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(2)ベトナム側が目指した目的と日本側が目指した目的の記述

1)ベトナム側が目指した目的

 ベトナム国の国家5カ年計画においてインフラ整備については次のように記述されている。まず、第5次5カ年計画(1991~1995年)においては、(1) 国内電力網の整備、(2) 原子力発電所の建設に向けた研究、(3) 主要都市を結ぶ幹線道路、山岳地への幹線道路、省から県・町に至る道路の改修、(4) 大都市および工業地区での道路の改善、(5) 空港および港湾の拡大・近代化、(6) 電話網の整備、(7) 学校、病院、文化・スポーツ施設の近代化・建設、等がインフラ分野での開発目標として掲げられていた。

 第6次5カ年計画(1996~2000年)においては、(1) 社会経済開発のために必要な環境の整備、(2) 基幹ルートにおける円滑な交通、(3) 各地域における需要に見合った電力、水、運輸、情報の供給、(4) 山間部、農村部における道路、通信、電気、衛生的な水、学校、医療センターのためのインフラ整備、(5) 中央部地域への水供給施設および山間部ならびにメコン・デルタ地域における道路の整備、等がインフラ分野での開発目標として掲げられていた。

 第7次5カ年計画(2001~2005年)においては、社会主義に基づく市場経済化のために引き続き社会経済インフラの拡充を行っていくことが重要であるとし、(1) 拡大する電力需要に対応するために発電設備と送配電設備の整備、(2) 主要都市を結ぶ幹線道路の改修、(3) 橋梁の建設、(4) 鉄道の改修、(5) 港湾の改築・拡張、(6) 国際および国内空港の近代化、(7) ハノイ市、ホーチミン市等主要都市の都市インフラの近代化、(8)情報通信インフラの整備、等がインフラ分野での開発目標として掲げられている。

2)日本側が目指した目的

 1994年以降の我が国の対ベトナム国別援助方針において、電力、運輸等のインフラ整備は「輸出志向型経済成長のための外国投資導入に資するインフラ整備を行う」として、一貫して重点分野の1つとして位置づけられてきた。具体的には、「将来的な需要の増加に対応するための電力分野での協力、各交通形態の特性に応じた運輸分野での協力」が盛り込まれてきた。

 我が国のベトナム国別援助計画(2000年)においても、電力、運輸等の経済インフラ整備はベトナム国において依然として重要な課題として、重点分野の1つに掲げられている。ベトナム国の開発において、経済基盤インフラの整備に関しては、「急速なインフラ整備が進められているものの、依然として経済開発に必要な経済基盤インフラが不足しており、経済発展の大きな阻害要因になっている。特に幹線・地方道路、橋梁、鉄道、港湾、空港等の運輸セクターのインフラ、発電所、送配電網等のエネルギー関連インフラ及び通信インフラ等の整備が急務である」という認識を示している。今後5年間の援助計画の方向性において、「依然として不足している大型インフラ整備の必要性は高く、投資環境の改善を通じて、民間による海外からの直接投資の伸びが当面期待できない状況を改善するという見地からも、この面での援助の需要は引き続き大きい。これまでの経緯及びこれからのベトナムの発展の方向性を鑑みて、大型インフラ整備は引き続き重要な分野として支援を検討する」としている。その上で、当該分野に対する我が国の援助方針において、「持続的な経済成長のための基盤造り」を重点課題の1つとして挙げ、ドイモイ政策の成果を補強し、国全体の所得水準を引き上げるための支援の1つとして「工業開発の促進に資する支援や投資の効率性向上に繋がる基礎インフラ整備に対する支援」を行うとしている。具体的な方針は次のように示されている。「電力分野については、これまで円借款による発電分野への支援を中心に行ってきているが、将来的な需要の増加に対応するために、発電・送配電・地方電化等ハード面の整備に加え、効率的な事業計画、運営能力向上等ソフト面への支援を検討していくことが必要である。運輸分野では、越国内の都市間及び都市と農村を結ぶ基幹輸送網や地方道路や都市公共交通基盤の整備を図りつつ、また域内や国内の物流の増加に貢献する港湾・空港・鉄道等の物流基盤施設、及び東西回廊等の広域プロジェクトにも配慮し、効率的な運輸インフラ整備の検討を行うことが重要である。さらに、昨今の情報通信技術の飛躍的な発展を踏まえ、通信分野においても、民間活力の活用をも視野に入れつつ、情報格差の是正に向けた協力の可能性を検討していく。また、これらインフラ案件については、環境評価に係る事前の充分な検討が必要である。


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