2023年版開発協力白書 日本の国際協力

(6)日本への関心・理解が深い人、在外日系人等との連携

帰国後の報告会における日本企業とABEイニシアティブ修了生との交流の様子(写真:JICA)

帰国後の報告会における日本企業とABEイニシアティブ修了生との交流の様子(写真:JICA)

日本のODAによる研修参加者や留学経験者等は、日本の文化や価値観を理解する重要な人的アセットです。日本への研修参加者や留学経験者等が、自国へ帰国後、同窓会組織を形成し日本との交流や理解促進に関する活動を行う例も見られ、在外公館を通じて、このような日本への関心・理解が深い人材との連携を促進しています。

ASEAN諸国では、JICA青年研修(旧:青年招へい)の帰国研修員が各国で同窓会組織を作って活動しており、1988年にはASEAN各国の同窓会組織を統合した「AJAFA-21」が発足しました。AJAFA-21は現在もASEAN地域間および日本との間での交流活動を継続して行っており、2023年12月には、日本ASEAN友好協力50周年記念行事として、ASEAN8か国から100人以上のメンバーが訪日し、交流を深めるとともに、今後も同窓会活動を通じて日ASEAN協力に貢献していくことを確認しました。

ABEイニシアティブ注14では、同プログラムへの参加者の研修修了後のフォローアップの拡充に取り組んでいます。オンラインも活用しつつ、日本企業関係者とのネットワーキングの機会や日本企業での就職を希望する参加者への情報提供等を行っています。また、ABEイニシアティブ参加者の人的ネットワークを強化する目的で、2020年4月に、SNSを活用したネットワークを立ち上げました。2023年11月時点で、現役生・修了生合わせて、約1,070人の参加に加え、日本企業、JICA海外協力隊経験者も参加し、日本企業のアフリカビジネス関連の情報発信や相互の交流を行っています。また、全修了生に対して、修了生間のネットワーキングの場も提供しています。さらに、参加者の有志によって、日本企業とのビジネスパートナーを目指すKakehashi Africaという団体が組織されています。同団体は、アフリカ全土にネットワークを持ち日本とアフリカ54か国に拠点があり、ビジネスに関する調査の実施や情報の提供、日本企業等のニーズと現地リソースのマッチング等の活動を展開しており、起業家育成研修への協力等、JICAとの連携事例も生まれています(日本への留学経験者の活躍については「国際協力の現場から1」および「国際協力の現場から5」を参照)。

日系人は、多くの場合居住国で日系社会を形成しており、日本と各国との強い絆(きずな)の礎となっています。全世界の日系人の約60%を占める中南米の日系社会は、地域開発の拠点となって技術移転などを通じて居住国の経済発展に大きく貢献するとともに、日本との「架け橋」や「パートナー」として重要な役割を果たしています。JICAでは、中南米の日系社会と日本の連携に主導的な役割を果たす人材への技術協力として、日系社会研修や、日系社会次世代育成研修を実施しています。2022年度は、中南米9か国152人が日系社会研修に参加しました。また、中南米の日系社会で自身の技術や経験をいかしたいという意欲のある人をJICA海外協力隊として日系社会へ派遣しています。2022年度は5か国に29人が派遣され、日系人、日系社会の人々と共に生活・協働しながら、中南米地域の発展のために協力しています。

案件紹介14

ボリビア、コロンビア、パラグアイ、ペルー、メキシコ

SDGs17

育て、日系社会の若手起業家
中南米地域日系社会の若手起業家育成セミナー
(2023年3月)

中南米・カリブ地域には日本からの移住者とその子孫が多く暮らし、移住地や日系社会が形成されて発展しています。一方、移住地の日系人の若者の多くは、農業を主体とする地域産業に魅力を見い出せず、職を求めて都市部に移住したり、他国に出稼ぎに出たりする傾向があります。若手日系人の流出とそれに伴う日系社会の高齢化は、日系社会の持続的な発展にとって深刻な課題になっています。

そこで、JICAボリビア事務所は、移住地のあるサンタクルス県で、2023年3月、中南米地域日系社会の若手起業家育成を目的としたセミナーを開催しました。同セミナーには、ボリビアのほか、コロンビア、パラグアイ、ペルーおよびメキシコから18歳から52歳の日系人を中心とする計41人が参加し、ビジネスのアイデア創出に向けたグループワークが行われました。JICAボリビア事務所では、2022年9月から2023年1月まで、ボリビア日系社会の活性化に向けて、日系若手人材の起業家マインド醸成を主目的に、「Project NINJA(Next Innovation with Japan)注1 in Bolivia」を実施しており、この成果を踏まえ、今回、対象地域を中南米地域全体の日系社会に拡大したものです。

同セミナーは、日系起業家の育成に寄与したのみならず、これからの日系社会を牽(けん)引する若手日系人材間における、国境を越えた人的ネットワーク形成の一助にもなりました。

3日間にわたりビジネスのアイデアを議論した中南米地域全体の日系社会からの参加者一同(写真:JICA)

3日間にわたりビジネスのアイデアを議論した中南米地域全体の日系社会からの参加者一同(写真:JICA)

出身国の異なるメンバー間で議論を深める様子(写真:JICA)

出身国の異なるメンバー間で議論を深める様子(写真:JICA)

注1 注23を参照。


  1. 注14 : 用語解説を参照。
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