2024年版開発協力白書 日本の国際協力

(4)防災の主流化と持続可能な都市の実現

気候変動の影響により、災害が頻発し、規模や範囲が大きくなることも懸念される中、災害に対して脆(ぜい)弱な開発途上国では、災害による経済や社会全体への影響が深刻化しています。防災の取組は、貧困撲滅と持続可能な開発の実現に不可欠であり、災害に強い、しなやかな社会を構築し、災害から人々の生命を守るとともに、持続可能な開発を目指す取組が求められています。中でも、あらゆる政策・計画に防災の観点を導入する防災の主流化を推進することが重要となっています。

また、近年、都市の運営に関わる様々な問題が注目されています。例えば、市街地や郊外で排出される大量の廃棄物の処理、大気・水などの汚染、下水・廃棄物処理システムなどのインフラ施設の整備、急激な人口増加とそれに伴う急速な都市化などの問題です。こうした問題に対応し、持続可能な都市の実現に向けて取り組むことが、重要な開発協力課題となっています。

そこでSDGsでは、目標11として、「包摂的で安全かつ強靭(じん)(レジリエント)で持続可能な都市および人間居住の実現」という課題が設定されました。このように、持続可能な都市の実現を含む人間居住の課題解決に向け、国際的な関心が高まっています。

●日本の取組

■防災協力
斜面崩壊対策や土石流対策等の日本の最新防災対策技術を採用した無償資金協力「国道7号線道路防災対策計画」を実施する日本とボリビアの技術者(写真:JICA)

斜面崩壊対策や土石流対策等の日本の最新防災対策技術を採用した無償資金協力「国道7号線道路防災対策計画」を実施する日本とボリビアの技術者(写真:JICA)

日本は、地震や台風など過去の自然災害の経験で培われた優れた知識や技術を活用し、緊急援助と並んで、防災対策および災害復旧対応において積極的な支援を行っています(インドネシアおよびアルゼンチンにおける防災の取組については「匠の技術、世界へ 2」および「匠の技術、世界へ 4」を、エクアドルにおける取組については「案件紹介」を参照)。第3回国連防災世界会議(2015年)において採択された「仙台防災枠組2015-2030」には、防災の主流化、国・地方政府による適切な防災戦略の策定、事前防災投資の重要性、災害後において、被災前よりも強靭なまちづくりを行う「より良い復興(Build Back Better)」、女性のリーダーシップの重要性など、日本の主張が多く取り入れられました。

2024年10月にはアジア防災閣僚会議がマニラで開催され、日本が重視する取組として、災害対応の強化、防災投資の促進、早期警報の整備について言及するとともに、国際防災協力のさらなる推進の意思を表明しました。また、11月には、G20防災閣僚会議の初会合がブラジルで開催され、G20防災閣僚宣言が採択されました。G20として防災の重要性を確認し、G20リオデジャネイロ首脳宣言においても、災害がもたらす不平等性を確認しつつ、仙台防災枠組に則った国際協力の推進、人やインフラなどへの事前投資の重要性が強調されました。

このほか、日本の呼びかけにより、2015年の国連総会において、11月5日を「世界津波の日」とする決議が採択されました。これを受け、2016年より、日本各地で「世界津波の日」高校生サミットがこれまで5回開催されています。2024年10月には、熊本市において第6回会合が開催され、日本の高校生313人に加え、43か国・地域から213人の計526人の高校生が参加し、津波対策を始めとする防災・減災について学び、絆(きずな)を深めました。また、会議の成果として、「熊本“きずな”宣言」が発表され、将来、防災分野における主導的な役割を担うリーダーとして取り組んでいく決意が表明されました。

また、日本は、国連開発計画(UNDP)と緊密に連携し、アジア太平洋地域の津波の発生リスクが高い国を対象とした津波避難計画の策定や、津波避難訓練などを支援する事業を実施しています。2017年の事業開始以降、例えばインドネシアでは携帯電話用アプリ(STEP-A)の導入により各学校の津波対策情報へのアクセスを容易にするとともに、そのアプリを国家災害管理局が開発した災害監視・情報提供用のデジタルツール(InaRISK)とも連携させることで、コミュニティ・国家レベルでの防災の主流化・制度化を推進してきました。2024年末時点までに、24か国約799の学校で津波防災計画の策定・改定、津波教育プログラムを実施し、約22万人の生徒、教師、および自治体やコミュニティの関係者が津波避難訓練に参加しました。

加えて、2016年から毎年、国連訓練調査研究所(UNITAR)広島事務所と協力し、自然災害に脆(ぜい)弱な開発途上国の女性行政官などを対象に、特に津波発生時の女性の役割やリーダーシップに関する人材育成を支援しています。同事業には、2024年までに39か国から714人が参加しました。

また、日本は、防災ICTシステムの海外展開にも取り組んでいます。日本の防災ICTシステムを活用すれば、情報収集・分析・配信を一貫して行うことができ、コミュニティ・レベルまで、きめ細かい防災情報を迅速かつ確実に伝達することが可能であり、開発途上国の防災能力の向上に貢献しています。

■持続可能な都市の実現

日本は、防災対策・災害復旧対応や健全な水循環の推進など、人間居住に直結した地球規模課題の解決に向けた取組を進めています。具体的には、日本はその知識と経験をいかし、上下水・廃棄物・エネルギーなどのインフラ整備や、「より良い復興」の考え方を踏まえた防災事業や人材育成などを実施しています。このほか日本は、持続可能な都市開発を推進する国連人間居住計画(UN-Habitat)への支援を通じた取組も進めています。その一例として、UN-Habitat福岡本部(アジア太平洋担当)と連携し、日本の福岡県が有する防災技術等を開発途上国に導入するための支援などを実施しています。

また、2022年のドイツ・ポツダムにおける第1回に続き、第2回のG7都市大臣会合を、日本が議長国を務め、2023年7月に香川県高松市において開催しました。「持続可能な都市の発展に向けた協働」をテーマに、都市におけるネットゼロ・レジリエンス、インクルーシブな都市の実現、都市のデジタル化等に取り組む必要があることを確認し、会合の成果を「香川・高松原則」として発表しました。2024年11月に、イタリア・ローマにおいて開催された第3回都市大臣会合では、前年の日本での会合の成果を引き継ぎつつ、対応する課題や共通原則、優良事例が議論されました。成果文書には、新たに「共同行動」が盛り込まれ、G7内外での連携強化を視野に、経済協力開発機構(OECD)やUN-Habitat等とも協調し、住宅・都市開発に関する各国の経験と知識を共有していくことを確認しました。

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