベトナム北部地域の再生可能エネルギー利用による地方電化のマスタープラン作成を開発調査「北部再生可能エネルギー利用による地方電化計画調査」により行なっている。
4)通信・放送分野での実績
通信・放送分野における日本の援助の主な実績としては、有償資金協力によって「ベトナムテレビ放送センター建設計画」(1999年度供与)等の放送センターに対する援助や、「沿岸無線整備計画」(1996年度供与)、「中部地域地方通信網整備計画」(1997年度供与)、「南部沿岸無線整備計画」(1999年度供与)等の通信網および沿岸無線の整備に対する援助を行ってきた。また、「全国電気通信整備計画調査」(開発調査、1997~1999年度実施)を行うなど、全国の電気通信整備に関するマスタープラン作成を行なったり、「電気通信訓練向上計画」(プロジェクト方式技術協力、1999~2004年度実施)による技術協力なども行っている。
5)都市開発/地方開発分野での実績
都市開発/地方開発の分野における日本の援助の主な実績としては、まずハノイ市の都市インフラ整備に対する援助として、「ハノイ市インフラ整備計画(第1フェーズ:タンロン北地区公的支援)」(有償資金協力、1996年度供与)や「ハノイ市都市交通計画」(開発調査、1994~1996年度実施)などの案件がある。また、地方における基礎インフラ設備(地方道路、地方電化)のために、有償資金協力によって、「地方開発・生活環境改善計画」(1995、1996、1998年度供与)の援助を行っている。さらに、運輸インフラ案件と見ることもできるが、「ハノイ市都市交通計画」に基づいて実施された「ハノイ市交通網整備計画」(有償資金協力、1998年度供与)もある。