2023年版開発協力白書 日本の国際協力

(5)大学・研究機関等との連携

日本政府は、大学が有する開発途上国の経済社会開発に関する役割、すなわち、日本ならではの開発協力に関する哲学や理論の整理・探求および発信から、開発協力の実践、国民への教育還元および国際協力人材の育成までの開発協力全般への広い知的な側面において、大学と連携を図っています。また、それら取組の中で、開発途上国と日本の学生や研究者の交流・共同研究による国際頭脳循環を推進しています。実際に、様々な大学と共同で、技術協力、円借款および草の根技術協力を始めとする事業を推進しています。

一例として、日本政府は、開発途上国の経済社会開発の中核となる高度人材の育成を目的とする人材育成奨学計画(JDS)を通じて、開発途上国の若手行政官等を留学生として国内累計41大学で受け入れています。2022年度には、19か国から300人以上の留学生を受け入れ、これまでに来日した留学生は、修士課程と博士課程合わせて5,700人を超えます(モンゴルにおけるJDS帰国留学生のネットワーク化と帰国生の活躍は「国際協力の現場から5」を参照)。また、産業構造と企業活動の高度化が進むASEAN諸国に対し、「アセアン工学系高等教育ネットワーク(AUN/SEED-Net)」プロジェクト解説や専門家派遣を通じて、日ASEANの大学間のネットワーク強化や産業界との連携、域内および日本との共同研究を支援し、ASEANの発展を支える高度な工学系人材の育成に向けた取組を実施しています。

加えて、外務省・JICAは文部科学省、科学技術振興機構(JST)、日本医療研究開発機構(AMED)と連携し、「地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)」注13を実施しており、日本と開発途上国の大学・研究機関等の間で国際共同研究が行われています(実績については第Ⅲ部1(2)を、マレーシアでの協力については「匠の技術、世界へ」を参照)。

JICAと本邦の大学が連携し、これらの修士・博士課程に在籍する開発途上国からの留学生を対象に、日本の開発の歴史を学ぶ機会を提供するプログラム「JICA開発大学院連携」が実施されています。また、同様の取組を国外にも広げるため、開発途上国各国のトップクラスの大学などを対象に、「日本研究」の講座設立を支援するプログラム「JICAチェア」も行われています。この他にも、放送大学と連携し、日本の近代化の歩みと国際協力の重要性を体系的に紹介する「日本の近代化を知る」シリーズ番組の作成など、オンライン講義も実施しています。

こうした大学との連携は、開発途上国の課題解決における学術面での能力向上、対日理解の促進に寄与していることに加え、海外からの研修員が日本の大学で研修・研究することで、日本の大学の国際化にも貢献しています。

用語解説

アセアン工学系高等教育ネットワーク(AUN/SEED-Net:ASEAN University Network/Southeast Asia Engineering Education Development Network)
ASEANに加盟する10か国における工学分野のトップレベルの大学19校と、日本の支援大学11校から構成される大学ネットワークとして、2001年に発足(現在はASEAN側26校、日本側18校)。日本政府は、同ネットワークを構想段階から支援してきており、これまでJICAを通じて、工学分野で高度な人材を輩出すべく学位取得、共同教育・共同研究、産学連携、ネットワーク強化に係る取組を実施してきている。

  1. 注13 : 用語解説を参照。
このページのトップへ戻る
開発協力白書・ODA白書等報告書へ戻る